[本]キャラとアクションが光る激走SFジュブナイル! 『018』
018(2) <完> (アフタヌーンKC) (2010/12/22) 宮川 輝 商品詳細を見る |
そして未来は・・・・・・無限の可能性で充ち溢れている
アフタヌーンで連載された宮川輝さんの作品「018(ラブエイティーン)」。
2巻で終了してしまったことはちょっと悲しかったですが・・・ひとまず完結。
世界をも動かすスーパーコンピューターが設置された2018年の日本を舞台に
少年少女たちが戦場を駆け抜けていく痛快なアクションSF作品でした。
しかし2巻ではちょっとばかし方向転換、完結に向かっていきます。
複雑かつ長い説明セリフが多い本作。
しかし目を引くのはやはり大迫力のアクションシーンでした。
スピード感としっかりとした重量感を兼ね揃えた絵と画面作りがされており、読んでいて単純に気持ちがよかった。人間同士の戦いもロボットとの戦いも熱い。
加えてシチュ燃えもあり。突如少年少女がデカくてゴッツい謎のロボットから追われるも、自転車を全力で漕いで逃走→ショッピングモールに突っ込んで銃を構えてロボットに立ち向かっていく!1巻前半の流れは凄く盛り上がったなぁと。上手い導入。
1巻はブログでは取り上げませんでしたけど、非常に気に行っていました。
しかし12月に発売された2巻では、なかなかの超展開を見せてくれまして・・・!
(クリック拡大)
両者にとって残酷な一発の銃弾。
親友の裏切りで大きく盛り上がった物語ですが、その決着の後には
なんといつの間にかタイムスリップ!&直樹の暴走・覚醒で地球の危機!
そしてマキ婆からされた怒涛の説明がこちら。
直樹君の媒介者の能力は物理的・能力的に互換性の無い者同士の間に立ち、互いの
能力や情報を共有出来るようにすること その力はアンタやタミちゃんの身体的・
物理的なモンとは違う 直樹君の心………メンタルなモンが大きく影響するねん
アンタを失った絶望感…そしてタミちゃんが放った弾丸の衝撃…それは田辺キヨミの
想像を遥かに超えた「LCP」の可能性を引き出した…直樹君のアンタを救いたいという
想い…精神は……クォークとレプトンに限定されていた媒介者の能力からだけでなく
私らの住むこの世界 4次元時空からも解放され…高次元時空との相互作用を可能にした
そして直樹君は小次元時空に存在する無数の並行宇宙を自分の体内空間で繋ぎ合せ…
私らの世界にはない特質を持ったエネルギーが伝えられるようになったんや それは
直樹君からアンタに伝わり超速で細胞を形成しアンタを更新させた 繋がった並行宇宙
のエネルギーは互いを干渉、次第に大きなうねりへと変化していき…直樹君の体内で
無数の素粒子を発生させたんや 直樹君は瞬く間に高密度・大質量になって周りの空間を
激しくねじ曲げ…辺りは一瞬にして荒野と化した…アンタとタミちゃんはねじ曲がった
空間に出来たワームホ/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\ールにのみ込まれて9年後の2027年にタイム
スリップしたんや……| …………… |アンタらにしたら一瞬のことやったやろ…
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ \__ ____/ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
∨ (゚∀゚ ) ←マキ婆
アヤ→ <⌒/ヽ-、__ノヽノ |
/<_/____/ < <
マキ婆が頑張って説明してくれますがアヤはちんぷんかんぷん理解不能。
まぁ自分も説明セリフは大体で流し読みで済ませてしまいましたが・・・
「つまり・・・どういうことだってばよ!」と内心思いましたが、すぐに答えが出ました。
このままでは地球そのものが無くなってしまう・・・そんな圧倒的危機、絶望。
それに対抗するためのただ一つの方法とは!
愛の力だー!!
「愛」と来たかー!とズッコケる人もいるかと思いますが、個人的には嬉しかったw
ここまで必要最低限の説明をするのみで疾走を続けてきたこの物語。
最後の最後で理屈っぽいことをされては逆に失速してしまったのではないでしょうか。
直樹の暴走はアヤを想う故、ということだけ頭に入れておけば作品のテーマとしてあっただろう「少年と少女の物語」というものにブレは無かったことが言えると思います。
物語の完成度という観点においては若干残念ではあったのですが、「018」という作品への高感度は高いままに幕を閉じました。いいじゃないパワーオブラブ。
ラストはきっちり、お決まりとも言えるキスシーン。そうそう、これでいいんだ。
正直に言えば2巻で完結するとは思いませんでしたし、展開的にもかなり力技が入ってたなと感じました・・・が、それでもかなり魅力的な作品だったと思います。
迫力あるアクションシーンや精巧に描きこまれたメカは単純に見ていて楽しいです。
意味がわからなくてもとにかく読者を読ませ惹きつける力もありました。
キャラクターも、メイン級2人の女の子はかなり魅力的でした。
親友を裏切る形になってしまい苦悩するタミの姿には等身大の18歳を感じられて良かったです。彼女の回想シーンは物語を盛り上げるのにかなり役だっていたと思います。
そしてヒロインのアヤは本当にエネルギッシュな女の子。コロコロよく変わる表情も可愛いし(ヒロインとしてどうなのってレベルまで崩れたりw)、物語をグイグイひっぱってくれる力強いキャラクター。けれどちゃんと女の子っぽい部分も見せてくれて、そこもグッと来ます。
突然のキスの後、呆然としたまま直樹に張り手をかますアヤ!
放心っぷりやその後の必死の弁解も可愛いなー・・・常に全力な女の子です。
1巻オビには「バトルアクションから本格SFに駆け抜ける物語」とありましたが
これは正しいようで正しくなかったかなぁと読み終えて少し感じました。
それはまぁ「愛の力や・・・」で突っ切っていったことが原因で、自分はこれはこれで良いと思っていますが、しかし本格SFを期待して読んだ方はきっとガッカリしてしまう・・・かなぁ。
小難しいことをやりながらも、実際は派手なアクションとシンプルな物語がメインでした。
2巻あとがきでこの作品がもとは32Pの読み切りとして考えられたものだと書かれており、ちょっと納得。結構実験的な作品だったかもしれません。しかし魅せる部分ではきっちり魅せてくれましたし、やや消化不良ながらも十分楽しむことが出来ました。
無理矢理まとめると、頭をからっぽにして楽しむべき作品。娯楽漫画。
新人さんの初連載としてもパワーがあって好感が持てます。
ハイスピード・ハイスケール(?)・ハイテンションなセカイ系作品!走れ少年少女!
宮川輝先生の次回作に期待!次号のアフタヌーンで新作読み切りが掲載とのことですよー。
『018』 ・・・・・・・・・★★★☆
粗は目立つものの凄まじい勢いが楽しいし読後感も良し。次回作どう出るか。
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