2ntブログ

正直どうでもいい(移転しました)

マンガ感想を主に書くブログ。移転につき凍結中。

[小説]爽やかすぎるひと夏の恋愛劇 『潮騒』

転載記事。詳しくはこちらで→[告知]小説の感想記事に関して
少々の修正を加えただけです。昔に書いたものなので現在とはノリが違うのも多いかも。

潮騒 (新潮文庫)潮騒 (新潮文庫)
(2005/10)
三島 由紀夫

商品詳細を見る


実は三島由紀夫初挑戦。
前知識として、彼の死に様や作品の傾向は頭に入っていましたが
この作品にはそれらから抱いてたイメージとは真逆。
清々しいほど美しく、純粋で直球な青春恋愛小説です。
なんと発表以来5度の映画化も果たしており、根強い人気を誇っているようです。


伊勢湾に浮かぶ小さな島「歌島」を舞台に、
漁師の青年真治と、海女の少女初江がいちゃいちゃしたりモメたりするお話。
人物描写も実に気合いが入っていて面白いですが
なにより素晴らしかったのは情景描写。
特に12章での蝶のシーンは読んでいてぱぁっと世界が見えた、というか開けたようで
その暗喩的な描き方も含め、実に印象的なワンシーンでした。
この他にも海や空、風や人や動物……
浜辺周辺の自然が鮮やかに描き出し、美しい孤島の風景が目に浮かびます。
どれもこれもか「生」を謳歌しているのです。

描写で思い出しました。
この作品のもう一つの魅力、女体描写です。(笑顔)
思春期の少年の溢れんばかりのパッションが…
主におっぱいへの愛がページからキラキラ眩しく輝いて見えるほどなのです。
そこらへんはネットでもよく語られる話ですねw
といってもねっとりエロチックというよりは、健康美という感じです。
さぁこれだけで何かがフルスロットルなアナタは是非読みましょう(何
こんな超有名作品に何をいまさら、という感じですがw

ストーリーについては、とくに述べる必要もないほど王道です。
何の心配もせず読み進めて問題はないかと思います。
落とし穴もなにもないのです。
が、しかし、ストーリーに穴は無いのですが
何でか、このラストの一文に不安を、というか醜さを感じてしまう。
恐らくこれは意図的な仕組み、最後の最後はやはり三島か、ということでしょうか。
自負の行き違い。
ある意味で互いのナルティシズムの…と言ったところ。
最後の最後でこう落とすかー!とちょっとニヤリw面白いw

読みやすい文体、ストレートな展開、現代にも通じる萌え要素もあり
短い小説ですので、かなりおススメしやすい作品かと思います。
海を基軸に展開していく青春物語なので、夏にはピッタリです!

[小説]醜くも強い愛の結末 『芋虫』

転載記事。詳しくはこちらで→[告知]小説の感想記事に関して
少々の修正を加えただけです。昔に書いたものなので現在とはノリが違うのも多いかも。



江戸川乱歩傑作選 (新潮文庫)江戸川乱歩傑作選 (新潮文庫)
(1960/12)
江戸川 乱歩

商品詳細を見る

短編集はどう扱おうなぁと悩みましたが
これは!と思う一遍を別個紹介していくのが分かりやすいかなと。

いろんな本に収録されているので、わりと見つけやすいと思います。
江戸川乱歩と言えば、子供向けミステリー小説の「怪人二十面相」「少年探偵団」や
怪奇小説「人間椅子」などが特に有名ですね。明智小五郎なんかも彼が生み出しました。
まぁそういうイメージが手伝って、なんとなく手を出しずらい作家の一人かと思います。
ホラーとか怪奇とか、そういうのはちょっとなぁ、って人多いかと。
そういう人にこそ読んでほしいのが、この「芋虫」です。
…まぁタイトルからしてこんなんですけど、いい小説なんですよ!
少なくともこの「江戸川乱歩傑作選」の中では
最も美しく、愛を描いた作品だと思います。
また文書の部分削除を求められた大戦時において、乱歩作品唯一の完全な発売禁止を強制されたのも本作。ようするにちょっと刺激的なのですね。

<あらすじ> -Wikipediaより
傷痍軍人の須永中尉を夫に持つ時子には、奇妙な嗜好があった。それは、戦争で両手両足、聴覚、味覚といった五感のほとんどを失い、ただ視覚と触覚のみが無事な夫を虐げて快感を得るというものだった。夫は何をされてもまるで芋虫のように無抵抗であり、また、夫のその醜い姿と五体満足な己の対比を否応にも感ぜられ、彼女の嗜虐心は尚更高ぶるのだった。

障害者への虐待。
まずこの作品を読んで感じる要素はこれです。
絶対にあってはならない、けれど人間の醜い心は、自らと違う存在を見下そうとする時がある。
たとえかつては愛した夫であろうとも。
嗜虐的快楽を求めて非道を繰り返す奥さんの姿は、とても悲しいものです…。
けど勘違いしてはならないのは、これはただグロいばかりの小説では決してないということ。
虐待という非常にヘビーな要素を用いて、この作品は悲しく愛を語りかけます。

夫をただの道具にしてしまいたい。真に何も出来ぬ、肉ゴマにしてしまいたい。
欲情と興奮の最中、時子は恐ろしいことに自らの欲求を叶えてしまった。
夫の目を潰すこと。
そうすることで無常にも時子は、犯した罪の大きさに気付いてしまう。
時を忘れて彼女は、自分が傷つけた夫の看病と、謝罪を続けた。
それは同情か、後悔か、愛情か。
彼の皮膚に繰り返し指でなぞった「ユルシテ」の文字。
けれど夫はなんの反応も示さない―――

結末は圧巻。人間の醜さを見せつけてきたこの物語は、悲しくも実に美しいラストを迎える。
清い愛がページの隅々からあふれてくる…
一言では語り尽くせないほどの、切ない愛情が染みる名シーンだと思います。
人によるかと思いますが、自分は感動しました。泣きました。
こんな綺麗な人間模様も書いてくれるのは乱歩は、という気分でした。
苦悩、欲望、後悔…大きく揺れ動く時子の心理描写も鮮やか。
時に激情に呑まれ、時にナイーヴな人間の気持ちをよくとらえていると思います。
もちろん、醜悪な物語であることに変わりありませんが
ただのグロテスク小説とは一線を画す魅力があふれる名作です。

ホラー・怪奇小説は自分もあまり読みませんが
そういう人にこそ、それらのジャンルの魅力を伝えられる作品。
乱歩作品初めて読むぞー、って人にもいいと思いますし
少し彼の作品を読んだことのある人には、新しい発見があるかと。
一時間もあれば読めてしまいそうな短さの短編ですので
眠れない夜なんかに読んでみるといいのではないでしょうか。
…グロは絶対に無理、って人に薦めるのは酷かもしれませんが…。

≪ BackHome

引っ越し先

ブログを引っ越しました。 当ブログは更新を停止し、新ブログにて更新をしています。 https://sazanami233.hatenablog.com/

楽園に花束を

プロフィール

漣

Author:漣
「さざなみ」と読みます。
漫画と邦ロックとゲーム。
好きなのは思春期とかラブコメとか終末。

連絡先。
omuraisu0317あっとyahoo.co.jp(あっと→@に)

ツイッター
ツイッターのログ

Twitter

基本毎日います。記事にしない漫画感想とかもたまにつぶやいてますので、宜しければどうぞ。

記事

カテゴリー

コメント

トラックバック

カウンター

カレンダー

月別アーカイブ

03  02  12  11  07  05  04  02  01  12  11  10  09  08  07  05  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07 

検索

リンク