[本]ストロボライト 感想
ストロボライト (2009/08/04) 青山 景 商品詳細を見る |
そしてある冬、一枚のハガキが届く。
地元の本屋をハシゴして探したもののまったく見つからず、結局名古屋まで出向くことになってしまった、少々苦い思いも詰まっている作品。
青山景さんの「ストロボライト」です。
どんな作品かといえば、これがかなり、説明するのが難しい。
しかもネタバレを避けようにも避けられない仕様。
時間軸のシャッフルと虚構で物語を完全に掻き乱してしまってるし。
フィクションinフィクションを作中で明かしてみたりする。なんていうんだ、メタフィクション?
しかもそれが二重三重に折り重なっているようで、読者を混乱させる構成になっています。
で、それを終盤に完全にブッ壊してみせる。
そして残ったのは、「これまでに綴ってきた物語によって作り出された世界」?
どういうことだろう。
「知るために書かなければならない」と言っていたわけだし、逆を言えば浜崎は、書くまでは知らなかったというわけだ。・・・何を?というか、どこまでが本当なんだ?
過去も未来も何もない男性が「これまでの自分」を創造し、そして「現在」が出来上がり、ミカと再会する未来へ行き着くのか。だったらこの最終的な未来までも全てフィクションなんじゃないか。
そもそもこの物語、つまりは最初から最後まで主人公が作り出した物語なんじゃ?
あるいは電車に乗る彼らを、これからこの漫画を読み進めて行く読者と重ねているのか?
・・・とまぁ、一度読んだだけではこんな風に・・・小難しいことで頭がこんがらがります。
2回目以降気を配って読んでいけば、きちんと整理できると思いますがw
そしてそんな小難しいことを、大学生の恋愛話と絡めてしまったってのが本作。
上に書いたように、複雑なトリックが仕掛けられた作品ですが
核となるドラマの部分は、ストレートで超センチな青春物語。
これが非情に味わい深く、感情移入して読んでしまいまして、結構ヘコみましたorz
自分の小説が認められないストレスと劣等感。
愛する彼女は、大好きな映画に出ていた女優で、才能もあって・・・。
後半、かなりビターな展開に胸が震えます。
それから迎えるクライマックスの、なんと優しく切ないことか。
淡々としていながら、今も残る愛情と、それ以上のなにかを感じます。
ですが、主人公からのきちんとした「ごめん」が聞きたかった・・・という思いもあったり。
彼はミカにひどいことをしてしまったわけだしね。
そこでよく読んでみると、231Pで彼は言っていました。
「この先、昔ミカが言ってくれた言葉の意味を、初めて思い知ることになるんだろうけど、・・・きっとそれも悪くないよ。」
かつてミカの励ましの言葉で傷つき、一方的な思いをぶつけてしまった浜崎ですが
別れてから何年も経って、婚約相手もできてから、ミカに告げたこの言葉。
二人が以前の関係にもどれることはもう無い。そんな今、今だからこそ、彼はこの言葉で「ありがとう」と言いたかったのかもしれない。一生忘れない、なんて意味も込めたかもしれない。
そういうところは、ちょっと意地っ張りだった第一話の頃と変わっていないようなw
女性側としてはどうなのか分かりませんが、男のロマンチシズムを感じるなぁ。
最後の「電車」を上手いこと絡めた暗喩表現もお見事!
不思議と、この複雑な作品をまとめてくれたような気がします。
カバーはモノクロのイラスト。最近ワリと見かけるデザインですが、やはり新鮮。
そして、ぼんやりと眺めていると、疑問が沸いて来ます。
このイラストの2人はどこを見ているのか。窓の向こうに何があるのか。
読み終わったあと、そんなことを考えたりするのも面白いかもしれません。
115Pとかを見れば答えは分かりますが・・・そこは深読みしたくなるのが読者と言うものw
『ストロボライト』 ・・・・・・・・・★★★★
物語を楽しむもよし、トリックを読み解くもよし、想像するのもよし。
たくさんの楽しみ方がある力作です。・・・読むとちょっと前向きになれるかも?
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・・・なんの宣伝もなしにポンと公開とは流石はマッグ!
いい作家さんはたくさんいるのに微妙に営業がヘタっぽいのがやっぱり好きだw
公開された作品はまだ全部は読めていませんが、「むすんでひらいて」は面白かったなぁ。絵柄が河下先生と少し似てるような似てないような。王道ですが「がむしゃらに走ればいいのさ」的なノリが大好きな方は、ぜひぜひ。
「茶の涙」なんかも面白かったです。
あまんちゅ・flat等が売れてるとは言え、まだまだ苦戦しているイメージのブレイド関連。
ネット公開ということで、ほとんど音沙汰のないブラウニー作家陣に来て欲しいなぁ。
(コミックブレイドブラウニーでググるとウチがワリと上に来るのにビックリ)