[漫画]ひとりのオタクのひとつの終着点。『げんしけん』14巻(二代目の伍)
げんしけん 二代目の伍(14) (げんしけん (14)) (2013/06/21) 木尾 士目 商品詳細を見る |
……… 本当に…… 本当に楽しかったんだ
斑目ェ…………!!!
「げんしけん」14巻、二代目としては5巻が発売されました。
二代目になってのコミックス表紙は、女子がメインとなったサークルを象徴するかのように、女の子たちの賑やかなひと時が描かれてきました。しかし今回は一転、青色基調の斑目ソロ。ひとり部室に佇む彼の姿に哀愁を感じますわ…。この静かさが胸に染みる。
内容の方も「斑目のための巻」と言って差し支えない。
個人的にこの14巻収録の第80話を読んで、ひとつの世代がここで終わったように感じました。それだけ重要な、初代も含めても歴代最高レベルのイベントだった。
そもそも前回の13巻の引きが凄まじく、ここで次の巻まで待たせるのかよ!ってもどかしさMAX展開でしたよ。買っててよかったアフタヌーン。
以下、ネタバレには注意をしてくださいまし。
前巻→ついに運命が動き出す!初代メンバー集合の学園祭!『げんしけん』13巻(二代目の四)
それにしてももう14巻。二代目としては5冊目ですか。早く感じるなぁ。
初代は全9巻。ニ代目がどれほど続くかはわかりませんが、初代と照らしあわせてももう折り返し地点まで来てるんですね。
そんな14巻は、全体的に恋愛色が強い内容になっている気がする一冊です。
なんといっても、14巻どあたまの第81話が、すごい。
「いい最終回だった(告白Ⅱ)」とサブタイトルが付けられており、9巻の53話「告白」の続編に位置づけられているのが憎い演出。
「斑目に告白させよう」という恵子の策略により、咲ちゃんと部室に2人きりにさせられた斑目!
何年も胸の内で燻らせてきた片思いを今こそ吐き出すとき。
「君はハナゲが出ていたんだ」
もう無茶苦茶なセリフだ。けれどずっと胸にしまっていたこの言葉を言ったことが、斑目にとっては致命的な意味を持っているよなぁ。
53話では「この事は墓まで持っていくのだ」とか言ってたし、告白しようにも直前に思いとどまって感情を爆発させられなかった。その臆病さ、ヘタレっぷりが斑目の愛おしさ。
でもあの時、咲ちゃんの卒業を間近に控えたあの時。言えなかった言葉を、やっと斑目は口にする。
ここらへんは本当に14話、53話のか延長戦のような描かれ方をしているので、このエピソードを読み終えて過去のエピソードを読み返したら、感慨深さ一層増しましである…。
でも…でもなぁ…。
くうううぅ~~~~~~……
いねぇ~~~~~……
絶対いねぇ~~~~~~~
『「君はあの時ハナゲが出てたんだ!!!!」って愛の告白する男』……
斑目さんが完全に3巻44Pのブーメランを食らってるように感じて、切ないやらおかしいやらでいろんな感情でいっぱいですよ!!
「咲は斑目の好意に気づいているんだろうか?」というのは初代ラストの余韻のなかで提示された、もっともな疑問でした。今回でそれの回答が得られましたが、「まぁ、ですよね~~」という感じですよねw
「・・・絶対私からは話を振らないつもりだったのに 本当ヘタレだね斑目は」
のセリフに、流石だなぁと思わされる。オタク嫌いだった初期から考えれば本当に彼女も変わったなぁとも思う。この告白への咲ちゃんの対応は誠実さがにじみ出ていていいなぁ。告白されたほうが泣いちゃうんだもの。
斑目のモノローグ「うん 知ってるよ 春日部さんは 意外とよく泣く」には、彼女を見つめた斑目の万感の思いが詰まっていて、本当に涙腺が緩む。
これまでの思い出とふたりの気持ちが交差して、素晴らしい名シーンでした。
それにしてもヒドいのはこの時の雑誌連載時の煽り文ですよ!
「斑に咲く花」ってオイ!「Spotted Flower」!
楽園でやってるあの漫画のタイトルじゃないですか!
斑目と咲ちゃんのIFを思わせる幸せ夫婦漫画のタイトルをここで匂わせる。あんな風景はもう「げんしけん」世界では有り得ないと見せつけた後でコレですよ!
いつもは基本パロネタの煽り文なのですが、この時だけこんなネタを仕込んできたので印象的でした。
「Spotted Flower」は設定からしてげんしけんファンを惑わす代物で、あまりこれに踊らされちゃいかんと思い読んでいましたが、やっと気持ちの整理がついたような感じです。もともとこんなのIF以外ありえないだろーと思ってはいましたが…!
この文化祭の一連の流れには、笹原妹の恵子が大きな役割を果たしました。
前々から斑目を気にする様子を見せている恵子ですが
今回も様々な場面で斑目の心にちかづこうとしているように見える。
特にこの場面は斑目の核心に触れる部分で、彼を繊細に扱うよりある程度強引に立ち上がらせようとする恵子の気持ちが感じられてほっこりする。
恵子、すげー大人になってんなー。人生経験か。斑目の破滅的なロマンティシズムを見ぬいて、そこにフォローを入れようとしている。やっぱり結構マジなんじゃないか。
単行本のオマケ漫画では、斑目の受けを考えてかいつもより大人しいナチュラルメイクで大学に来ていると指摘。おっおっドキドキしてくるな…。
咲ちゃんが最後に言った「頑張れば本当にハーレム作れるかもよ?」は現実味がなくてどう捉えればいいのか困るものではある。それくらいの可能性がいまのあんたにはあるよっていう励ましでもあると思うんだけど。
確かに今の斑目を取り巻くヒロインたち(♂含む)の布陣は凄いことになっていて、斑目さんのモテキを確信するしかない状態ですよ。
スーも斑目と顔合わせるたびに真っ赤になっちゃうし、波戸くんも完全に乙女みたいなことになってるし。
波戸くん目覚めすぎい!
斑目さんと部室でふたりきりになったら発情しちゃうしなー。そろそろ本当に抑えが効かなくなってくるんじゃなかろうか。
「妄想と現実は全くの別」とキリッ顔で言うようなセリフが出ましたが、こんなの完璧にフラグじゃないですか。波戸くんの明日はどっちだ。
文化祭が一段落つくと、どうみても某アダルトグッズな代物が部室に落ちていて女の子たちが混乱するコメディ回に続き、賑やかな内容に移ります。
波戸くんにプレゼントをもらったのと、あのアダルトグッズを所持しているのはもしかして…?といういろんな羞恥心がごっちゃになって顔真っ赤になっちゃう矢島ー!!
将来への不安から迷走してエロいコスROM作ろうとする大野さん―!!
そして斑目さんは会社をー!!…っておいおい。斑目ェ…。
思えば二代目がスタートする前、「くじびきアンバランス」のおまけ漫画に、げんしけん初代のアフターエピソードがちょこっと描かれたことがありました。
そこで描かれていた出来事は今回で回収されましたね。
いよいよ、ここからが本当に先の見えない領域。
っていうか最近の大野さんのおっぱいはスゴいことになってる気がする。もともと巨乳キャラだけどここまでだったか…?もしやまた大きくなってるのか…?
採寸してるときの田中に殺意を抱いたことは当然である。
田中といえば今回の巻末描きおろしもヒドかったw
自分の彼女がいかにエロいかを滔々としゃべるという、まさに「もげろ」と言うに相応しい行い。
とはいえこのオマケ漫画、斑目・久我山・田中の動機3人で野郎飲み、という実に微笑ましいワンシーンです。
卒業した今だから言える、かもしれない男同士の猥談が楽しい。しょーもねーなーってつくづく思える。でもこういう話をオープンで出来るのは面白いな。知人の誰彼をオカズに使ったわ、とかその行為自体なんか辛いし、しかもそれを友達に話せるというのがなんか別次元な感覚する。そこらへんの感覚は斑目のものに近い。でもそういう話を他人から聞くのは楽しいというw
この男同士のゆる~い関係が、げんしけんに憧れたひとつの理由でもあって、このオマケ漫画はすごくうれしい気持ちになる光景でした。
「げんしけん」14巻はまさにターニングポイントとなる一冊でした。
まず斑目の恋の決着がツイたこと。そして人間関係というか、それぞれの思いがより見えやすく表面化してきた部分も大きく感じる。
斑目関連の恋愛事がここのところ話のメインになってきていて、すっかり恋愛漫画な風格。
今回の文化祭は初代メンバーの同窓会的エピソードでもあるし、それ以外と部分でもオタクの葛藤もがっつりストーリーに組み込まれてきていて、今回のコミックスの満足度は非常に高かった。
次の段階に話をすすめるステップとなりましたし、更にこれからの展開が楽しみになってきましたよ!
15巻はOVA付き特装版も出るんだとか。TVアニメの出来みて考えようかな。
そういえば今回のオマケ4コマに、珍しく高坂の本心が見える箇所があってドキッとしました。辛辣なようでたしかに愛が感じられて、こんな所でも斑目は美味しいな全く。
『げんしけん』14巻(二代目の伍) ・・・・・・・・・★★★★☆
斑目の恋のひとつの決着。ある意味「初代げんしけん」の真の幕引きという感じかな。