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正直どうでもいい(移転しました)

マンガ感想を主に書くブログ。移転につき凍結中。

[小説]センチメンタル・ロマンチズム『忘れないと誓ったぼくがいた』

転載記事。詳しくはこちらで→[告知]小説の感想記事に関して
少々の修正を加えただけです。昔に書いたものなので現在とはノリが違うのも多いかも。

忘れないと誓ったぼくがいた忘れないと誓ったぼくがいた
(2006/02/20)
平山 瑞穂

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今日は平山瑞穂著「忘れないと誓ったぼくがいた」を。
まずタイトルがたまりませんよね、切ないオーラ撒き散らしてますよ。
加えてこのカバー写真・・・!これを眺めるたび、この主人公の想いが伝わってくるかのよう。
文庫版は味気ない感じになっちゃってるので断然こちらをオススメ。
そして内容もタイトルのインパクトに負けない、素晴らしいものでした。
簡単に言うと現代ファンタジー恋愛小説です。

<あらすじ>
高校三年の秋、それまで生真面目な優等生だった葉山タカシは突如変貌する。
親友はその変化に戸惑い、親からは精神性の病気を疑われるようにまでなる。
落ちる成績、崩れる人間関係・・・それすらどうでも良くなるほど彼は夢中になった。
織部あずさに。
偶然出会った彼女に。
世界から消えていく、彼女に。

全てを投げ捨てて突っ走る怒涛のセンチメンタル恋愛小説!
繊細な雰囲気で描かれた物語なのですが、必死にもがく少年の、あるいは少女の
とにかく色んな感情がぎっしり詰まった青春長編。
タカシが出会ったあずさは、突然世界から消えてしまう女の子。
そこにはどんな種も仕掛けも理由も無く、ただ「そうなる」現実しかない。
いろんなことに理由・答えを求めてしまう人は、消化不良に陥るので注意。
全く現実的ではない物語です。
けれどただ受け止めるしかない現実と、それに抗い努力する少年の姿は
きっと色んな人の心に強い印象を残すのでは。
夢中になればなるほど切迫する現実。落ち続ける成績。
本当の記憶か、そう思い込み強固になった、単なるイメージか。
信じられるものが少しずつ薄れ、消えていく恐怖・・・。
それでもひたすら彼女を想い続ける少年!
こういうのに弱いのは俺自身よく分かってますけど、今回もヤラれた感じですね・・・。
あとあずさちゃんが結構ガチでかわいいのでソコも高ポイント(ぉ

さくっと読める作品だと思いますので、お手軽に読んでみて下さい。
読んでいくにつれて、全然お手軽なんかじゃないことに気付くかも。
青春小説が大好きな自分は完全にハマりましたし
作品が単純な恋愛モノにとどまらなかった点も良かったと思います。
ラストはもう体が震えるほど感動しちゃいましたよ俺。
卑怯だと思いましたよアレは・・・けれどやっぱり弱いんだ、こういうのに・・・!!


あの一瞬のような日々を、
ずっと大切にしたい恋を、
ぬくもりを、風を、匂いを、命を、
彼女と過ごした時間を、
忘れないと誓ったぼくがいた。
そして今―――――


情熱的なのにどこか涼しげな、ノスタルジーいっぱいの青春小説です。
読むなら全力でネタバレを回避することをオススメしますよ!

[小説]”終わり”を描く4つの物語。 『4period』

転載記事。詳しくはこちらで→[告知]小説の感想記事に関して
少々の修正を加えただけです。昔に書いたものなので現在とはノリが違うのも多いかも。

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今回は.17による自費出版小説「4period」について。
自分もめったに同人小説は読まないのですが、これはなかなかいい本でしたので。
2人の書き手さんによる、全4編のオリジナル短編集です。
「4period」と題するとおり、一つずつ「終わり」を描いていく構成。
また、それぞれのエピソードが少しずつ別の話で触れられていくので
読み進めるたびにニヤリとできるようになってますw

kobaxさんが手がけたのは「マーメイド、山へ」「ローランダ、空へ」「ガーゴイル、夜へ」。
3篇合わせて120Pほどですが、どれも非常に切ない、より本のテーマらしい作品ばかり。
特に「マーメイド、山へ」のラストシーンは素晴らしい。
恋愛ではない、けれど確かな絆で繋がっていたはずなのに、どうして最後ですれ違うのか!
作品のコンセプトは Period=終わり を描くことだと思うのですが
自分はこの先もあることを、願わずにはいられません。
ただ、2人でいることが本当に正しいのか、それを断言することも、できないよなぁ。
あと「ガーゴイル、夜へ」は落とし所が上手い!
もちろん切ない終わり方なんですけれど、二人は永遠を手に入れた。
哀しい現実であることに間違いはない、けれど決して交わえぬ2人が掴んだものにしては、なかなか、出来たもんじゃないかとも思うのです。
 
広瀬凌さんが手がけたのは中編「スーベニア、夜へ」。
吸血鬼になったものの吸血鬼らしいことはなにもできない青年のお話。
kobaxさんの文はポップで詩的でありましたが、広瀬さんはそれと比べると骨格のがっしりした文章を描く人のようです。
じっくりと読ませる作りの作品で、わりと進行もゆっくり。
けれど文章自体は非常にリズミカルなので、読むことそれ自体がなんだか面白い。
もちろんストーリーも後半には大きく動き、なかなか熱い展開に入ります。
パトリシアを巡るあれこれは、最後はなるほど、と納得。
面白いのが、period、と銘打たれた本なのに、この作品は終わらない。
メインキャラ2人ともが、ほとんど永遠の命を得ているのです。
けれど同時に消えていく存在もあるわけで……如何様にも考えられそう。
スーベニアというネーミングも、なんとなく深みを感じられて良かったです。
消えゆく吸血鬼。けれど2人のおとぎ話は、きっと終わりない旅のまま。



同人小説ですが、なかなか面白い本だったと思います。
ただ購入するチャンスが少ない本でもありますので
偶然見つけることができたら、購入してもよろしいかと。
なんにせよ、切ないお話が好きなら十分にハマる出来かと思います。


スーベニアといい、ローランダといい、ああマーメイドもそうか。
たぶん意図したことでしょうね。スピッツファンとしてニヤリとしましたw

[小説]爽やかすぎるひと夏の恋愛劇 『潮騒』

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潮騒 (新潮文庫)潮騒 (新潮文庫)
(2005/10)
三島 由紀夫

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実は三島由紀夫初挑戦。
前知識として、彼の死に様や作品の傾向は頭に入っていましたが
この作品にはそれらから抱いてたイメージとは真逆。
清々しいほど美しく、純粋で直球な青春恋愛小説です。
なんと発表以来5度の映画化も果たしており、根強い人気を誇っているようです。


伊勢湾に浮かぶ小さな島「歌島」を舞台に、
漁師の青年真治と、海女の少女初江がいちゃいちゃしたりモメたりするお話。
人物描写も実に気合いが入っていて面白いですが
なにより素晴らしかったのは情景描写。
特に12章での蝶のシーンは読んでいてぱぁっと世界が見えた、というか開けたようで
その暗喩的な描き方も含め、実に印象的なワンシーンでした。
この他にも海や空、風や人や動物……
浜辺周辺の自然が鮮やかに描き出し、美しい孤島の風景が目に浮かびます。
どれもこれもか「生」を謳歌しているのです。

描写で思い出しました。
この作品のもう一つの魅力、女体描写です。(笑顔)
思春期の少年の溢れんばかりのパッションが…
主におっぱいへの愛がページからキラキラ眩しく輝いて見えるほどなのです。
そこらへんはネットでもよく語られる話ですねw
といってもねっとりエロチックというよりは、健康美という感じです。
さぁこれだけで何かがフルスロットルなアナタは是非読みましょう(何
こんな超有名作品に何をいまさら、という感じですがw

ストーリーについては、とくに述べる必要もないほど王道です。
何の心配もせず読み進めて問題はないかと思います。
落とし穴もなにもないのです。
が、しかし、ストーリーに穴は無いのですが
何でか、このラストの一文に不安を、というか醜さを感じてしまう。
恐らくこれは意図的な仕組み、最後の最後はやはり三島か、ということでしょうか。
自負の行き違い。
ある意味で互いのナルティシズムの…と言ったところ。
最後の最後でこう落とすかー!とちょっとニヤリw面白いw

読みやすい文体、ストレートな展開、現代にも通じる萌え要素もあり
短い小説ですので、かなりおススメしやすい作品かと思います。
海を基軸に展開していく青春物語なので、夏にはピッタリです!

[小説]醜くも強い愛の結末 『芋虫』

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江戸川乱歩傑作選 (新潮文庫)江戸川乱歩傑作選 (新潮文庫)
(1960/12)
江戸川 乱歩

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短編集はどう扱おうなぁと悩みましたが
これは!と思う一遍を別個紹介していくのが分かりやすいかなと。

いろんな本に収録されているので、わりと見つけやすいと思います。
江戸川乱歩と言えば、子供向けミステリー小説の「怪人二十面相」「少年探偵団」や
怪奇小説「人間椅子」などが特に有名ですね。明智小五郎なんかも彼が生み出しました。
まぁそういうイメージが手伝って、なんとなく手を出しずらい作家の一人かと思います。
ホラーとか怪奇とか、そういうのはちょっとなぁ、って人多いかと。
そういう人にこそ読んでほしいのが、この「芋虫」です。
…まぁタイトルからしてこんなんですけど、いい小説なんですよ!
少なくともこの「江戸川乱歩傑作選」の中では
最も美しく、愛を描いた作品だと思います。
また文書の部分削除を求められた大戦時において、乱歩作品唯一の完全な発売禁止を強制されたのも本作。ようするにちょっと刺激的なのですね。

<あらすじ> -Wikipediaより
傷痍軍人の須永中尉を夫に持つ時子には、奇妙な嗜好があった。それは、戦争で両手両足、聴覚、味覚といった五感のほとんどを失い、ただ視覚と触覚のみが無事な夫を虐げて快感を得るというものだった。夫は何をされてもまるで芋虫のように無抵抗であり、また、夫のその醜い姿と五体満足な己の対比を否応にも感ぜられ、彼女の嗜虐心は尚更高ぶるのだった。

障害者への虐待。
まずこの作品を読んで感じる要素はこれです。
絶対にあってはならない、けれど人間の醜い心は、自らと違う存在を見下そうとする時がある。
たとえかつては愛した夫であろうとも。
嗜虐的快楽を求めて非道を繰り返す奥さんの姿は、とても悲しいものです…。
けど勘違いしてはならないのは、これはただグロいばかりの小説では決してないということ。
虐待という非常にヘビーな要素を用いて、この作品は悲しく愛を語りかけます。

夫をただの道具にしてしまいたい。真に何も出来ぬ、肉ゴマにしてしまいたい。
欲情と興奮の最中、時子は恐ろしいことに自らの欲求を叶えてしまった。
夫の目を潰すこと。
そうすることで無常にも時子は、犯した罪の大きさに気付いてしまう。
時を忘れて彼女は、自分が傷つけた夫の看病と、謝罪を続けた。
それは同情か、後悔か、愛情か。
彼の皮膚に繰り返し指でなぞった「ユルシテ」の文字。
けれど夫はなんの反応も示さない―――

結末は圧巻。人間の醜さを見せつけてきたこの物語は、悲しくも実に美しいラストを迎える。
清い愛がページの隅々からあふれてくる…
一言では語り尽くせないほどの、切ない愛情が染みる名シーンだと思います。
人によるかと思いますが、自分は感動しました。泣きました。
こんな綺麗な人間模様も書いてくれるのは乱歩は、という気分でした。
苦悩、欲望、後悔…大きく揺れ動く時子の心理描写も鮮やか。
時に激情に呑まれ、時にナイーヴな人間の気持ちをよくとらえていると思います。
もちろん、醜悪な物語であることに変わりありませんが
ただのグロテスク小説とは一線を画す魅力があふれる名作です。

ホラー・怪奇小説は自分もあまり読みませんが
そういう人にこそ、それらのジャンルの魅力を伝えられる作品。
乱歩作品初めて読むぞー、って人にもいいと思いますし
少し彼の作品を読んだことのある人には、新しい発見があるかと。
一時間もあれば読めてしまいそうな短さの短編ですので
眠れない夜なんかに読んでみるといいのではないでしょうか。
…グロは絶対に無理、って人に薦めるのは酷かもしれませんが…。

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「さざなみ」と読みます。
漫画と邦ロックとゲーム。
好きなのは思春期とかラブコメとか終末。

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