[漫画]この血塗れた手は、世界を変える覚悟だ。『新装版 真・女神転生デビルチルドレン』2巻
新装版 真・女神転生 デビルチルドレン(2) (KCデラックス) (2013/06/21) 藤異 秀明 商品詳細を見る |
弱い 無力すぎるよ 何かを変えるだけの知恵もない
未来キーック!「新装版 真・女神転生デビルチルドレン」2巻の感想。
10年以上前にコミックボンボンで連載され、幼年誌らしからぬバイオレンスっぷりに当時の少年たちの度肝を抜き、またトラウマを植え付けたりもした、あの傑作の新装版でございます。
昔この作品ほんとハマってたんすよ~っていう話は前回したので省略。
前巻
世界を救うハードボイルド小学生漫画、復活ッ!『新装版 真・女神転生 デビルチルドレン』1巻
よくもまぁ小学生相手の漫画雑誌でこんな漫画やっていたよなと!
それはバイオレンス描写や作者が影響を受けたであろう作品のオマージュだけじゃない。
世界を救うにはたくさんの犠牲を乗り越え、また自らの手を血で汚すしかない。
そんな現実と戦う覚悟を、小学生が背負うという、ね…!
まぁ小学生に見えていたのは1巻の最初のうちだけで。この新装版2巻の時期になると「お前ら小学生とかぜったい嘘だろ!」と叫びたくなるような大人びた風に成長してます。
いいんだよ細かいことは!カッコ良けりゃいいの!熱けりゃいいの!
世界を包む混沌はその色を強くしていく。
デビルチルドレンである刹那と未来の運命もますます過酷に。
物語の厚みも増していき、バトルと合わせてズッシリと迫力ある展開に向かいます。
新装版2巻は冒頭、フォレストランドでの未来の戦闘から熱気十分!
常に敵から命を狙われる、緊迫した生活。それに疲れてしまうのはまだ小学生の女の子なら当然だよなぁ。
ニーズホッグとの戦闘は、リアルタイムで読んでいた時もすごくドキドキした。
巨体を土の中から引きずり下ろし、魔法で森全体を凍りづけにして天然の針地獄。落下して串刺しになった所を改めて魔法で切断。うーん、見た目ハデだし実にクレバーな戦略!カッチョイイ。
このフォレストランドで未来はユキヒサと出会って、そこから「天使軍」の策略にハマり込んでいってしまう。
この「天使軍」の存在こそこの新装版2巻のポイント。
魔王軍VSアンチ魔王軍、のシンプルな構図だった所に「いやいや天使こそ至高の存在だろお前ら俺ら抜きでなに言ってんの?」と出しゃばってきて色々メチャクチャにやっていくのです。
天使軍が刹那サイドに送った刺客がドッペルゲンガー。
刹那が探し求めている未来の、まさにその姿を借りて刹那を殺しに来る。
このバトルでは刹那は腕がちぎれちゃうんですよね。
当時小学生の俺。腕がバツンとやられてしまった時点で「え、終わりじゃん。死ぬじゃん。これからどうすんの?」とマジで焦った記憶があります・・・。
バトルの緊迫感が凄い。ドッペルゲンガーまじで怖いし、このギリギリで戦っている実感が少年心を心底ワクワクさせてくれましたよ…!
ドッペル未来さん、いい顔するよなぁ…!!
メインヒロインの顔した敵がここまで顔芸やるもんだから、本当に怖かったんだよ!!
口調も下品で、こうしてある程度大人になって読んでみると、「未来ちゃんを汚しやがってこのやろう!!」とも思えてくる。侮辱的ですよねえ。他人の姿形を借りて人の弱みに付け入って、顔芸に下品な言葉遣い繰り出してるんだから。
刹那としては本当に腸煮えくり返るほどムカつく相手だったと思う。
お前たちは自分のエゴで生きている!!
自分の邪魔になるものを傷つけながら生きている!!
それもいいだろう この汚れた世界ともに生きていゆけ!!!
だが忘れるな!!!
お前の手や顔、そして体についた血は決して消えやしない!!!
ドッペルゲンガーを倒した刹那。この時のドッペルゲンガーの死に際のセリフは、本当にグッサリ刺さった。
世界を救おうとする正義の味方なのに、結局は汚れなくちゃいけないんだと。
綺麗なままのヒーローであることを絶対に許さない。
何かを救うためには何かを犠牲にする必要がある。そういうシビアな現実を、10もいかないような少年に見せつけたのがこの作品の、個人的にすごく好きな所です。
傷ついて、自分の血にまみれて、誰かの血を浴びて、やっと前に進める。
ゼットくんはエロいんだよ!!!(唐突)
思えば俺が初めて「少年」キャラクターにドキッとしたのはゼットくんかも知れない。
挑発的で、思慮深くて、ミステリアス。
もともと中性的な顔立ちのキャラクターなのですが、物語中盤から明らかに作者が意図して色気をもたせている。唇にトーンが貼られだして、艶っぽさが出てきます。
少年心になぜかを感じ取ったことを覚えています。
ヒロインである未来やエレジーに心は向かいながらも、ゼットくんが香らせるフェロモンはこう、グッッ…っとキました。
人も悪魔も天使も魔王も超越した存在。
そんな特殊な立ち位置であるゼットは、それが故の苦悩を抱えます。
簡単に国も人を救ったり、または滅ぼすことができる。
あまりに大きな力を持つあまり、それにがんじがらめにされる。
新装版2巻のラスト「とまらぬ怒り」では未来と衝突するゼット。ここでゼットの苦悩は表面化して、ゼットが更に好きになりましたね。
今まで天上人って感じで、あまり感情移入ができていなかったのですが
泣きもする。悔しがったり、悩んだりもする。彼もまたそんな血の通った存在だったんだな、ここで初めてわかった。印象深いシーンですね。
誰しも戦っている。戦って生きていく。この作品らしいよなぁ。しびれる。
しかし一番ゾクゾクしたのは、「最愛なる者へ」でゼットと刹那が出会った場面です。ここで初めて刹那は、普通の友達だと思っていたゼットがとんでもない存在であることを知る。
「くやしいでしょ?」
刹那を導くためでもあるが、こうしてヒールのような役回りをする。
たっぷりと皮肉って、挑発的な笑みを浮かべる邪悪ゼット。ムカつくなぁ!でも似合うなぁ!!かっこいいなぁ!!!
でもこのエピソードのサブタイ「最愛なる者へ」は、ゼットから刹那に向けたものなのかもしれないな、とも今回ふと思った。
人間を遥か高みから見物するようなゼット。しかしここでは刹那というたった1人の少年のためにメッセージを投げかける。
そのメッセージはネガティブなものではあるんだけど、刹那たちの身を案じた優しさでもあるよな。未来と刹那、デビルチルドレンたちを守ろうとするゼットの内面の深さは、今でも味わい深いものだ。
もうひとつ名シーンを選ぶなら。
刹那が幽体離脱してファイアーランドを向かうまでモノローグ。
「死が平安をもたらすのならば 生きている意味ってあるのか?」
「この世に人間は必要なのか?」
「世界は汚れてなんかいないし 滅んだりもしない 問題なのは人の行く末だ」
「生きている意味ってあるのか?」の言葉は、これを当時自分どう受け止めていたかは覚えていないけど、なんにせよ衝撃的だった記憶がある。
生きている意味を疑うなんて、小学生置いてけぼりですよ。でも感じ入った。
刹那さんはホント達観したイケメン小学生やで…。
各キャラクターの苦悩を深めていく内容だったこの2巻。
ストーリーの進行も当然ですが、精神的な成長やドラマを重視したのもこの作品の面白さ。想いの折り重なった、多層的なストーリーになっています。
↑の感想では触れられませんでしたが、エレジーちゃんの健気さに心打ち抜かれ、もうエレジーちゃん最高!!となるまでありましたが省略します。
新装版3巻は7月発売。描きおろし漫画にも期待大ですね…!!
そういえばこの新装版2巻、連載当時カラーだった話数の扉絵が描きおろしイラストに代えられていました。今の絵柄で見る刹那たちは新鮮で、楽しい!
今回の巻末オマケ漫画はドッペルゲンガー未来ちゃん大暴れ。
当時のアシスタントさんが描いたものですが、本当に今でも愛されてるなぁデビチル!ドッペル未来ちゃんは本当にムチャクチャやるので、シリアスじゃなくギャグとしてなら色々可能性があって面白いなw
『新装版 真・女神転生デビルチルドレン』2巻 ・・・・・・・・・★★★★
復活した懐かしの傑作第2巻。大人びた児童漫画だよなぁ。この傷だらけのキャラクターたちと渦巻く愛憎の物語に憧れたもんです。