[本]雲のむこう、約束の場所 小説版 感想
雲のむこう、約束の場所 (2005/12/26) 新海 誠加納 新太 商品詳細を見る |
今はもう遠いあの日、あの雲の向こうに、彼女との約束の場所があった。
まるっと2年かけて読み終えた小説。
またまたご冗談を、なんて思われるかもしれませんが、、これが本当に本当なのです。
壁紙スレでは常連の新海誠監督による長編アニメ映画「雲のむこう、約束の場所」。
10回近くもDVDで見直している、大好きな映画です。
そこに本編には無かったシーンや視点、さらにエピローグまで加えた完全補完作品。
ある意味では、これを読むまで、この作品は完結してはいなかった。
アニメを見ただけでは知りえなかった舞台の裏側を知ることができる反面、
この作品の良さでもあった、「想像する楽しみを」奪ってしまう一冊です。
内容・・・についてですが
ストーリー全体について書いてしまうとエラく長文になってしまいそうなのでカットw
原作映画より追加されているシーンは主にここらへん。
原作が好きならぜひとも見て欲しいシーンばかり!・中学時代・3人の出会い。
・サユリ消失後の二人。
・上京後、ヒロキの高校時代。
・研究室勤めのタクヤの様子。
・塔破壊後の、ヒロキとサユリの生活。
個人的に良かったのは、中学時代の3人の出会いと、ヒロキの高校生活かな。
中学時代は小説版での追加が非常に多く、メインの3人がどのように知り合い、距離を縮めていったのかが詳しく分かる内容です。
サユリが語った宮沢賢治についてのことも、印象深いシーンですね。
後者の上京後のヒロキの生活も追加シーンが多く、映画ではスピーディかつ断片的にしか描かれていなかった時期なので、ここまで大ボリュームで描かれていたのは嬉しい限り。
ここで語らなければならないのは、オリジナルキャラ・水野理佳のこと。
上京したヒロキともっとも親しくなる女の子です。
彼女の存在が、物語にさらなる深みを与えていると思います。
彼女は、すなわちヒロキそのもの。
お互い寄り添ってはいるけれど、それは「逃避」だということも、うっすら感じている。
2章ラスト・・・学校で彼女をふりきって走り、北海道へ戻るヒロキ。
理佳がヒロキ自身ならば、ヒロキは「過去の自分」を取り戻すため、「現在の自分」である少女を置き去りにして走り去っているのです。
「取り戻すため、過去へと戻る」という構図。
これはこの物語そのもの。小説オリジナルシーンなのに、これまたよく出来たエピソードです。
―――ちなみに。
ヒロキは理佳に「戻ってきたらまた君と会いたい」と言いますが・・・
・・・結果的に言えばこれは叶えられませんでした。
そしてヒロキが全てを賭して取り戻した少女・サユリとも・・・。
過去と未来、どちらも同時に掴み取ることは、当然ながら不可能。
それどころかヒロキは、「現在の自分」も「過去の自分」も両方失ってしまった。
カラッポのまま生きて、大人になってしまった。
それでも、ヒロキの行動によって救われた人々は大勢いる。これは間違いない。
センチメンタルな作品ですが実に骨太な男らしさがあるような気がしてなりません。
全ての不幸を背負いひとりになった男・・・。
けれど、自分が愛した少女は、いまもどこかで生きている。
それでいいじゃないか、とこうなるわけです(ヒロキは未練たらたらですが)。
男のロマンじゃないですか・・・!まさにヒーローですよ。
なんで読了に2年もかかったのか、自分でもわかりませんw
なんどもなんども反芻するように読み直して読み直して味わって、少しずつ読み進めていたらこんなに時間が経っていましたww
新海さんの描く文章は、詩的な美しさがあって、やわらかな印象があるのですが
小説版を手がけた加納新太さんの文章は新海さんとは違い、重厚で生々しい迫力があります。
ですが、これは間違いなく新海作品だと言い切れる、美しさもあるのです。
新海さんの作品だという証を残しつつ、文学作品に昇華されている。
読者が本当に読みたかった部分・・・または目を背けたかった部分まで
鋭利なまでの文体で切り込んでくる。
確かにあのアニメ映画とは雰囲気が少々変わってしまっていますが
個人的にはとても気に入りました。
原作よりも「運命の残酷さ」が強く描かれています。
というか、目で文字を追うだけでも楽しいんですよ、この本w
素晴らしい読み心地の良さ。それでいてこのボリューム。ぜひ読んで欲しいです!
一般書店で見かけることは珍しいとは思いますが、いちおう注意。
これは映画の原作本ではなく、原作であるアニメ映画の内容を補足する小説です。
アニメならアニメの、小説なら小説の楽しみ方がありますが
個人的にはやはり 原作アニメ→小説版 の順で読んで欲しいと思います。
その方が、どちらも味わい深くなると思いますので。
『雲のむこう、約束の場所』小説版 ・・・・・・・・・★★★★☆
帯とセットの装丁がとても綺麗な小説版。2年かけて読みましたw
アニメを見て気に入った方に、ぜひとも読んでほしい一冊です。
ノスタルジーをめいっぱい感じたい人にもオススメ・・・。
[本]私立エルニーニョ学園伝説立志篇 感想
「東派だった?西派だった?」
と、俺の同世代の人間に尋ねれば、みなそれぞれの思い出を語りだすと思います。
それはもちろん「いちご100%」のことです。
長い週刊少年ジャンプの歴史の中で、最長の連載期間を誇るラブコメ作品。名作!
思春期だった俺はこの作品で、黒髪の素晴らしさ・・・体操服が雨で透けることの素晴らしさ・・・レースブラの素晴らしさ・・・東城さんの神々しいまでのかわいらしさ・・・を、はっきりと理解しました。
エロスと恋愛の教科書のような作品でした・・・!
当時「いちご100%読んでいるぜ!」などと公言する、これすなわちクラスメイトから変態の烙印を押されること間違いなし、という情勢でありました。みんなシャイだったんです。
中3になってみんなに聞いてみたら「実は俺も隠れて読んでた」というヤツばかりでした。
「いちご100%」は間違いなく僕らの思春期を語る上で外せない存在なのです。
ちなみに西エンドだったことをいまだに残念に思っています。
けど東城にはもっと良い男と幸せになって欲しいので、ある意味良かったかw
ついに伝説の委員長が降臨されたぞ!
前置きが長くなりすぎましたが、今日はラノベ「私立エルニーニョ学園伝説」の感想。
前評判を一切仕入れずに特攻した、絵師買い作品第2弾となりますw
なんでいちごの話をしたのかと言えば、イラスト担当が河下水希さんだからです!
ノリは至極オーソドックスな学園コメディ。
様々な特技、能力を持つ人材が全国からかき集められた「私立エルニーニョ学園」。
そんな学校に転入することになってしまった主人公。
そして名前のインパクトだけで「伝説の委員長だ!」と祭り上げられてしまいます。
クラスメイト曰く「地下神殿の遺跡にあった通りだ!!」
それも全て、彼自身の名前のせいだった。
彼の名は城蓮寺鳳勝。
地下神殿から発掘されたプレートに「伝説の委員長になる」と描かれていた少年だったのです。
もうこの時点で面白いw
誰も「地下神殿」にも、「委員長」と超現代的単語が入ってることにも疑問を持たないww
それ以外にも、クラスメイトのキャラもいい具合にネジがトんでて
学園コメディとして非常に楽しめると思いますw
キャラのセリフに対し、地の文で軽快にツッコミを入れていくあたりバカテスっぽいかな。
いかにもライトノベルといった雰囲気で、ラノベ好きな方なら違和感なく読めるかと。
積極的にフォント変更をしていたりするので、もともとのテンションの高さ・セリフの多さと合わせて、非常に読みやすい作りとなっています。
非常にテンポよく展開していくので、ほぼノンストップで読みきれるかとw
しかしながら最高のテンポの良さにも欠点が。
あまりにもスムーズに進むため、数々のシーンで説明不足を感じます。
今どこにいるのか、そこかどうなっているのか、誰がいるのか・・・。
それらをもう少し詳しく描写してさえくれれば何の文句ありませんでした。
さらに言えば、キャラクター描写も淡白すぎる。
ねちっこくやるのもどうかと思うけど、ちょっとあざといぐらいのレベルでちょうどいいと思う。
キャラは良いのに、その魅力を十分に発揮しきれなかった印象です。
800円でこのボリュームとは、ちと残念。
展開はいいのですが、ストーリーも短いです。
そんなこんなで、欠点もありますが・・・
全体として非常に読みやすい、ポップな学園モノだと思います。
ラノベ棚にあるかどうか分かりませんが、気になったらぜひ探してみてください。
多分ジャンプ漫画コーナーの端っこにあると思います・・・本屋にもよりますがw
『私立エルニーニョ学園伝説 立志篇』 ・・・・・・・・・★★★☆
読み易さバツグンの一冊。さて、2巻は無事発売されるのかw
アソビット「けいおん!」人気投票中間発表 1位「澪」 2位「唯」 3位「紬」
たくあんどころか妹にすら負けてるorz 律いいと思うんだけどな~、自然体な感じで。
秋葉原リュックサック着用率調査 すごく減少
オタク=シャツイン&リュック はもう成り立たないようです。
俺も基本ショルダーバッグです。あんまり大きくないのでたまに漫画が入らない。
と、俺の同世代の人間に尋ねれば、みなそれぞれの思い出を語りだすと思います。
それはもちろん「いちご100%」のことです。
長い週刊少年ジャンプの歴史の中で、最長の連載期間を誇るラブコメ作品。名作!
思春期だった俺はこの作品で、黒髪の素晴らしさ・・・体操服が雨で透けることの素晴らしさ・・・レースブラの素晴らしさ・・・東城さんの神々しいまでのかわいらしさ・・・を、はっきりと理解しました。
エロスと恋愛の教科書のような作品でした・・・!
当時「いちご100%読んでいるぜ!」などと公言する、これすなわちクラスメイトから変態の烙印を押されること間違いなし、という情勢でありました。みんなシャイだったんです。
中3になってみんなに聞いてみたら「実は俺も隠れて読んでた」というヤツばかりでした。
「いちご100%」は間違いなく僕らの思春期を語る上で外せない存在なのです。
ちなみに西エンドだったことをいまだに残念に思っています。
けど東城にはもっと良い男と幸せになって欲しいので、ある意味良かったかw
私立エルニーニョ学園伝説 立志篇(JUMP j BOOKS) (JUMP j BOOKS) (2008/12/15) SOW河下水希 商品詳細を見る |
ついに伝説の委員長が降臨されたぞ!
前置きが長くなりすぎましたが、今日はラノベ「私立エルニーニョ学園伝説」の感想。
前評判を一切仕入れずに特攻した、絵師買い作品第2弾となりますw
なんでいちごの話をしたのかと言えば、イラスト担当が河下水希さんだからです!
ノリは至極オーソドックスな学園コメディ。
様々な特技、能力を持つ人材が全国からかき集められた「私立エルニーニョ学園」。
そんな学校に転入することになってしまった主人公。
そして名前のインパクトだけで「伝説の委員長だ!」と祭り上げられてしまいます。
クラスメイト曰く「地下神殿の遺跡にあった通りだ!!」
それも全て、彼自身の名前のせいだった。
彼の名は城蓮寺鳳勝。
地下神殿から発掘されたプレートに「伝説の委員長になる」と描かれていた少年だったのです。
もうこの時点で面白いw
誰も「地下神殿」にも、「委員長」と超現代的単語が入ってることにも疑問を持たないww
それ以外にも、クラスメイトのキャラもいい具合にネジがトんでて
学園コメディとして非常に楽しめると思いますw
キャラのセリフに対し、地の文で軽快にツッコミを入れていくあたりバカテスっぽいかな。
いかにもライトノベルといった雰囲気で、ラノベ好きな方なら違和感なく読めるかと。
積極的にフォント変更をしていたりするので、もともとのテンションの高さ・セリフの多さと合わせて、非常に読みやすい作りとなっています。
非常にテンポよく展開していくので、ほぼノンストップで読みきれるかとw
しかしながら最高のテンポの良さにも欠点が。
あまりにもスムーズに進むため、数々のシーンで説明不足を感じます。
今どこにいるのか、そこかどうなっているのか、誰がいるのか・・・。
それらをもう少し詳しく描写してさえくれれば何の文句ありませんでした。
さらに言えば、キャラクター描写も淡白すぎる。
ねちっこくやるのもどうかと思うけど、ちょっとあざといぐらいのレベルでちょうどいいと思う。
キャラは良いのに、その魅力を十分に発揮しきれなかった印象です。
800円でこのボリュームとは、ちと残念。
展開はいいのですが、ストーリーも短いです。
そんなこんなで、欠点もありますが・・・
全体として非常に読みやすい、ポップな学園モノだと思います。
ラノベ棚にあるかどうか分かりませんが、気になったらぜひ探してみてください。
多分ジャンプ漫画コーナーの端っこにあると思います・・・本屋にもよりますがw
『私立エルニーニョ学園伝説 立志篇』 ・・・・・・・・・★★★☆
読み易さバツグンの一冊。さて、2巻は無事発売されるのかw
アソビット「けいおん!」人気投票中間発表 1位「澪」 2位「唯」 3位「紬」
たくあんどころか妹にすら負けてるorz 律いいと思うんだけどな~、自然体な感じで。
秋葉原リュックサック着用率調査 すごく減少
オタク=シャツイン&リュック はもう成り立たないようです。
俺も基本ショルダーバッグです。あんまり大きくないのでたまに漫画が入らない。
[本]C3-シーキューブ- 6巻 感想
C3‐シーキューブ〈6〉 (電撃文庫) (2009/03/10) 水瀬 葉月 商品詳細を見る |
最低すぎる。
フィアたんをはむっとアマガミしたいお!
・・・・・・さて、だいぶ遅れましたが、シーキューブ6巻の感想行きましょう。
中表紙のデザインも一新、ドラコニアンズ編開幕の予感な第6巻。
あいっかわらず表紙や萌えキャラでオタを釣って、そのまま引き摺り落とす悪趣味な展開にハートがキュンキュン高鳴ります。
もはやオビで隠すとかそういうレベルじゃない見事なパンツっぷりにもキュンキュンデス。
さて今回は勉強会&プール回・・・!
口絵でおっぱいをはみ出させようが、割れ目を描こうが、その全てが許されるロケーションでございます。やっぱり水着っていいもんだ。
前回で影の薄かった黒絵もきちんと参戦。
レギュラー陣っほぼ総出演でのパラダイスが繰り広げられます。
特筆すべきはいんちょーさんの可愛らしさ。
ハルアキにむりやりウォータースライダーに押し込まれた後のあの上目使い+なみだ目+照顔+手で必死に隠してるしぐさ・・・んんんー良い!!
黒絵の白スクもたまりません・・・!リアルじゃ見たことも聞いたこともないけどな!
いつまでもラブでコメってる場合ではありません。今回もバトルあり。
勉強会で絆を深め、しかし裏切り襲い掛かってきた切子。
彼女の放ったこの台詞は、あまりにも鮮烈。
おかしな話だ。今は切子がフィアさんのことを友達と思っているかが大事で、フィアさんが切子のことをどう思っているかは全然関係ないのでした。
裏切りという行為によって求められるものは、本来は「相手が絶望すること」であるはず。
ところがこの女は、フィアが自分のことをどう思おうと感じようと、関係ないと言う。
なぜなら、「友達であったはずのフィアを裏切り、そのことに心を痛めつつも完璧に彼女を殺す」ことが目的だから。
つまり切子は、心のそこからフィアを友と思いながら、自分のために殺そうとしている。
彼女が求めるのは「友を殺す」という行為そのもの。
「友を殺すことが出来る自分」を手に入れようとしているだけなのだ。
いいよいいよー!
じわじわくる異物感。やっぱりね、敵はこうでなくちゃってことですよ!
これくらい腐った相手じゃないと、気持ち良い戦いになりませんw
実際に読んでみれば、彼女がどんなにイカしてるか分かると思います・・・!
それでも可愛らしいキャラだから、余計にもやもやするw
でもこういう粘りつくような陰湿さは、流石は水瀬さんって感じです。
しかしもう六巻目か。人気出たら前作、魔女カリの続刊出るのかな?w
『C3-シーキューブ-』6巻 ・・・・・・・・・★★★☆
発売ペースも上々。このまま人気シリーズへと駆け上がっていってほしい作品。
・・・一般ウケしづらいブラックさがあるから、無理かも?
巻末に謝罪文がありました。
5巻で、本文の内容と挿絵が食い違っている箇所があるということでした。
自分は気づかなかった・・・のですが、非常に丁寧な対応で高感度高いですねw
田村くんとか半分の月にもミスはありましたが、謝罪文載せてるのは初めて見ましたw
これは編集さんの仕事かな。GJです。ますます応援したくなりました!
[本]ZOO2巻感想 追記でアニメのこと
ZOO〈2〉 (集英社文庫) (2006/05) 乙一 商品詳細を見る |
たまには一般小説の感想でも書きますよ。
といっても乙一さんですがね。ZOO1を読んだのは相当前ですが、ようやく2冊目です。
・血液を探せ!
白。非常にコミカル。一応ミステリー風な進行をするものの、ほとんどコメディですw
謎解きなんかする暇もないくらいのテンポの良さ、笑えるやりとり。
みんなが真面目なのにナチュラルに変なことを言ったりやったりしてるw
ですが、ZOOという作品においては、ちょっと他の作品よりパワーダウンかなと印象。
まぁある意味、次の短編とのギャップを楽しむ作品です。
・冷たい森の白い家
極悪ダークメルヘン。
やたらと読みやすい簡潔な文章で綴られるのは、凄惨でグロテスクな物語。
まさに誰得と言いたくなるくらい、救いもなにも無い。ステキに狂った作品です。
馬小屋に住み、ゴミ同然のような仕打ちを受け育った、顔がへこんだ男。
やがて彼は人間を殺害・拉致し、森の中に死体をくみ上げて家を作ります。
そんなところに、一人の少女が現れて言うのです。
『私が弟のかわりになるわ』
彼女の弟は、すでに他の死体たちと組み合わさり、家を支えている。
少女は生きながらにして死体の家に埋まり、やがて潰れ、そして冷たくなり・・・
・・・・・・あぁ。キツいなぁ。小さな女の子くらい、幸せにして欲しかった・・・。
こんなのを「血液」からの流れで読ませるんだから、どんだけ悪趣味なんだこの本はww
子供には絶対読ませられないメルヘンです(と子供が言う)。
やるせなさすぎ。
・Closet
最後のトリックに読者がハマるかどうかに全てを賭けている作品。
「読者をだますミステリー」としては、これまで読んだことのない感覚を味わえましたw
読んでてニヤリとできる、という点に関しては、これが一番だったかも。
三人称だと思っていたら、急に語り手が現れるこの感覚!
面白い、という言葉がピッタリな短編。
・神の言葉
これが一番引き込まれました。個人的にはこの作品がMVP。
口に出したことをなんでも現実にしてしまう能力。
そんな力を持ってしまった少年が、その能力ゆえに、無限地獄に閉じ込められるお話。
文章の隅々から漂う絶望感・・・無力感・・・。感情移入しすぎるとヤバいですコレは。
読んでいるとマジで気が狂ってしまいそうになります。
グロテスクなスプラッタ系もアリですが、こういうブラックさも大好きでございます。
・落ちる飛行機の中で
「血液」と同じタイプの、コミカルな短編。
ですがこちらの方が「ハマってる」と感じましたね。
内容は、ハイジャックされた飛行機内で、安楽死の薬を買うか否か、というもの。
3人の登場人物がそれぞれいろんな思いで自分のことを語りますが
それがどうにも可笑しくて笑えてくるwなんでこんな能天気な感じなんだろうw
その背後にはばったんばったん人が殺されているという現実があるのにw
飽きない展開と、間の抜けた会話が異様にマッチしている秀作でございます。
ですが、終わり方はグッとビターに。
彼女は何を思って走ったのか。いい終わり方だ。
・むかし夕日の公園で。
ラストはホラー。たったこれだけのページなのに、いろんな感情が起き上がってくる。
恐ろしい。けれど確かな余韻が味わえた短編でした。たった4Pですけどね。
『ZOO』2巻 ・・・・・・・・★★★☆
小説ならではの面白さが詰まってる作品。ただゴッタ煮感がすごすぎるww
[本]猫泥棒と木曜日のキッチン 感想
たまには普通の小説でも。
ニセモノだろうが、間違っていようが、かまうものか。
2005年に当時のメディアワークスから発売された単行本が、新潮社から文庫化。
作者の大衆小説界への移行をより強く感じた出来事でした。
いまやすっかり一般の方へ移っていった橋本さんの作品。
少々昔の作品になるのですが、作者の不動の世界観を感じられる一作でした。
もともと橋本さんは「ラノベっぽくないラノベ」を書いてましたしね。
二人いる父親はもうおらず、ついには母親にも逃げられた姉弟。
そんな厳しい現実をものともせず、ケロリとした表情で特に変わったことのない日々を送る高校生、みずき。父親が違う美少年な弟、コウちゃん。
母親のいない二人の家庭に、ふとしたきっかけから入ることになったみずきの同級生、健一。
「大人がいなくなった家庭」で、まったりのんびりと日常が繰り広がられます。
猫好きの橋本さんらしい、にゃんこを主軸にストーリーが進んでいく展開。
母親が出て行った後、みずきは轢き捨てられた猫の死体を持ち帰り、家の庭に埋めていくようになります。やがて一匹の弱った猫が彼女たちの元にやってきて・・・という感じ。
魔法もロボットもない、SF要素も、アクションもない。学園モノでもないと思う。
でもこの作品には確かに「高校生」がいて。悩んだり笑ったり泣いたりして日々を生きていて。
大人のいない生活は不便だけど、決して生きていけないわけでもない。
ほんの少しズレた現実でも普通に過ごすみずきは、しかし捨て猫に関することになると豹変します。
たぶん、みずきは親がいなくなってしまって、本当は泣きたくなるくらいに悲しかったんだと思う。だけど無意識のうちにそれを押さえつけて、平然としてしまっていた。「父親」の存在があったから。
そこで捨て猫の登場。みずきは捨て猫・・・さらに言えば殺された猫たちに、感情移入をしてしまった。「捨てられた子供」として、同じものを感じてしまったのかな。
とまぁそんなことを読みながら思ったわけですが、個人的には健一君が素晴らしい。
みずきサイドと健一サイドの二つの視点で物語は描かれており、精神面で対照的な二人にそわそわしつつ、健一君の青臭い片思いにニヤニヤしてしまうわけです。
やっぱり俺は男子高校生なわけで、同年代の彼のあれこれは共感できるもものが多いです。
変なことで簡単に浮かれて沈んで、少しばかり行き過ぎてしまうこともある(健一君はオーバーしすぎましたが、こういうのもヨシ!)。ムダなことだと知りつつやってしまうこともたくさんあるのです。
男の子がいてこその青春小説だなぁとw
ややヘビーな終盤、だけどその解決策は笑ってしまうくらいに無謀で子供っぽい「猫泥棒」。
エピローグはすべてを丸く治めることはせず、この先の未来を期待させる終わり方でした。
橋本さんの作品の多くは「あれっ、ここで終わりなの」と読み終わり、ストーリーを反芻していくと、あのタイミングで終わるのがベストだったんだなと思わされる作品が多いと感じていますが、この本もそう。
自分は本を読み終わったけれど、彼らはこの先も生きていくんだなと分かって、読み終わるのが惜しくなる。終わってしまうのが悲しく切なく、そして暖かいのです。
「半分の月がのぼる空」でも、この感覚に半年は苦しめられたなw
普遍的で、でも見失いがちななにかを、そっと思い出させてくれる。
言葉にすれば陳腐なそれを、さりげなく心に届けてくれる。
橋本さんの作品の暖かさをもっと多くの人に知ってほしいですね。
『猫泥棒と木曜日のキッチン』 ・・・・・・・・・★★★★
ナイス青春小説。みずきの強かでさばさばした感じがツボでございます。
猫泥棒と木曜日のキッチン (新潮文庫) (2008/11/27) 橋本 紡 商品詳細を見る |
ニセモノだろうが、間違っていようが、かまうものか。
2005年に当時のメディアワークスから発売された単行本が、新潮社から文庫化。
作者の大衆小説界への移行をより強く感じた出来事でした。
いまやすっかり一般の方へ移っていった橋本さんの作品。
少々昔の作品になるのですが、作者の不動の世界観を感じられる一作でした。
もともと橋本さんは「ラノベっぽくないラノベ」を書いてましたしね。
二人いる父親はもうおらず、ついには母親にも逃げられた姉弟。
そんな厳しい現実をものともせず、ケロリとした表情で特に変わったことのない日々を送る高校生、みずき。父親が違う美少年な弟、コウちゃん。
母親のいない二人の家庭に、ふとしたきっかけから入ることになったみずきの同級生、健一。
「大人がいなくなった家庭」で、まったりのんびりと日常が繰り広がられます。
猫好きの橋本さんらしい、にゃんこを主軸にストーリーが進んでいく展開。
母親が出て行った後、みずきは轢き捨てられた猫の死体を持ち帰り、家の庭に埋めていくようになります。やがて一匹の弱った猫が彼女たちの元にやってきて・・・という感じ。
魔法もロボットもない、SF要素も、アクションもない。学園モノでもないと思う。
でもこの作品には確かに「高校生」がいて。悩んだり笑ったり泣いたりして日々を生きていて。
大人のいない生活は不便だけど、決して生きていけないわけでもない。
ほんの少しズレた現実でも普通に過ごすみずきは、しかし捨て猫に関することになると豹変します。
たぶん、みずきは親がいなくなってしまって、本当は泣きたくなるくらいに悲しかったんだと思う。だけど無意識のうちにそれを押さえつけて、平然としてしまっていた。「父親」の存在があったから。
そこで捨て猫の登場。みずきは捨て猫・・・さらに言えば殺された猫たちに、感情移入をしてしまった。「捨てられた子供」として、同じものを感じてしまったのかな。
とまぁそんなことを読みながら思ったわけですが、個人的には健一君が素晴らしい。
みずきサイドと健一サイドの二つの視点で物語は描かれており、精神面で対照的な二人にそわそわしつつ、健一君の青臭い片思いにニヤニヤしてしまうわけです。
やっぱり俺は男子高校生なわけで、同年代の彼のあれこれは共感できるもものが多いです。
変なことで簡単に浮かれて沈んで、少しばかり行き過ぎてしまうこともある(健一君はオーバーしすぎましたが、こういうのもヨシ!)。ムダなことだと知りつつやってしまうこともたくさんあるのです。
男の子がいてこその青春小説だなぁとw
ややヘビーな終盤、だけどその解決策は笑ってしまうくらいに無謀で子供っぽい「猫泥棒」。
エピローグはすべてを丸く治めることはせず、この先の未来を期待させる終わり方でした。
橋本さんの作品の多くは「あれっ、ここで終わりなの」と読み終わり、ストーリーを反芻していくと、あのタイミングで終わるのがベストだったんだなと思わされる作品が多いと感じていますが、この本もそう。
自分は本を読み終わったけれど、彼らはこの先も生きていくんだなと分かって、読み終わるのが惜しくなる。終わってしまうのが悲しく切なく、そして暖かいのです。
「半分の月がのぼる空」でも、この感覚に半年は苦しめられたなw
普遍的で、でも見失いがちななにかを、そっと思い出させてくれる。
言葉にすれば陳腐なそれを、さりげなく心に届けてくれる。
橋本さんの作品の暖かさをもっと多くの人に知ってほしいですね。
『猫泥棒と木曜日のキッチン』 ・・・・・・・・・★★★★
ナイス青春小説。みずきの強かでさばさばした感じがツボでございます。