[本]人とヒマワリが待つ場所 『世界の果ての十七歳』
恋愛漫画の記事だと恥ずかしい文章ばかり書いちゃって痛い痛い俺痛い。
ラブコメ好きなのに最近切ない本ばっかり読んでる!失恋はもう嫌だ!
……ただいま
結構前に出た単行本ですが、最近読んだので…。
河合二葉さんの初単行本「世界の果ての十七歳」です。
ホットミルクから成年向けじゃない漫画が出ているなんて知りませんでしたが
「08年ナンバーワンコミックス」だとか「圧倒的支持を得た」だとか
なんかやたらとオビで絶賛しまくりだったので買ってみましたw
こうまで書かれると逆に引いて読んでしまうのですが、これがなかなか。
若年性アルツハイマー罹患者であるトモキと、その恋人である主人公。
少しずつ新しい記憶から脳から消えていき、
やがては何もかも忘れて、人間として成立しなくなる病気です。
トモキは10代にしてその病気にかかってしまったのです。
主人公は彼を見守るという名目で、次々記憶を失っていく恋人と
ある意味で破滅的な2人きりの生活を始めます。
ささいなことから重要な思い出まで、少しずつ削られていく彼の記憶。
体を重ねて、未来への不安や絶望、孤独感を紛らわす日々…。
けれど、終末は突然訪れる。
とにかくシリアス。おふざけ一切なしでストレートに感情が紡がれる作品。
恋人の中から、自分との思い出がどんどんと消えていく恐怖。
実を結ばない行動だと、心の底では理解している。
けれど2人で最後までいたい。その一心で活きる。
…ちなみにラストで桜を見て、思い出すんですよね、主人公のことを。
けれどすべてを思い出すことは叶わない。
2人の恋が始まった日の、ほんの一瞬だけ、閃光のように。
拾い上げられたように思えたのに、実は何も掴めなていないし、現実は変わらない…。
印象的だったのが、トモキが決して子を成そうとはしなかったこと。
主人公がそれを望んでも絶対に、頑ななまでに。
それはやはり、いつか自分は恋人の前を去ることになるという、自覚があったからでしょうか。
子供という明確な形を持った存在で、未来の彼女を悲しませたくなかった?
そんな思いも、消えてしまうことは分かっていたのに。
けれど自分という存在はいつまでも恋人の中にあって欲しいという…
なにやら男性特有の独占欲みたいなのも透けて見えてきて、イヤにリアルだ。
戦争というのを、あくまでも悲劇的世界感を作りだす要素の一つとして持ち込んでます。
1,2,3,エピローグと続き、それぞれ別のキャラの視点で描かれます。
「limt」と比較すると、絵も一気に精錬されてきた感じでいいですね。
内容はと言えば、…まぁヤリまくりなんですけど
戦争というこの世の極限状態によって引き裂かれる恋が見どころでしょうか。
個人的にはハユミちゃん関連のエピソードがツボ。
わずか10歳にして娼婦にならざるを得なかった少女です…。
女の子に辛い運命背負わせすぎじゃい、って思う作品も数多くありますが
この作品もまた別角度からエグいことやっちゃってます。ヘコむ…。
まぁハユミちゃんに関しては、エピローグでニヤニヤできたので救いありましたけどw
2話目はなんか男の汚い感情丸出しで、これも読んでてキツい。オチもブラック。
そしてこのお話の最大のテーマは、帰る場所、です。
ただの土地じゃない、「おかえり」と言ってくれる誰かが待つ場所。
(クリック拡大)
咲き誇るヒマワリは象徴的ですね。
いつまでも夏みたいに暑いこの島。もちろんをそれも表しているのですが
ヒマワリというのは常に太陽に向かって咲く花です。
ずっと同じものを見つめ、何かを待っているような…
そういう人間の姿を、この花から想像することができるのではないでしょうか。
ラスト付近ではすべてのヒマワリが、帰還したナギの方を向かっていますよね。
そして「なぜヒマワリだけ、なんの世話もせずに毎回綺麗に咲くのか」
というエピローグ中で出てきたこの疑問へのナナリに答えも、
なかなか印象的で、やっぱり人間の姿を重ねずにはいられません。
ついでにヒマワリの花言葉を調べると、ちょっとニヤリとくるワードが。
「いつわりの富」…一話での主人公の行動を、間接的に批判してる?
2人きりでピアノのレッスンをすることになった高校3年生。
けどなぜか男の方が暴走しちゃって、天使小松原さんを襲っちゃうお話。
おかげで小松原さんから避けられたまま卒業しちゃって憐れ桜水!!
大人になった小松原さんの中で、まだあの放課後が綺麗な思い出として残っていたのが意外。
そこは最低な男だったと突き放しておいてほしかった。
けどこういう結末だからこそ、切ない。切ないから面白い。
でもこの主人公はちょっと嫌だなぁ。
お前がバカだったのに、なんでちょっと切ない感傷に浸ってんだっていうw
こちらは一本筋が通った主人公で好印象。
5歳年下の女子高校生彼女をゲットしちゃうのはうらやまけしからんですな!!!
何気に本作で一番エロ描写が気合い入ってる…と思うw
けどそんな主人公のもとに、中学時代の初恋相手が尋ねてきて…というお話。
初恋の思い出。
たぶん誰にも等しく、ちょっと甘酸っぱい感情を引きずってることでしょう。
けどこの作品においてそれは、終わってしまった恋なわけで
事実このお話で初恋にすがった吉田には、作中では幸せは訪れません。
初恋ってそっと胸に秘めて、ときどき宝石を取り出して眺めるみたいな楽しみ方が、一番なのかも。大切にすべき、でも振り切る勇気も絶対必要なものなのかも。
ラストの、まだ幼かった頃の2人の回想で、俺ちょっと涙です。
大人になるって、切ないんだなー…ぐぼあ。
この作品にも「帰る場所」というテーマがありますね。
けど「世界の果て~」と違うのは、少し客観的というか、クールな視点であること。
決して捨てはしない。けれどいつまでも居座ることもしない。
でも「帰る場所」があることで、救われることはたくさんある。
そういうのを作品から感じました。
振り返ればいつでも自分を受け入れてくれる過去、居場所があるというね。
結構大事なのかもしれません、これ。
んじゃ長くなりましたがまとめ。
なかなか良い、切ないお話が読める単行本でした。
注意点としては、これ18禁ではないにしろ、エロ漫画だってことです。
描写はかなりあっさりしていて、そういう目的には使えませんし
でもエロ漫画なので毎作品かならずHします。絵柄からしてレディコミみたいですw
そういう描写は必要なしって人も少なからずいると思いますので注意。
できればエロ以外で話を動かしてほしかったと思った作品もあり(ピアノレッスン)。
その点では、やや中途半端だなぁとは感じました。
なので微妙に嵌り込めない作品もありましたが
「世界の果ての17歳」「初恋めぐり」は個人的に良かったと思います。
切なく美しい物語がお好きなら、手に取ってみては。
『世界の果ての十七歳』 ………★★★☆
切ない恋愛漫画で統一された作品集。もうちょっと幅広い漫画が読みたかったかも?
オビをあまり真に受けるとガッカリしそうなので注意。けどいい本でした。
ラブコメ好きなのに最近切ない本ばっかり読んでる!失恋はもう嫌だ!
世界の果ての十七歳 (HYPER HOT MILKコミックスシリーズ 29) (2008/04/25) 河合 二葉 商品詳細を見る |
……ただいま
結構前に出た単行本ですが、最近読んだので…。
河合二葉さんの初単行本「世界の果ての十七歳」です。
ホットミルクから成年向けじゃない漫画が出ているなんて知りませんでしたが
「08年ナンバーワンコミックス」だとか「圧倒的支持を得た」だとか
なんかやたらとオビで絶賛しまくりだったので買ってみましたw
こうまで書かれると逆に引いて読んでしまうのですが、これがなかなか。
98年に発表された、著者の出世作。limit
若年性アルツハイマー罹患者であるトモキと、その恋人である主人公。
少しずつ新しい記憶から脳から消えていき、
やがては何もかも忘れて、人間として成立しなくなる病気です。
トモキは10代にしてその病気にかかってしまったのです。
主人公は彼を見守るという名目で、次々記憶を失っていく恋人と
ある意味で破滅的な2人きりの生活を始めます。
ささいなことから重要な思い出まで、少しずつ削られていく彼の記憶。
体を重ねて、未来への不安や絶望、孤独感を紛らわす日々…。
けれど、終末は突然訪れる。
とにかくシリアス。おふざけ一切なしでストレートに感情が紡がれる作品。
恋人の中から、自分との思い出がどんどんと消えていく恐怖。
実を結ばない行動だと、心の底では理解している。
けれど2人で最後までいたい。その一心で活きる。
…ちなみにラストで桜を見て、思い出すんですよね、主人公のことを。
けれどすべてを思い出すことは叶わない。
2人の恋が始まった日の、ほんの一瞬だけ、閃光のように。
拾い上げられたように思えたのに、実は何も掴めなていないし、現実は変わらない…。
印象的だったのが、トモキが決して子を成そうとはしなかったこと。
主人公がそれを望んでも絶対に、頑ななまでに。
それはやはり、いつか自分は恋人の前を去ることになるという、自覚があったからでしょうか。
子供という明確な形を持った存在で、未来の彼女を悲しませたくなかった?
そんな思いも、消えてしまうことは分かっていたのに。
けれど自分という存在はいつまでも恋人の中にあって欲しいという…
なにやら男性特有の独占欲みたいなのも透けて見えてきて、イヤにリアルだ。
表題作。作者曰く、武器も兵士も出てこない戦争モノ。世界の果ての十七歳
戦争というのを、あくまでも悲劇的世界感を作りだす要素の一つとして持ち込んでます。
1,2,3,エピローグと続き、それぞれ別のキャラの視点で描かれます。
「limt」と比較すると、絵も一気に精錬されてきた感じでいいですね。
内容はと言えば、…まぁヤリまくりなんですけど
戦争というこの世の極限状態によって引き裂かれる恋が見どころでしょうか。
個人的にはハユミちゃん関連のエピソードがツボ。
わずか10歳にして娼婦にならざるを得なかった少女です…。
女の子に辛い運命背負わせすぎじゃい、って思う作品も数多くありますが
この作品もまた別角度からエグいことやっちゃってます。ヘコむ…。
まぁハユミちゃんに関しては、エピローグでニヤニヤできたので救いありましたけどw
2話目はなんか男の汚い感情丸出しで、これも読んでてキツい。オチもブラック。
そしてこのお話の最大のテーマは、帰る場所、です。
ただの土地じゃない、「おかえり」と言ってくれる誰かが待つ場所。
(クリック拡大)
咲き誇るヒマワリは象徴的ですね。
いつまでも夏みたいに暑いこの島。もちろんをそれも表しているのですが
ヒマワリというのは常に太陽に向かって咲く花です。
ずっと同じものを見つめ、何かを待っているような…
そういう人間の姿を、この花から想像することができるのではないでしょうか。
ラスト付近ではすべてのヒマワリが、帰還したナギの方を向かっていますよね。
そして「なぜヒマワリだけ、なんの世話もせずに毎回綺麗に咲くのか」
というエピローグ中で出てきたこの疑問へのナナリに答えも、
なかなか印象的で、やっぱり人間の姿を重ねずにはいられません。
ついでにヒマワリの花言葉を調べると、ちょっとニヤリとくるワードが。
「いつわりの富」…一話での主人公の行動を、間接的に批判してる?
小松原さんカーワーイーイー!!ピアノレッスン
2人きりでピアノのレッスンをすることになった高校3年生。
けどなぜか男の方が暴走しちゃって、天使小松原さんを襲っちゃうお話。
おかげで小松原さんから避けられたまま卒業しちゃって憐れ桜水!!
大人になった小松原さんの中で、まだあの放課後が綺麗な思い出として残っていたのが意外。
そこは最低な男だったと突き放しておいてほしかった。
けどこういう結末だからこそ、切ない。切ないから面白い。
でもこの主人公はちょっと嫌だなぁ。
お前がバカだったのに、なんでちょっと切ない感傷に浸ってんだっていうw
ピアノレッスンではちょっと嫌な男が主人公でしたが初恋めぐり
こちらは一本筋が通った主人公で好印象。
5歳年下の女子高校生彼女をゲットしちゃうのはうらやまけしからんですな!!!
何気に本作で一番エロ描写が気合い入ってる…と思うw
けどそんな主人公のもとに、中学時代の初恋相手が尋ねてきて…というお話。
初恋の思い出。
たぶん誰にも等しく、ちょっと甘酸っぱい感情を引きずってることでしょう。
けどこの作品においてそれは、終わってしまった恋なわけで
事実このお話で初恋にすがった吉田には、作中では幸せは訪れません。
初恋ってそっと胸に秘めて、ときどき宝石を取り出して眺めるみたいな楽しみ方が、一番なのかも。大切にすべき、でも振り切る勇気も絶対必要なものなのかも。
ラストの、まだ幼かった頃の2人の回想で、俺ちょっと涙です。
大人になるって、切ないんだなー…ぐぼあ。
この作品にも「帰る場所」というテーマがありますね。
けど「世界の果て~」と違うのは、少し客観的というか、クールな視点であること。
決して捨てはしない。けれどいつまでも居座ることもしない。
でも「帰る場所」があることで、救われることはたくさんある。
そういうのを作品から感じました。
振り返ればいつでも自分を受け入れてくれる過去、居場所があるというね。
結構大事なのかもしれません、これ。
んじゃ長くなりましたがまとめ。
なかなか良い、切ないお話が読める単行本でした。
注意点としては、これ18禁ではないにしろ、エロ漫画だってことです。
描写はかなりあっさりしていて、そういう目的には使えませんし
でもエロ漫画なので毎作品かならずHします。絵柄からしてレディコミみたいですw
そういう描写は必要なしって人も少なからずいると思いますので注意。
できればエロ以外で話を動かしてほしかったと思った作品もあり(ピアノレッスン)。
その点では、やや中途半端だなぁとは感じました。
なので微妙に嵌り込めない作品もありましたが
「世界の果ての17歳」「初恋めぐり」は個人的に良かったと思います。
切なく美しい物語がお好きなら、手に取ってみては。
『世界の果ての十七歳』 ………★★★☆
切ない恋愛漫画で統一された作品集。もうちょっと幅広い漫画が読みたかったかも?
オビをあまり真に受けるとガッカリしそうなので注意。けどいい本でした。
Comment
はじめまして。
実はこのたび「居場所」をテーマに文章を書く関係で
このキーワードで検索しているうちに、
こちらを覗かせて頂くことができました。
勉強させて頂きました。
ありがとうございました。
このブログも居場所がテーマでしたが、
面白かったですよ。
↓↓↓↓↓↓
http://ameblo.jp/kiku-tan/
実はこのたび「居場所」をテーマに文章を書く関係で
このキーワードで検索しているうちに、
こちらを覗かせて頂くことができました。
勉強させて頂きました。
ありがとうございました。
このブログも居場所がテーマでしたが、
面白かったですよ。
↓↓↓↓↓↓
http://ameblo.jp/kiku-tan/
コメント返信
>>モッチーさん
ありがとうございます。
記事を読んでその本を買ってもらえることが、自分の一つの夢ですw
自分はたまたま新品で見つけられましたが
入手はちょっと難しいかもしれません…がんばってください!
>>きくたんさん
コメントありがとうございます。
そちらのブログも興味深く読ませていただきます!
ありがとうございます。
記事を読んでその本を買ってもらえることが、自分の一つの夢ですw
自分はたまたま新品で見つけられましたが
入手はちょっと難しいかもしれません…がんばってください!
>>きくたんさん
コメントありがとうございます。
そちらのブログも興味深く読ませていただきます!
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かなり読みたくなったので、家に帰ったらググッてみます♪