[漫画]魔法少女といっしょに世界を変えよう『昭島スーサイド☆クラブ』1巻
昭島スーサイド☆クラブ 1 (チャンピオンREDコミックス) (2012/09/20) 菅原 キク 商品詳細を見る |
やなこと全部 違う!!ってブチのめせたらな―――なんて…
「昭島スーサイド☆クラブ」1巻の感想。
平凡な街、平凡な少年、魔法使いの女の子。そんなお話です。
オビには神聖かまってちゃんのちばぎんさんがコメントを寄せており何やってるんですか感。
表紙とこのオビで興味をもって読んだのですが、内容もなかなかに面白かったです。
というか色々とツボな要素が見つけられまして、いいものに出会えたなと。
キラキラした青春漫画とは違います。青臭いけど輝かしくはない。
夜を舞台に、日陰者たちがこっそり世界を変えようとする漫画。
不良に絡まれてたら、突然空から女の子が降ってきて、助けてくれた。
そんなボーイ・ミーツ・ガールの王道のような始まりをします。しかも魔法少女!
けれどそんなファンタジーが許される世界ではないんですよね。彼女は、この鬱屈とした世界から主人公を救ってくれる存在ではない。
街ゆく人から白い目で見られてイタい子扱い。魔法なんて使えないからホウキで殴りつける。そしてときには敗北する。そんな魔法少女なんです。そう、現実はいつだって厳しいのだ。
現実的な冷たさを持った世界と、それと戦う魔法少女。うむ、これだけで心の奥深いところがズクンと震える気がする。
ケアリーこと垣之上が作った組織が「昭島スーサイド☆クラブ」。タイトルですね。
これはざっくりと言えば、勝手に町の平和をまもる組織。世界を変えるために。
東京・昭島を舞台に、トラブル解決をやっていくような感じか。
そんな魔法少女に手を引かれる主人公・涼介。
彼のスタンスがこの漫画をさらに面白く、心に響くものにしています。
だって本当に普通なんだ涼介は。不満があっても口にだせない。なんとなく、何か少し世界が変わってくれれば、と思っている。それだけです。
それは自分が変われないから変化を世界に求めている甘ったれなのかもしれない。でもそんな都合のいい期待をするのも仕方ないじゃないか。だって世界を変える力なんてないのだから。
無力感と、ぼんやりとしながらも確かにある不快感。
確かに力はないけれど、なんとかしたいという想いだけは強くある少年です。
だからこそ、この物語の主人公なんだろうなぁ。「クソくらえ」と吐き出す勇気すらないけれど、言ってやりたいという気持ちだけはある。
晴れて魔法少女ヒロイン・垣之上すうと出会った涼介。
彼女と一緒なら何かがかわる!自分にも何かできる!灰色の日常をブチ破れる!
そんな淡い期待をしてしまいますが、第2話目がイキナリ凄いのです。
完敗である。げげーっ。いきなり挫折だ。
頼みの魔法少女は大人に殴られてノックアウト。1人残されて、「ごめんなさい」と繰り返すことしかできない。垣之上さんをまもることできず、リアルな暴力の前に屈服する。
夢物語が現実に打ちのめされる瞬間は、物語はじまってすぐに訪れるのです。
いやぁキツいキツい。女の子が殴られてそこで倒れてるのに、こっちは「ごめんなさい」って相手に謝るしかできないって、超カッコわるい。でもさ、これが限界だ。今んところの。
やっている事そのもののイタイタしさもあるけれど、少年少女の思うがままには世界って変えられない、ってところを見せつけられて、読みながら予想外に傷つきます。
まるで出来損ないのセカイ系。「世界を変えるんだ!」って言ったって、たかがこんな小さな町の1つ、たった2,3人相手に負けてしまう。こんなの何ができるっているんだ。
そしてこれだけリアルに現実を立ち塞がらせる作品なら、今後もこのスタンスは変わらないでしょう。きっと彼らはこれから先何度だって負ける。わからないけど、多分。
そんな苦い想いをしてまで彼らはやっぱり、戦っていくんだろうな。心が折れるまで、時には虚勢をはって、がんばるんだろう。これはこれで、すごくアツい青春に違いない。
僕らの周りには、いくつもいくつも納得行かないことやイヤなことがあるんだ。
日陰者たちのカウンターパンチは、このクソッタレな世界に届くかな。
ボーイ・ミーツ・ガールの甘酸っぱさはあり、その楽しみはあります。
でもこの作品の本題は、少年少女がこの世界に戦いを挑んでいくその様子を、眩しく苦々しく見つめていくことにあると思います。
すっごく青臭いです。現実を見ろよ、大人になれよって話です。
でも社会に迎合できない・しようとしない彼らの行く末、見守りたくなります。
必死になろう。それくらいの覚悟で戦おう。
「自殺」と名付けられた物騒なその名前には、そんな意味で込められているらしい。
悪あがきにしか見えない。でも悪いあがきでもいいよな。
だって本当に欲しいのは、世界を変えてやろうって牙むいて拳握って立ち向かっていける自分そのものなんだ、きっと。少なくとも、主人公の本当の想いはそれだと思う。
にしても「スーサイド☆クラブ」って、このノリいいよね。
鬱屈とした世界の中、手を組んだ日陰者や外れ者たち。彼らの心からの叫びはまっすぐ口にするのは恥ずかしくて、ガキっぽいかもしれない。けれどすごくエネルギッシュで、こちらの心も突き動かされるのです。
ここはスーサイド☆クラブ。今日も明日も、勝手に死ぬ気で町をまもります。
『昭島スーサイド☆クラブ』1巻 ・・・・・・・・・★★★☆
好きな雰囲気。甘くて苦くて痛くて熱い。垣之上さんの2面性もグッとくる。中二病とは少し違うかもしれないけど、ちょっと似ている所があるかもしれない。生暖かく見守りたい。
脳内テーマ曲はスピッツ「夜を駆ける」で(どうでもいい
[漫画]リビドー全開!とびきりビタースイート!『R-中学生』2巻
R-中学生(2) (ヤンマガKCスペシャル) (2012/10/05) ゴトウ ユキコ 商品詳細を見る |
こうなったら乳首だけでも吸う!!命に変えても吸ってやる!!
うまくいかねーなぁ、思春期ってのは。
そんな想いを抱かざるを得ない、思春期のリビドーが煮えたぎっている「R-中学生」です。1巻が出てから2年以上が経ちました・・・まさに待望の第2巻!!
もともと思春期だとか青春だとかそういうテーマにめっぽう弱いんですが……この作品の持つエネルギーは相変わらずすさまじい。
読んでて次から次へ心を刺激されて、いてもたってもいられなくなる感覚は、そう味わえるものではないです。これが読みたかった・・・ずっと待ってた・・・!
1巻は作家としての初期衝動も合わさってか、そのテンションは凄いことになっていました。
→秘密のカイカン・・・傷だらけの僕らの思春期。 『R-中学生』1巻
この1巻が本当に衝撃的で。2巻が出たタイミングで再読してみたらやっぱりヤバ面白い。
あれから「ウシハル」の連載をはさんで届けられた今回の2巻でしたが、ブレないなぁ。
1巻とはちょっと違った趣のあるエピドードもありますが、基本というか芯がガシッとしてる。
それでは感想を。
感想書いていながらいくらでも感想が湧いてきて困る、というのが1巻の時の体験。
ついつい感傷的になったり、やたらとテンション上がってしまったり。
まるで読んでる自分まで中学生にもどったような感情の高ぶり。こんな気持ちうまく言葉にできないな、と感想を書いてるブログとしての全てを放り投げだしそうな勢い。まぁ頑張って言葉をひねりだしましょう。
この作品にはバカバカしいくらい胸打たれてしまうのです。本当にバカバカしいんだ。ここまで刺激うけるなんて。思春期が充満する天国のような地獄、中学校。楽しいな、苦しいな。
第2巻は2つのエピソードが収録されています。1話完結だった1巻とは違ったスタイルに。
●夢で逢えたら
少女の片思いを描いたエピソード。女子バレー部の喜多さんが主人公。
恋のお相手はおなじみのバカ野郎3人組の良心(?)、吉倉。
まだまだ女の子としてオシャレをするだとか可愛く振舞うだとか、やり方がうまくわかっていない喜多さんがかわいくて面白い。というか全体的に手探り感がすごくてニヤつく。うわーうわー初めて男子を意識しちゃってるこの感じがもう、うはー。
でもエロ馬鹿クソ野郎(とキャラ紹介ページで書かれるほど愛されている少年)堀田が、大事なシーンを台無しにしていく様子も相変わらずで安心する・・・コイツはこうでなきゃな!
最初こそギャグとして失敗談が語れれていく。「ああ残念だったなぁ、次こそは!」みたいに。
ところが少しずつそこに歪みが生じていく。人間関係がこじれだしてからが、これまた面白くて面白くて、喜多さんの目がにごりだしてからが本番と言える・・・!
つーか稲沢さん(1巻の黒ブラの娘)・・・、人の色恋沙汰に首突っ込んで応援するつもりで要らないおせっかい焼いてて・・・すげぇなんというか・・・ウザかわウザいです・・・。
本人は悪意ないつもりだから余計にダメだこりゃ・・・。
そりゃ喜多さんの瞳も心も澱んできますよ!部外者からの面白半分なイジリって不愉快
稲沢さんこういう娘だったんだなぁ、めんどくせえ!面倒見がいい。でも行き過ぎるとうっとおしい。ラインを見誤って失敗するシーンは1巻にもあったけどなぁ。
静かに高ぶる少年のリビドー。行き場を失って破裂しそうな少女のリビドー。
うまく交差できない2人の一方通行は、ヒリヒリといたんで切なさが滲む。
クライマックスは爽快でもあるし、見たくなかったものでもあるし・・・でも熱いカタマリがギュッと心に押し込められて、もう一杯一杯になってる感じ。はぁ、ため息しか出ない・・・。
あの激怒は、あってよかったし、あるべきだった。嬉しいシーンでした。
その後の「ちゃんと起きるまで一緒にいなさいよ」まで男らしすぎる・・・!
そういえば稲沢と伊地知は、なんだろうな。こいつら何げに馬合ってるよな。
1巻6話でマジギレしていたけど、自然と友達づきあいができている。
いつかこの2人と吉倉交えて、ひと波乱あるかも。あるかな。
うわーバカだ。でもこんなバカ騒ぎを友達と全力で出来る瞬間。眩しい。笑顔になれる。
●トゥー・ヤング
堀田メイン回きたぁぁぁ!ゴトウユキコ先生このキャラ好きだよなぁ!
教育実習でやってきた大学生、文子先生。
すぐに子供達に溶け込んで、いつも笑顔でキラキラ明るくて、確かにかわいい。
そして堀田は彼女の惚れてしまうのであった・・・!
あーあー、普段あんなに女子のイヤな顔をシカトして下品なことしまくってるのに、好きな相手の前ではこれだよ!ガチガチになって動けてないよ!動いたと思ったら的外れであちゃー。
正直コイツにイラッとくる場面はいくつもあります。空気よめよ、ちょっとは黙ってろよ。
でも憎めない。どころかむしろ好きなのは、コイツが1番目に見える形でパーッと思春期のエネルギーを無駄づかいしてるから。クソみたいなことやって楽しんで、それが1番青春っぽい。
これがスポーツとかで情熱燃やしてたら違うのに、でもコイツは本当にどうでもいいことで燃えている。きっと毎晩のオナニーを全力で楽しむことだけを考えているバカ。ああ、最高だな。
ここまでストレートに可愛げのある性欲をむき出しにできるのって、中学生男子くらいじゃないか。
伊地知くんとかもまた爆発して欲しいなぁ。第一話好きすぎるので。3巻以降に期待。
話がズレたので戻そう。この「トゥー・ヤング」は、堀田が大人を知るお話。
大人を知るとはアダルティな響きだけど、残念なことに「少年よ、これが大人だ」と言わんばかりの現実がここに!
うまいこと乗せられて、でもお茶を濁して、辛い現実見せつけて。大人って卑怯だ。
大人への憧れを抱いてこそそれぞれの思春期はさまざまな色合いに輝くけれど
大人への憧れを踏みにじられることも、また大きな出来事だろう。
踏みにじられるというか、子供が勝手に暴走して勝手に失望しただけなんだけれど
そういう身勝手さも、肯定的に見ることができるのは思春期パワーなのか。
それでもめげない堀田!彼こそ不屈の精神を宿す漢か・・・!
というかこのシーンが2巻で一番笑った。
「俺は次の漢字小テストで60点以上取ってふみこの乳首を吸う。だから邪魔しないでくれ(キリッ」
バカすぎるwww
このエピソードも、思春期ならではのリビドーの爆発と、うまく行かない甘酸っぱさがブレンドされ絶妙な味わい。いつだって甘さ控えめな青春だ。でもたまにはいいことあるよ。
吹き出してしまうくらい真面目にバカをやっている、この突き抜けた様子も気持いいのだ。
あ、あとのんちゃん先生いい女だなー!クッソ!ナイス大人パワー!いい先生になるよ!
先生になれよ!!!
そんなこんなの「R-中学生」2巻。
個人的には1巻の熱狂というか、あの衝撃に敵うインパクトは2巻では薄れていたかな。
でもそれは1巻の初期衝動とソリッドかつナイーブなストーリーが異常に噛み合って爆発していたためであり、2巻のクオリティが低いということでは全くありません。
むしろ1巻と比べても苦味のあるエピソードが多く、中学生の暴走が紡ぐビターエンドをいっぱいに楽しめました。ああーもどかしい!大事なところで台無しになっていく!
思春期のこのダメダメな空回りっぷりが、最高に痛々しくて、愛おしくて。
バカゆえの暴走が彼らのピュアさを表しているようで、これがまた心がビリビリくる。
上手い、とはちょっと違うかもしれないけど、相変わらず不思議な愛嬌を迷惑にまき散らす愛すべきバカ中学生達の姿は、本当に魅力的に描かれています。
そして彼らを見ながら、読者の自分まで一緒になって心がざわめく。
バカで。たまに真面目になって。エロいことばっかり考えて。情けなくて。
生々しいくらいの中学生が、エネルギー満点でここにいる。すごい漫画だわ。
中学生のエネルギーなんて、8割は性欲だけど。
ピュアで免疫のない心が柔肌さらして、そこにそっと爪痕がのこされていくような。
みんなちょっと傷ついて、たまにちょっとどころじゃなく傷ついて、泣いて、また笑う。
はーぁ。うまくいかねーなぁ、思春期ってのは。
『R-中学生』2巻 ・・・・・・・・・★★★★☆
リビドーとセンチメンタルで心が踊る思春期コミック、待望の2巻。中学生の心の機微に触れるたび、心がキュンとナイーブになる。バカバカしくて甘酸っぱい、そして気持ちいい!
[漫画]わたしを砕く、あなたのすべて。『茜色コンフィチュール』
茜色コンフィチュール (百合姫コミックス) (2012/09/18) 黒霧 操 商品詳細を見る |
この熱で燃え尽きてしまいたい
百合姫コミックス「茜色コンフィチュール」の感想を。
黒霧操さんは前作「水色エーテル」で知ったのですが、個人的にツボな百合の紡ぎ手さん。
今回はまずオビ文が素晴らしいんですよ。「わたしを砕く、あなたのすべて。」というもの。すごく好き。震える。
印象的なフレーズに彩られたこの単行本ですが、内容もいいものでした。
黒霧さんの前作「水色エーテル」。これがまた何度も泣きそうにさせられた、破壊力の高い作品集でした。とても心に残って繰り返し読んでいたり。
水色エーテル (IDコミックス 百合姫コミックス) (2011/07/16) 黒霧 操 商品詳細を見る |
収録作品の多くが悲恋・失恋モノで、一冊トータルの切なさはもはや凶暴なほど。
特に「この胸の花」「月の欠片、刹那と永遠」「春待メランコリィ」あたりは絶品。
ただ悲しいだけではなく、その見せ方の上手さに魅了されたなぁ。
女の子の隠された想い・・・それが綺麗でもそうでなくても、それを明かして
そんなわけで楽しみにしていた2冊目の作品集がこの「茜色コンフィチュール」。
コンフィチュールというのはフランス語でジャムのことを言うんだとか。
意味がわかるようなわからないような、なんとも不思議で素敵なタイトル。なんとなく雰囲気はそれらしいのをかzんじるというか。ストレートじゃないぶん想像がふくらみます。
それでは短編集ということで、個別にさらりと感想を。
●金星のカノジョ
最初の作品は、星にたとえてその輝きや遠さを描いた作品。テーマがロマンティックですな。
単行本全体で見れば、この作品はだいぶ幸せなお話だったと思います。
とは言え秘めたる黒い感情がにじんできて、決して明るいばかりのストーリーではない。
どうしようもない不安は消えずずっと胸にあって、くじけそうになるのを耐えている。
それでも最後に一歩を踏みだした主人公は、砕け散ろうと燃え尽きようと、覚悟を決めて戦いにいったわけなので、このコミックスの中ではかなり強さを持っている印象を受けます。
「準備不足の大気圏突入は、砕け散るのがお約束」
「この熱で燃え尽きてしまいたい」
クライマックスのこれらモノローグはゾクゾクきましたねー!卑屈なんだか勇ましいんだか!
片思いから駆け出して恋する相手のもとへ。「準備不足」と自分から言っているように、終盤の性急さもまた必死さが表れていて素敵です。
捻くれているけど、実はまっすぐに恋できてるあたりもちょっと珍しいかもしれない。
●零れ桜
2作目は大正ロマン的な和風百合。ここらへんからエンジンかかってきて正のエネルギーがだんだんとなくなってくる。じめっとしたムード。ほんのりダークでじわじわ痛みが広がってくる感覚。これだ・・・これだよ!憂いある2人の雰囲気は切なさたっぷり。
大正ロマンということで、着物キャラがちょいと新鮮でもあります。
2人の着物のちがう模様が1つに重なりあうシーンが意味深・・・というか明らかにそういう性行為のイメージ映像なんですけど、オシャレな演出でお気に入り。
なんといってもこのラスト、いいですねえ。絶妙に気持ち悪い。
ひどいことをされたと分かっている。相手の卑怯を恨みたい気持ちもあるだろう。
それでも好きでい続けてしまうダメな自分。だって、彼女のそんなズルさがホンの少し嬉しかったりもするから。自分を好きにさせてやろう、忘れさせないように、心に残し続けてやろう―――残酷な独占欲を浴びることは、辛いけどそれはそれで割り切ってしまえば、幸せなのか、な。でもこれ切なすぎる。
うーん紐解いていくとこの作品の感情の動きは、けっこうエグいものだと思うんだけど、それをさらりと悲恋の儚げなムードに仕込んでくるのは面白いです。「ヒドい女」だ。
●in the closet
変態だ―――――!!(AA略)って感じの第一印象。うん、これは気持ち悪いぞw
うひょあああーと妙な興奮が得られましたが、ニヤニヤできるだけではない。
気持ち悪いんだけどそれを自覚していて、だからこそ結構アレなラストを迎える。
少女同士の甘やかな関係の中に、しっかりとビターな味わいを生かしていく作品。
少女趣味の象徴みたいなお人形遊び。それをこじらせてしまい、「お人形になりたい」「あの娘をお人形みたいに好きにしたい」とそんな風に暴走していく女の子2人。
「誰よりも大切にされたい」→「私をお人形さんにして!」とシフトして思わずニヤッ・・・と。
しかし横たわるのは気持ちの微妙なズレ。
テーマのいやらしさや妄想シーンの淫靡なムードからして、かなりドキドキ。
見ちゃいけない、知っちゃいけないものに触れている感じ。個人的にはこういう感覚が百合漫画を味わう醍醐味の1つです。かすかに不気味でもある、歪んだ恋。
締め方もよかった。こうやって静かに想いを閉じ込めていく、報われなさ。
なんだかんだでこういう悲恋モノって好きなのかもな。美しいものも、こういうのも。
●シガレット≠チョコレート
箸休め的にゆるやかな空気が心地いい大学生百合。
2つ連続で、個人的にはマニアックで刺激的なのが来ていたのでいいリラックス。
パンチ不足・・・と言えなくもないけど、これはこれで好きだなぁ。
タバコの匂いと一緒に、ぼやけてはいるけど確かな切なさがふわりと漂ってくる。
きっと普通ではない恋をしているのだから、と一歩引いている主人公。
癒しではあるけど傷が和らぐものではなく、傷痕にそっと触れてくるだけのような感じ。結局痛いじゃんみたいな。けれどそういうのがいいよね。それ求めてこの作品を読んでいる面は間違いなくあるので。
でもこの作品の後日談が、巻末にある書き下ろし「茜色プロムナード」。
こちらは文句なしに甘くて甘くて甘い。この単行本においては周りとのギャップでそれくらいに感じましたよw おかげでコミックスとして見たときの読後感はよかった!
●溺れる金魚
変態だ―――!!2度目。これも強烈だなぁ。ある意味ストレートなんだけど。
主人公はおとなしい女の子。もう1人のメインキャラは主人公を見下す女の子。
心を痛めつけられるのは当然なのに、。それでも主人公はその娘の近くにい続ける。
しかもまぁその相手の娘というのが典型的な「新しい彼氏ほしー次の彼氏ほしー」系恋愛脳女子高生なので、望み薄だわなぁという感じ。
ところが読みすすめてみれば、おやおや。これはやはり主人公が面白い。
「傷ついても傍にいたい ううん 傷つくから傍にいたいの」
いい笑顔ですね・・・。まぁつまり、そういう繋がりが欲しい人。
どんなカタチが幸せな人間関係かは人それぞれだけど、この作品のそれは歪んでいるなぁ。
これは恋というか、おかしな風に自己完結しちゃってる。彼女の傍にいることが彼女の自慰にもなってる感じの。虐げられる事の冷たい痛みに取り付かれてる。依存して逃れなくなって、満足できなくなって。
のめり込んで理解を示すことはできませんけど、これもまた、不思議な世界をのぞき見た気持ち。そういうのもあるかぁ・・・。
うん、作者も気持ち悪いと思ってもらえれば本望とか書いていましたが、これは気持ち悪いな・・・それが面白い!
そんな感じの作品が詰まった単行本。
前作「水色エーテル」と比べると、全体としてはやや甘みが増したかな。
あちらが悲恋モノオンパレードで、傷つく少女たちを様々な角度から描いていく感じだったので。
しかし本作が完全に幸せかと言うとそうでもなく、やっぱり悲恋は多いな・・・!
加えて病的というか、静かに狂気に浸っているムードの作品が目立ちます。
儚げなんだけどすこし毒々しい感覚が素敵だなぁ。すこし、どころじゃないかも。
キラキラもしてるだけど、落ち着きを保ったままゆるやかな空気が漂っている様子もいい。
個人的にはだいぶ好きな百合作家さんなんだけど、がっつりこちらの胸をえぐってきます。切ない恋を味わいたい人にはおすすめしたいけど、ほわほわしたのが好きならちょっとキツそうだ・・・。実際自分の心も結構ボロボロですし、むしろ切ないだけじゃないし・・・。
心が苦しくなる作品ばかりでもないので、バランスはいい一冊だと思います。
『茜色コンフィチュール』 ・・・・・・・・・★★★★
いたたたたた。つらい。でも心に残る物語たち。万華鏡を覗いたみたいな少女たちの世界。
[漫画]明日はきっとあなたと出会う? 『今日のあすかショー』3巻
今日のあすかショー 3 DVD付限定版 (小学館プラス・アンコミックスシリーズ) (2012/09/28) モリ タイシ 商品詳細を見る |
いっそ、潔くヌードモデルとかの方が、自分には向いてるのかな…って!
モリタイシ先生の「今日のあすかショー」3巻が発売されました。
なんとアニメ化ですよ!3巻の限定版もアニメDVD付き。自分はこちらを買いました。
まぁテレビアニメでもOVAでもなく、スマホ向けのアプリか何かで配信されているらしいです。でもこのアニメ、絵もかわいらしくできてますし、結構好き。
Youtubeでも第1話が無料で配信されているので、試しに見てみては。短いですし。
で、前の巻までの感想。
→あすかちゃんの無自覚エロス記録集 『今日のあすかショー』1巻
→見逃せない女の子がここにいます。『今日のあすかショー』2巻
それでは3巻の感想へ。
3巻も全12話収録。
年1冊ペースを崩さないのはじれったくもあり、いい仕掛けだなと思わされもしたり。
季節感を強く打ち出したエピソードがおおい「今日のあすかショー」の単行本は、そのままあすかちゃんが過ごす一年間を観察できるつくりになっています。四季折々のあすかちゃんがいるのです。
人目をひくかわいらしさ。ピュアで天然。でも妙なことを考え込んでしまう面倒な性格。
今日もあすかちゃんは、街ゆく人たちの日常を、ちょっとだけ幸せにしていきます。
単行本紹介にある「ありふれた日常の風景も、彼女が現れれば忘れられない一瞬に変わる!」ということが書いてありますが、まさにそのとおりで。
彼女は特別な存在ではない。普通に学校に通う学生です。だから彼女は日常を壊さない。
彼女と会った人たちが「ああ、今日はなんとなく、いい一日だった」と満足気なため息をもらせるような、そんな存在。
この作品の何が琴線に触れるのかって、シンボルとしてのあすかちゃんなんですよ。
この漫画に登場する男性キャラはさまざまで、年齢もバラけてます。
そしてそれぞれの男たちが、違った見方であすかちゃんを見つめる。
道行くかわいい女の子A。実の娘。友達とじゃれあう少女。バスを追いかける女子高生。少年がある日出会った、ちょっと大人の女性。・・・こんな風に、あすかの立ち位置が毎回けっこー変わる。
で「なんか不思議な女の子だったな…」と思いつつ、幸せになってる。
どんな年になっても、結局かわいい女の子を目で追ってしまうものだ、男というのは。
そしてそれを容認してくれる懐の広さがある女の子なんですよ。だって盗撮されかけても笑った許してるんだもの。どんな娘だ。いい娘すぎるってレベルじゃない。
みんなあすかちゃんと会って、ほんのちょっと日常を乱されて、幸せになっている。
みんながみんな、一瞬だけ近づけたあすかという少女を思い出にするだけ。
恋人にしたいなーとかそういう欲を男側が出す描写があまりないのが面白いですね。
男たちはどこか割り切ってこの女の子を見つめている。
「適当にドライブしてたらなんかいい景色見れたわ」くらいのノリ。
ああ、こんな娘に現実に会えたら楽しそうだなぁ、なんてぼんやり考える心地よさです。この距離感がいいんですよ。あすかちゃんに特定の相手ができたら、なんか複雑だし!
あすかちゃんはみんなのもの。みんなの天使。これだ!(何がだ
くだらなく些細で、ドラマティックなワンシーン。それが男たちを元気づける。
まぁそこらへんの、あすかちゃんに感じる「遠さ」がステキなんだ、っていう話は2巻の時とかにもしてるので重複するんですが、まぁ新刊が出るたびに心に染みるのでまた書いてみました。
そういう「日常に潜むロマン」的要素が自分の心をやさしく刺激してくれる本作。
でもそんな抽象的なことよりももっとシンプルなこと。
小難しいのは置いておいても、あすかちゃんはかわいいんだ。
毎度のことながらあすかちゃんの不思議な行動は、注目せざるを得ない。
ブランコで女の子2人乗りしたらおきたハプニング・・・思わず笑ってしまったw
でもこれなら麻央ちゃん幸せそうだよな・・・!
3巻で好きだったのはこのブランコの話とか、31話「盗撮」36話「小川」とか。
あすかちゃんの天然だけど一筋縄じゃ行かない魅力が、見事に現れていました。
この作品は本当にかるーく読めて気持ちを軽くしてくれますねえ。
モリタイシ先生は個人的にはストーリー作家だと思っているんですが、こういうショートものもすごく楽しい。いでじゅうの時も1話完結エピソード上手かったしな。
あと33話「草食系男子」の話は、なるほどなと思いました。イメージにとらわれすぎていたけど、言われてみれば確かに、違和感がある表現だった。でも結局自己防衛の言い訳系男子オチw
ともかく単純に、かわいくてちょっと不思議な女の子を観察する漫画。
けれどそこになんだかロマンティックな部分も感じられて、面白いです。
まったりリラックスしながら読んで、あすかちゃんの魅力をふわふわ味わう。
『今日のあすかショー』3巻 ・・・・・・・・・★★★★
安定のシリーズ。掴みどころがが有るような無いような・・・不思議な女の子に抱くロマン。
[漫画]もっと近づいて、もっとドキドキして。『あさがおと加瀬さん。 』
あさがおと加瀬さん。 (ひらり、コミックス) (2012/07/28) 高嶋 ひろみ 商品詳細を見る |
加瀬さんの自転車は すごく揺れたけど すごく速かったです
今日は高嶋ひろみ先生の単行本「あさがおと加瀬さん。」です。
新書館の百合アンソロジー「ひらり、」にて掲載され続けた加瀬さんシリーズがようやくコミックス化しましたよ。待ってました待ってました。というかやっと「ひらり、」レーベルコミックス出た!
高嶋ひろみ先生と言えば自分は「未満れんあい」で知って好きになったのですが
本作は百合漫画ということで、女の子同士の甘いひと時が描かれた作品。
「ひらり、」本誌の感想を書いたときに加瀬さんシリーズにも触れていたのでよければどぞ。
甘く切ない、だけじゃない。 『ひらり、』Vol.4
真夏の夜の夢。いじっぱりな秘密。 『ひらり、』vol.5
どんくさい(ひどい)けどいろんなことに一生懸命な女の子、山田。
彼女の憧れは、美人で活発でカッコいい隣のクラスの女の子、加瀬さん。
あさがおをきっかけに、加瀬さんとのちょっとしたつながりを得た山田ですが、実は加瀬さんもチラチラと山田のことを気にしているようで。
気になるしもっと近づいてみたいけど、勇気も出ないしきっかけもないし・・・
心地よい緊張が微笑ましい恋のはじまり!ビクビクしながら、ちょっと期待しながら、でもうまく踏み込めない・・・で、そわそわしてばかりの2人。もう!かわいいなぁ!
第一話だとこのシーンが大好きです。
こっそり盗み見ていたら、向こうもこっちを盗み見ていました、という場面。
うひゃあですよ。うまく誤魔化せてない加瀬さんの照れた様子がたまらんです。
ほとんど山田と加瀬さんのふれあいを描いていき、基本的には不安になることもハラハラさせられることはありません。
眩しいくらいキラキラしてて、前向きでハッピー。
切ない百合も好きですが、女の子たちが満面の笑みを浮かべ笑い合ったり、寄り添い合って穏やかな時間を過ごしたり・・・そんな幸せすぎる百合というのも大好きです。
安心して「かわいいなあかわいいなあ」とテンションを高められる作品です。
ただちょっとだけ計算高いところを見せたりするんですよね。
女の子だって女の子をやらしい目で見たりしてる。
でもそういう部分にもまた、恋愛を満喫しているなぁこいつら!という感慨が湧いてきます。キラキラしただけじゃない、ちょっとジメッとした感情だって、やっぱり恋なのだ。そういう気持ちがあってこその恋とも言える。
そのジメッとした部分も読者をぎょっとさせるような雰囲気は一切なく、「ああもうかわいい!」という熱狂をあさらに加速させる一要素として存在している。
ちょっぴりのやましさや、密かにしかけるかけひきが、さらにこの作品を面白くしています。
単行本で一番の名シーンだと感じるのがここ。
この一瞬のやりとりには本当に胸ときめいた。リアルに悶えました。
山田が使ったボトルで、間接キス。
間接キスを当然意識した上で、さらに山田にも意識させるための目配せ。
そして口を離したときに「ちゅっ」と鳴らしたのも、もうこれわざとだろ!
もっと私を意識してよって言ってるようなもんですよ!(笑顔)
はぁー、うん。この2人、すごくかわいい。シンプルな感想だけど、かわいいです。
山田が顔を赤らめて右往左往するのもたまらないし、加瀬さんがその凛々しさの中に女の子らしい欲張りな一面を秘めているのもたまらない。
期待したいけど勇気が出せず、でも触れ合ったら期待以上の一歩を進む2人。
2人の絆が深化していき、この単行本の中でいったんまとまるので読後感もいい。
そのクライマックスの盛り上げ方もよくて、ニヤニヤが止まらんです!
読んでてきっと幸福な気持ちになる作品ですねえ。
しかし加瀬さんシリーズは続くのです。というのが最後に書いてあってほっと一安心。
お気に入りのシリーズだったので継続とても嬉しいですね。
まぁ掲載ペースを考えると、次の巻がでるならだいぶ先でしょうけども。
それまでは「ひらり、」系列で追うとします。
とりあえず、とびきりかわいい百合漫画ということで〆。
『あさがおと加瀬さん。』 ・・・・・・・・・★★★★
ドキマギしてドタバタしてる2人に読んでる側はとってもニヤニヤできる。山田は加瀬さんの嫁。