[漫画]魔法少女といっしょに世界を変えよう『昭島スーサイド☆クラブ』1巻
昭島スーサイド☆クラブ 1 (チャンピオンREDコミックス) (2012/09/20) 菅原 キク 商品詳細を見る |
やなこと全部 違う!!ってブチのめせたらな―――なんて…
「昭島スーサイド☆クラブ」1巻の感想。
平凡な街、平凡な少年、魔法使いの女の子。そんなお話です。
オビには神聖かまってちゃんのちばぎんさんがコメントを寄せており何やってるんですか感。
表紙とこのオビで興味をもって読んだのですが、内容もなかなかに面白かったです。
というか色々とツボな要素が見つけられまして、いいものに出会えたなと。
キラキラした青春漫画とは違います。青臭いけど輝かしくはない。
夜を舞台に、日陰者たちがこっそり世界を変えようとする漫画。
不良に絡まれてたら、突然空から女の子が降ってきて、助けてくれた。
そんなボーイ・ミーツ・ガールの王道のような始まりをします。しかも魔法少女!
けれどそんなファンタジーが許される世界ではないんですよね。彼女は、この鬱屈とした世界から主人公を救ってくれる存在ではない。
街ゆく人から白い目で見られてイタい子扱い。魔法なんて使えないからホウキで殴りつける。そしてときには敗北する。そんな魔法少女なんです。そう、現実はいつだって厳しいのだ。
現実的な冷たさを持った世界と、それと戦う魔法少女。うむ、これだけで心の奥深いところがズクンと震える気がする。
ケアリーこと垣之上が作った組織が「昭島スーサイド☆クラブ」。タイトルですね。
これはざっくりと言えば、勝手に町の平和をまもる組織。世界を変えるために。
東京・昭島を舞台に、トラブル解決をやっていくような感じか。
そんな魔法少女に手を引かれる主人公・涼介。
彼のスタンスがこの漫画をさらに面白く、心に響くものにしています。
だって本当に普通なんだ涼介は。不満があっても口にだせない。なんとなく、何か少し世界が変わってくれれば、と思っている。それだけです。
それは自分が変われないから変化を世界に求めている甘ったれなのかもしれない。でもそんな都合のいい期待をするのも仕方ないじゃないか。だって世界を変える力なんてないのだから。
無力感と、ぼんやりとしながらも確かにある不快感。
確かに力はないけれど、なんとかしたいという想いだけは強くある少年です。
だからこそ、この物語の主人公なんだろうなぁ。「クソくらえ」と吐き出す勇気すらないけれど、言ってやりたいという気持ちだけはある。
晴れて魔法少女ヒロイン・垣之上すうと出会った涼介。
彼女と一緒なら何かがかわる!自分にも何かできる!灰色の日常をブチ破れる!
そんな淡い期待をしてしまいますが、第2話目がイキナリ凄いのです。
完敗である。げげーっ。いきなり挫折だ。
頼みの魔法少女は大人に殴られてノックアウト。1人残されて、「ごめんなさい」と繰り返すことしかできない。垣之上さんをまもることできず、リアルな暴力の前に屈服する。
夢物語が現実に打ちのめされる瞬間は、物語はじまってすぐに訪れるのです。
いやぁキツいキツい。女の子が殴られてそこで倒れてるのに、こっちは「ごめんなさい」って相手に謝るしかできないって、超カッコわるい。でもさ、これが限界だ。今んところの。
やっている事そのもののイタイタしさもあるけれど、少年少女の思うがままには世界って変えられない、ってところを見せつけられて、読みながら予想外に傷つきます。
まるで出来損ないのセカイ系。「世界を変えるんだ!」って言ったって、たかがこんな小さな町の1つ、たった2,3人相手に負けてしまう。こんなの何ができるっているんだ。
そしてこれだけリアルに現実を立ち塞がらせる作品なら、今後もこのスタンスは変わらないでしょう。きっと彼らはこれから先何度だって負ける。わからないけど、多分。
そんな苦い想いをしてまで彼らはやっぱり、戦っていくんだろうな。心が折れるまで、時には虚勢をはって、がんばるんだろう。これはこれで、すごくアツい青春に違いない。
僕らの周りには、いくつもいくつも納得行かないことやイヤなことがあるんだ。
日陰者たちのカウンターパンチは、このクソッタレな世界に届くかな。
ボーイ・ミーツ・ガールの甘酸っぱさはあり、その楽しみはあります。
でもこの作品の本題は、少年少女がこの世界に戦いを挑んでいくその様子を、眩しく苦々しく見つめていくことにあると思います。
すっごく青臭いです。現実を見ろよ、大人になれよって話です。
でも社会に迎合できない・しようとしない彼らの行く末、見守りたくなります。
必死になろう。それくらいの覚悟で戦おう。
「自殺」と名付けられた物騒なその名前には、そんな意味で込められているらしい。
悪あがきにしか見えない。でも悪いあがきでもいいよな。
だって本当に欲しいのは、世界を変えてやろうって牙むいて拳握って立ち向かっていける自分そのものなんだ、きっと。少なくとも、主人公の本当の想いはそれだと思う。
にしても「スーサイド☆クラブ」って、このノリいいよね。
鬱屈とした世界の中、手を組んだ日陰者や外れ者たち。彼らの心からの叫びはまっすぐ口にするのは恥ずかしくて、ガキっぽいかもしれない。けれどすごくエネルギッシュで、こちらの心も突き動かされるのです。
ここはスーサイド☆クラブ。今日も明日も、勝手に死ぬ気で町をまもります。
『昭島スーサイド☆クラブ』1巻 ・・・・・・・・・★★★☆
好きな雰囲気。甘くて苦くて痛くて熱い。垣之上さんの2面性もグッとくる。中二病とは少し違うかもしれないけど、ちょっと似ている所があるかもしれない。生暖かく見守りたい。
脳内テーマ曲はスピッツ「夜を駆ける」で(どうでもいい
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