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[漫画]何度もいつまでも幾らでもずっとずっとずっと君に恋する『不死身ラヴァーズ』1巻

不死身ラヴァーズ(1) (少年マガジンコミックス)不死身ラヴァーズ(1) (少年マガジンコミックス)
(2013/09/09)
高木 ユーナ

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   お願い 消えないで

毎月なんかしら新連載がはじまっているこの頃の別マガですが
最近はじまったものだと特にこの「不死身ラヴァーズ」が好みです。
凄くエネルギッシュで、胸掻きむしる衝動がある漫画。とにかく読み手を揺さぶってやろう、心乱してやろうと挑みかかってくる作風は、師匠の諫山創さんとも通ずるものがある、かも。
恋愛漫画なのですが、独特の主人公像と設定とよってなかなか新鮮な読み味。
まさにハイテンションとセンチメンタルの怒涛のせめぎ合い…!かと思ったら一体になってこちらに飛び込んでくる迫力。
物語の面白さもありますが、まず作品のパワーに圧倒されますね!



主人公・甲野じゅんは「長谷部りの」という少女に恋をします。
恋をします。また恋をします。またまた恋します。繰り返します。
なにせ彼女は、消えては現れまた消えてはまた甲野の前に現れる、不思議な存在。甲野がその恋を燃えがらせ想いを届けると、それを受け取った長谷部はこの世界から消えてしまうのです。
小学校のときから中学、高校、そして大学生となった現在まで。
いつになれば甲野の恋は実るのか。
「不死身ラヴァーズ」は甲野の人生において何度も巡り来る「長谷部りの」とのひと時を描いていく作品です。

同一人物のはずがどんな世界線のスレか、微妙に違った長谷部が現れる。まずこれがいいですよね。いろんなヒロインとの恋が見られて楽しい。主人公は一途にひとりの女の子に恋をし続けているわけで、彼の高潔さが失われない。
とは言えこの主人公、甲野じゅんがスゴいのです。
冷静に…いや冷静に考えるまでもなく、彼は異常なのです。
読めば一発でわかると思いますが、なんの遠慮もなくがむしゃらにヒロインに突き進んでいく!
そして愛する少女がこの世界から消え、その存在を自分以外だれも覚えていないような残酷な日常になっても、彼はずっと長谷部りのに恋をし続ける。
すさまじいバイタリティの押せ押せ主人公なのです。度を超えたバカなだけなのか…?いやれだけじゃないはず!
なんども長谷部りのが彼の前に現れるのは、運命がどうとかというより、彼の執念が奇跡を成し遂げているのではないだろうか…。

不死身ラヴァーズ2

何度も死にそうなくらいの苦しみを受けとめ、それでも恋をできる喜びを噛みしめる。
恋をすることで生きていられる。
とまぁ恋愛至上主義者もきっとまっさおな全力爆進の恋愛少年。気持ちがわるくて気持ちがいい、まっすぐなバカですよ!
このままだと一生のあらゆる時間を長谷部に恋しながら駈けずりまわることになる。恋するリビングデッド。まさしくゾンビのようなのです。
なんど心をボロボロに痛めつけられても。ザクザクと切りつけられても。不屈の精神で彼はなんども立ち上がる。
普通だったら病みそうなものですが、彼はその純粋さをいっさい失わない。
なんともソウルフルな少年です。主人公だからこそ彼の異常性は大々的にアピールはされてはいませんが、やっぱコイツすごいよ。

「不死身ラヴァーズ」でいまのところ一番すきなシーンは、目の前で長谷部が消えてしまい、混乱と傷心で我を忘れんばかりの彼の精神情景ひととおり。
いやぁ、傷つく少年って大好物です。これがまたいい表情するんですよ。読んでてこっちまでズキズキ傷む。ここでカタルシスが生まれる。

不死身ラヴァーズ1

妙にファンシーな表現でグロテスクな描写をやってのけたり、ギョッとさせてくれます。
高揚感のあるラブストーリーを突き進み、その代償のようにクライマックスに待ち受けるのは、途方も無い絶望とセンチメンタル。この落差が大好きだなぁ…!



1巻の中だとじっくり描かれている長谷部りのは2人。
高校時代、ギャルっぽいけど書道が得意な長谷部。
大学時代、記憶障害を持ちながらも朗らかな長谷部。
どちらも、少しずつちがった魅力を輝かせる女の子。同じ女の子なのに、こういう所も面白い。

特に大学生の長谷部はいいなぁ。寝ると記憶をなくしてしまうヒロイン。
「長谷部が世界から消えても自分は覚えている」という甲野の境遇もあってか、この時のふたりは記憶というキーワードで強く結ばれていたように思います。
ぜったいに君のことを忘れない。君が忘れても俺が覚えているから、と。これまでの甲野自信が証人なのです。彼はずっと「長谷部りの」を忘れず、忘れられず、追いかけてきたから。
記憶という拠り所のない不安な日々を送ってきた大学生の長谷部は、彼にどれだけ救われただろうか。これだけ力強くこちらに向かってきてくれる、全力で好きといってくれる相手に、どれだけの感謝があっただろうかと。

不死身ラヴァーズ3

彼女にとって、「明日の約束」はあまり意味を持たない。だって忘れてしまうから。記録はできても、そこに宿った大切な想いも忘れる。自分の気持ちだって消える。
だから今を生きることをポリシーとしている少女なのです。
でも彼女は甲野の明日の告白を楽しみにする。覚えていなくたって甲野は自分に向かってきてくれるのだと信じることができるから。この長谷部にここまで踏み込むことができたのは、甲野のがむしゃらさがあったからに違いない!

じっさい、彼女は甲野を受け入れる(いろんな意味で)。こんな、あまりに切ない状況なのに、読んでて体の奥底からゾワゾワと、興奮とともに幸福感が湧き上がってきました。
その後に彼が負った心の傷があったとしても、「よかったな、甲野」と言いたくなるわ!

長谷部が消えるときは、甲野の想いが届いたとき。
消えたその時の長谷部たちは、勘違いでなければ、幸せそうでした。
そこからフッ…と急にいなくなる唐突さも残酷で好きなのですが
第3話のラストを見るに、もしかしたら長谷部が消えるタイミングは、望みがかなった瞬間なのかも知れないな。



そんなこんなの「不死身ラヴァーズ」1巻です。
ひたすらハイテンションに突っ切って行く中にも、主人公の必死さ、切実な感情が胸をうつ。しんみりとはさせず狂騒の中にそういう切なさを滲ませている。
この勢いの良さは青春くささそのものでもあり、命も魂も燃やして突き進む少年は眩しいことこの上ない
女の子のかわいさはもちろんのこと、「男の子」という生物に捧げるロマンを感じるな…!
これからまた次々と新しい長谷部りのとの暴走ロマンスに興じるのでしょう。楽しみ。

あとなにげに気になってるのが主人公の友人のイケメンくん。ホモくせぇ!
イケメンくんは様々な場面でさわやかにホモ臭を香らせてくれる。ナチュラルに甲野のこと大好きっぽいですね!いいよいいよ!
そして何度かガシャコーっと携帯で写真を撮ってましたね。甲野と長谷部が映っていると思いますが、彼が写真をとる場面もなにげに気になったので、もしかして何かの伏線…?

タイトルは「不死身ラヴァーズ」。
ラヴァーズというからには恋人同士なのだ。相思相愛なのだ。
どんな理不尽な運命に引き裂かれようとも、何度だってまた会えるような、そんな世界一むちゃくちゃな不死身の関係。に、なれればいいな。

『不死身ラヴァーズ』1巻 ・・・・・・・・・★★★☆
主人公と設定が濃い!一生を尽くして恋をしそうな勢いのアツい切ない恋愛漫画。

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