[漫画]やがて輪になるそれぞれのフルスイング 『FULL SWING』3巻
FULL SWING 3 (少年サンデーコミックス〔スペシャル〕) (2011/07/12) 武論 尊 商品詳細を見る |
世界一 幸せになれ・・・
武論尊先生が原作を担当している、青春オムニバスシリーズ「FULL SWING」。
ゲッサン誌上で毎月手堅く胸を熱くしてくれる短編を楽しませてくれる作品です。
今回もものすっごく青臭い短編がずらりと並んでいます。
作画担当のマツセダイチ先生の絵も確実な成長が見えて、その変化を追うのも好きです。
女の子はすごく可愛くなったなと、3巻でまとめて読んで感じましたね。
では3巻の感想へー。の前に1,2巻の更新も過去にしてあるのでよろしければそちらも。
・連鎖する全力の放物線! 『FULL SWING』1巻
・繋がり響き合う青春模様。 『FULLSWING』2巻
・第10話 中川翔
第8話の主人公にアドバイスをした中川という男性が今回の主人公に。
回想シーンとタイムカプセルを掘り返す現在を同時進行的に描きながら、ラストシーンへ向けてテンションを高めていく構成の短編となっています。
かつて教育実習中に知りあった女生徒を忘れることができない中川。
雨の中で1人待ってくれるほど健気に自分を慕ってくれた少女・小泉。
彼女がまた可愛いんですよねぇ。一途じゃないですか。
しかし小泉の想いを受け止めて共に一夜を過ごしたことに、未だに大きな罪悪感を覚えている中川。未だにズルズル引きずってるのに、きっぱり想い断ち切ることもできず申し訳なかったと謝るばかり。これは情けない・・・しかしこんなダメ男、嫌いじゃない・・・!
タイムカプセルなんてものを持ってきた時点で切なさがたまりませんね。
まっすぐな想いを持ち続けることが幸せを呼ぶ形になり、良かったです。
・第11話 高瀬トオル
新しく入ってきた、ワガママなゆとり女性社員・古川。
困りものな彼女の指導役になった主人公・高瀬は、不器用ながらも働くということを伝えていこうとするのですが・・・プライドが邪魔をしてそれを上手く聞くことができないのが古川さん。
結局反発しあう高瀬と古川ですが、野球を通じてちょっとずつ理解できてきたり・・・?
ちょっと球場に逃げ込んでからの展開はちょっと急ぎ足になっていた感はありましたが
ついつい突っ張っちゃう古川さんがかわいいよ!ということで良し。
ちゃっかりしてる社長さんや主人公の母親など、人生の先輩と言える高齢キャラの良さが光ってもいて良かったと思います。
・第12話 村上圭介
就職活動しながらバイトで食いつないでいる青年、村上。
てっきり男だと思って、困っていたネカフェ難民を雨宿りと食事のために部屋に連れてきたはいいものの、それが男装していた女の子だったでござるの巻。しかもかわいいという。
放りだすわけにも行かず停めてあげるも、しかしお金盗んで逃亡されてしまったり・・・。
そんなこんなでバタバタと始まった2人の関係ですが、彼女がひどい現実に直面したとき、2人は力を合わせてそれに立ち向かうことになります。
全力出して汗かけば、ちっぽけな悩みなんて吹き飛んでしまうというもの。
彼女は他国のアイドルであり、すこしカタコトな日本語もかわいいですね。ロリ顔も。
・第13話 谷川正彰
警察官の主人公・谷川と、その幼なじみで不良娘な由芽。
警察官な主人公をいつも困らせつつも、時には恋人としての甘い笑顔ものぞかせる由芽。
いやー可愛いじゃないですか!純情な不良っ娘っていいですよねえ!
・・・とふへふへ喜びながら読んでたら急転直下。少年誌でよくやるなぁというエグい出来事が由芽に襲いかかってから様子はガラリと変わります。当然、いい気分にはなりえません。安心してた時にこの描写は劇薬ですよ。
とは言え、ここから奮起する主人公の様子には熱くなるものは確かにあります。
ですがやはり消化不良。このラストシーンは、由芽を襲った不幸からくるストレスを完全消化するには足りず、少々のモヤモヤが残ったと思います。ちょっと惜しい回だったかなと。もう離しちゃ駄目だ。
・第14話 倉田朝美
1番以外だったのがこの第14話。倉田さんというのは、第1話のヒロインです。
第1話はいきなり主人公が病死するという結末を迎え、倉田さんは彼の存在感を記憶したまま生き続けるという、切ないラストを迎えていたのですが、再びスポットライトが当たるとは!
しかもお相手もまさかの・・・!これまでの登場人物も多くが再登場を果たし、とても賑やかで懐かしい短編となっていたと思います。いろんな面で嬉しいエピソードでした。
俊一と朝美の再会には思わず目頭も熱くなるというもの。想像ではあっても・・・。
いきなり登場はしましたが、おばあちゃんの昔話も、このエピソードを彩る大切な言葉と景色をくれたように思います。
しかし改めて感傷深いですね。
このシリーズの最初に放たれた軌跡が、繋がり響き合い、最初のエピソードにまた戻ってきたのです。描かれた放物線のアーチは、繋ぎ合わせば1つの大きな輪になるということか。
以上、各話感想をしていきました。
最初にも書きましたが、マツセ先生だんだんと絵が綺麗になってきましたね。
今回も良質な青春物語を楽しませてもらいました。派手ではないですが、とても良い。
ただ、ドラマを動かすのにやたらヘビーな出来事を絡ませることがたまにあるので、それがやや後味を悪くしてしまうときはあります。しかし、綺麗なままではない、傷だらけになって、泥にまみれるからこそ、そこらから立ち上がっていく瞬間に胸が熱くなるのですね。
ただそれに付け加えて、普通の中学生や高校生の恋愛とかも見てみたいかも?とは常々。
少年誌掲載ではありますが、主人公にしてもヒロインにしても結構年齢が高めだったりします。
ああ、でも、もう子供ではない奴らが、子どもみたいに理想を吐きながら現実に立ち向かっていくのがまた照れくさくも爽快な気持ちにさせてくれるのも確かだったり。
・・・なんか欠点と言えそうなことでも「いやそれが良いんですよ」と言えてしまえるような気持ちです。「FULL SWING」の青春くささにあてられてしまいますね。
今回で1周、繋がりが大きな輪を描きましたが、本作はまだまだ続きます。
次の「フルスイング」は、誰がどんな場面ですることになるのでしょうか。
『FULL SWING』3巻 ・・・・・・・・・★★★★
安定感のある青春オムニバス。ちょっと傷が深い話もありましたが、いい話ばかりです。
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