[本]大切な君に、大切な約束をしよう。 『3月のライオン』5巻
3月のライオン 5 (ジェッツコミックス) (2010/11/26) 羽海野 チカ 商品詳細を見る |
ありがとう 君は僕の 恩人だ
羽海野チカの「3月のライオン」の5巻が発売されました。
じわりじわりと、不安定な一歩を踏んでいくように続くこの漫画。
時に熱い展開になりながらもまったりと進行してきた本作ですが
今回は主人公の棋士・零にも確かな変化、大きな転機が訪れます。
5巻でまずビックリするのが香子さんですよ!
デレてるー!
これまで零や家族の前ではツンツンしまくりの美人さんがこの香子さん。
劣等感なりなんなりが色々まじりあって複雑な想いを抱えている彼女ですが
愛する後藤の前ではこの満面の笑み!
これまでのあまり見えてこなかった彼女の新鮮な一面だったなぁと。
獰猛な性格で、ずっと色んなものに悩み苦しみ続けている香子。
けれど後藤といる時だけは凄く幸せそう。恋してるんだなぁ。
「おこれないじゃない そんな顔見せられたら・・・」というモノローグも素敵。なんぞこれ、40代のおっさん相手に母性発揮してるんですか。どういうことだぁー!ニヤニヤするぞー!
後藤は性格荒っぽいですが、どこか危なげな空気も持つ男。
守ってあげたくなる気分に女性をしてしまうタイプなんでしょうか・・・。
しかしこの直前には、後藤が奥さんのお見舞いをするシーンも。
今、彼の心はどうなっているのだろう。気になるので深い描写が早く欲しい所。
・・・デレる香子さんは嬉しかったけど、ちょっと寂しかったのも確か。
そして最初にも書きましたが、零に目覚ましい変化が。
新学期に新しいクラスにまたも馴染めず、懇意にしてくれた林田先生も担任から外れ・・・零の再び1人きりの学校生活が始まってしまう。
けれどそんな零を放っておくことができない林田先生は、将棋部創設を提案。
すでに顔なじみのメンバーが揃ったことで、零も最初からわりとフレンドリー。
そしてふと、楽しい時間の中で、彼は感じる。
楽しい。
自分は今笑えている。学校で、こんなに楽しげに。
暖かで賑やかな、もう1つの自分の居場所を得たことは
ささやかですが、非常に大きな前進だったと思います。
「将棋やってて楽しい?」
将棋初心者にこう尋ねられて、即答もできずシンと固まるだけだった零。
彼にとって将棋はとても大きく大切な存在であることは間違いないけれど
かつての自分は、本当に今のこの自分を望んでいたのだろうか。
ただ流されて、1つだけ残された道を仕方なく歩んできただけなのか。
その自問自答に違うと答えることが、彼には出来ない。
2巻ラストで彼は「こっちは全部懸けててんだよ」と咆哮したけれど
直後「逃げれるくらいならなんで・・・」と消え入りそうに呟き涙を流した。
将棋以外の選択肢があったなら、自分は今将棋を指していたのか?
小学生時代の思い出が今回描かれたけれど、それはやはり心苦しいものだった。
零は将棋にのめり込むことで、自分の居場所を作ろうとしてした。将棋しか彼には無かった。このままじゃいけないのにと思っても状況を打破する力も勇気もなく、将棋に『逃げていた』のだ。
そんな過去があるからこそ、零は将棋を好きだと言いきれない。
将棋にすがっているだけの自分の弱さを分かっているから。
しかし今回、大きな転機が訪れる。
彼を変える決定的な言葉が、突然やってくる。
強い強い、自らへの肯定。
自分の正しさを信じて疑わない。傷ついても涙を流しても、揺るがない。
この言葉は今の零も、かつての零をも貫いた。
貫いて救いとなり、不安なままの彼を支える柱となった。
いよいよ覚醒した(?)零君でした。
5巻終盤のヒナちゃんのエピソードはテンションどん底になりましたが・・・最後の展開には震えるほどの大興奮!でもヒナちゃんを泣かす悪い子は許さねえよ!
それと第53話、天道虫を眺める2人のカットも印象的ですね。
太陽めがけて羽ばたいていく天道虫のように、正しいものを正しいものと信じてまっすぐ飛べることができたら楽なんだけれどね。でも、目指す価値は十分にある。
何度も見てはいたけれど、今回で初めてその天道虫の名前を知るということは、自分の正しさを見つけられたという意味もあるのかな。
表紙にも天道虫がこっそり書かれているのも良い。
飛ぶ天道虫=目指すべき理想と考えると、1人で閉じこもって将棋に生きていたかつての零のそばにも天道虫はいたのだから、彼は間違ってはいなかった、と言えるのかも。飛躍しすぎか。100%正しかったとは言えるわけがないと思うし。なにより表紙の天道虫は飛んでいない。あと一歩だ。
しかしこれから先の零がどうなるのか、無茶苦茶楽しみな引きです。6巻が待てない!
ではまとめ。
大きく零の変化について書いてみたものの、書きたいことはまだまだあったり。
「お互いがお互いに相手のことを、力いっぱいブン回しても壊れないおもちゃだと思っている」っていう宗谷と隈倉の関係も熱いし、勝負後の隈倉もなぁ!悔しがる大の大人!
島田が地元に戻る第43話も切なかったけれど、この世界に身を置く大人の男の強さを見せつけられたような気がして特に好きです。
しかし今回はやはり零の成長と変化が大きいですかね。
この「3月のライオン」がどの程度の尺の物語になるかは分かりませんが
今回の話は大きなターニングポイントになるのではないかと思います。
大切な約束をした零。大きな心の支えを手に入れた彼ですが
最近不調な将棋はどうなることやら。まだまだ見逃せない作品です。
『3月のライオン』5巻 ・・・・・・・・・★★★★
心が苦しい、けれど熱い最新刊。明らかに変わりつつある零くんです。
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正直どうでもいい [本]大切な君に、大切な約束をしよう。 『3月のライオン』5巻 3月のライオン 5 (ジェッツコミックス)posted with amazlet羽海野チカ 白泉社 (2010-11-26)Amazon.co.jp で詳細を見る 天童の人間将棋のエピソードから始まり、後藤と香子の実際の関係性とか