[漫画]ぬくもりに胸がいっぱい。 『スピカ ~羽海野チカ初期短編集~』
来週末までだらだらと試験が続いてげんなり。更新ペース落ちててごめんなさい。
泣いてもやめられないほど好きなものがあるってのはさ
きっとすごいことなんだぜ
「ハチミツとクローバー」「3月のライオン」の羽海野チカ先生の短編集が発売されました。
収録作されているのは2000年~2004年に発表された6作品となっています。
どこか懐かしいような、優しい気持ちにさせてくれる羽海野先生の魅力を、様々な角度から楽しめる一冊に仕上がっているのではないでしょうか。なかなかバリエーションに富んだ内容です。
今回は主に、特にお気に入りな2編について感想を。
高校3年の夏。本当に好きで続けたいことへの情熱と、そろそろちゃんと考えなきゃいけない将来への不安に板挟みになる男の子たちと女の子を描いた青春物語。
等身大の「悩める高校生たち」の様子がなんともかわいらしい!のですが、「自分が全力を注いで熱中してるそれは、将来の役に立つのか?」とシビアな問題に気を落ち込ませるのをこちらも考え込んでしまう。将来を思うと本当に不安しかなかったあの時期だなぁ。今も他人事じゃなくてドキンドキン。
ヒロインの美園は、バレエをならっている女子高生。
大好きなバレエ。追い続けたい夢。けれどその世界は、凡人に優しくないことも分かっている。
情熱だけではどうにもならないいらだちや寂しさは、どんどんと彼女を追い詰めていく。
加えて親からは「もしバレエでダメだったどうする気よ」「みんなに笑われるのよ?」、そろそろ現実を見たほうがいいんじゃないかと言われてしまい・・・。
「なにかを好きになるって そんなに悪いことなのかなあ 笑われるほど?」
周囲への不満、夢を実現することに絶対の自信を持つことができない自分のふがいなさ・・・その涙には悔しさがにじみます。
そうした中から、主人公の野球少年とのやりとりによって勇気を手にし、立ち上がっていく姿には心温まりました。好きなんだから、簡単に諦めることなんてできるわけがないんだ。誰しもが不安と闘いながら、できることからやりたいことを掴んでいく。
そして爽やかなラストシーンが大のお気に入り。
(クリック拡大)
序盤に触れられた花火大会の話を踏まえた上でのこの誘い文句!くあー!
そこまで性急なものでもないかな。いやいや、どうだろう。ニヤニヤしてしまうな。
といってもそのじいさんのモノローグと回想で半分くらいが進行するので、実質主人公はこのじいさんのような気がする。しかしまぁこれがよくまとまってる上にいい話で、思わず涙が出てしまいました。
憎しみを糧に生き、孤独のまま研究に没頭してきた寂しい男は
ただ1人自分を愛してくれる女性すら、まっすぐに見つめることできない。
自分の都合のいい世界を作り上げて、その罪悪感は苦しいほどあるのに逃げられない。
「あさましい私」「小さい世界」「愛のコトバを吐き続けた」と、自虐的な言葉をあえて選んでいるシーンにはぐっと切なくさせられます。
上の画像で抱きしめてはいるけれど、きっと本心から満たされてはいない。
孤独って苦しいけれど、ほんのすこし楽な世界でもあるのかも知れない。1人ぼっちの世界は、自分を責める人間も自分だけ。この男とその奥さんは、自分の世界だけで完結し輪になった孤独の『歯車』を、すこしだけ相手の歯車に噛ませながら回り続けてきたのかも。奥さんのコンプレックスも根深いものだったようですが、彼女もまた彼のあやまちにすがっていた面も・・・。
しかしそんな鬱々とした展開を抜けてのラストシーンの感動はまた格別!
ヘビーですがとても人間臭いお話。かわいいおじいちゃんとおばあちゃん。
では他4作品についても。
・冬のキリン
フルカラーのショートショート。ビターな味わいの中に、切なくも温かなものを感じます。
・ミドリの仔犬
「はなのゆりかご」と合わせて同じ男の子が登場するシリーズ。こちらが1作目。
かわいい男の子ががんばるお話で、まったりほんわか楽しめるました。犬をつれ戻してきたときにショックを受けるシーンには一気に引き込まれました。表情といいモノローグといい、痛い。
・夕日キャンディー
お、ソフトなBL漫画。羽海野先生のBLはなんだか新鮮でした。
タバコを使ったシチュってシブくてカッコイイですねえ。しかし野宮だとう。
・イノセンスを待ちながら
エッセーに近い作品。羽海野チカ先生が語る、押井守監督。
・・・といった内容の短編集でした。単行本はちょっと大きめA5版。
10年以上前の作品も多いのですが、羽海野先生が好きなら違和感ないでしょう。現在にまで繋がる要素も数多く、このころから既に作風が定まっていたんだなと。まぁハチクロも始まっていた時期なので、再確認という具合ですが、やはりこの人の漫画は好きですねー。
なんとなく、やさしい匂いがする気がします。
花とゆめレーベルからの発売になりますが、男性にも読みやすいと思います。
「3月のライオン」と合わせてオススメしたい1冊。3月のライオン新刊は22日発売。
そういえばライオン開始以降、久々の「少女漫画」単行本になるんですかね。
あとなんだか東京で原画展をやるようで。行きたい・・・。
『スピカ ~羽海野チカ初期短編集~』 ・・・・・・・・・★★★☆
短編集。100ページほどの読みやすいボリュームの中に"らしさ"はたっぷり詰まっています。
スピカ ~羽海野チカ初期短編集~ (花とゆめCOMICSスペシャル) (2011/07/20) 羽海野チカ 商品詳細を見る |
泣いてもやめられないほど好きなものがあるってのはさ
きっとすごいことなんだぜ
「ハチミツとクローバー」「3月のライオン」の羽海野チカ先生の短編集が発売されました。
収録作されているのは2000年~2004年に発表された6作品となっています。
どこか懐かしいような、優しい気持ちにさせてくれる羽海野先生の魅力を、様々な角度から楽しめる一冊に仕上がっているのではないでしょうか。なかなかバリエーションに富んだ内容です。
今回は主に、特にお気に入りな2編について感想を。
表題作。2002年に小学館のフラワーズに掲載されたようです。スピカ
高校3年の夏。本当に好きで続けたいことへの情熱と、そろそろちゃんと考えなきゃいけない将来への不安に板挟みになる男の子たちと女の子を描いた青春物語。
等身大の「悩める高校生たち」の様子がなんともかわいらしい!のですが、「自分が全力を注いで熱中してるそれは、将来の役に立つのか?」とシビアな問題に気を落ち込ませるのをこちらも考え込んでしまう。将来を思うと本当に不安しかなかったあの時期だなぁ。
ヒロインの美園は、バレエをならっている女子高生。
大好きなバレエ。追い続けたい夢。けれどその世界は、凡人に優しくないことも分かっている。
情熱だけではどうにもならないいらだちや寂しさは、どんどんと彼女を追い詰めていく。
加えて親からは「もしバレエでダメだったどうする気よ」「みんなに笑われるのよ?」、そろそろ現実を見たほうがいいんじゃないかと言われてしまい・・・。
「なにかを好きになるって そんなに悪いことなのかなあ 笑われるほど?」
周囲への不満、夢を実現することに絶対の自信を持つことができない自分のふがいなさ・・・その涙には悔しさがにじみます。
そうした中から、主人公の野球少年とのやりとりによって勇気を手にし、立ち上がっていく姿には心温まりました。好きなんだから、簡単に諦めることなんてできるわけがないんだ。誰しもが不安と闘いながら、できることからやりたいことを掴んでいく。
そして爽やかなラストシーンが大のお気に入り。
(クリック拡大)
序盤に触れられた花火大会の話を踏まえた上でのこの誘い文句!くあー!
そこまで性急なものでもないかな。いやいや、どうだろう。ニヤニヤしてしまうな。
少年が1人な偏屈じいさんに出会うお話。はなのゆりかご
といってもそのじいさんのモノローグと回想で半分くらいが進行するので、実質主人公はこのじいさんのような気がする。しかしまぁこれがよくまとまってる上にいい話で、思わず涙が出てしまいました。
憎しみを糧に生き、孤独のまま研究に没頭してきた寂しい男は
ただ1人自分を愛してくれる女性すら、まっすぐに見つめることできない。
自分の都合のいい世界を作り上げて、その罪悪感は苦しいほどあるのに逃げられない。
「あさましい私」「小さい世界」「愛のコトバを吐き続けた」と、自虐的な言葉をあえて選んでいるシーンにはぐっと切なくさせられます。
上の画像で抱きしめてはいるけれど、きっと本心から満たされてはいない。
孤独って苦しいけれど、ほんのすこし楽な世界でもあるのかも知れない。1人ぼっちの世界は、自分を責める人間も自分だけ。この男とその奥さんは、自分の世界だけで完結し輪になった孤独の『歯車』を、すこしだけ相手の歯車に噛ませながら回り続けてきたのかも。奥さんのコンプレックスも根深いものだったようですが、彼女もまた彼のあやまちにすがっていた面も・・・。
しかしそんな鬱々とした展開を抜けてのラストシーンの感動はまた格別!
ヘビーですがとても人間臭いお話。かわいいおじいちゃんとおばあちゃん。
では他4作品についても。
・冬のキリン
フルカラーのショートショート。ビターな味わいの中に、切なくも温かなものを感じます。
・ミドリの仔犬
「はなのゆりかご」と合わせて同じ男の子が登場するシリーズ。こちらが1作目。
かわいい男の子ががんばるお話で、まったりほんわか楽しめるました。犬をつれ戻してきたときにショックを受けるシーンには一気に引き込まれました。表情といいモノローグといい、痛い。
・夕日キャンディー
お、ソフトなBL漫画。羽海野先生のBLはなんだか新鮮でした。
タバコを使ったシチュってシブくてカッコイイですねえ。しかし野宮だとう。
・イノセンスを待ちながら
エッセーに近い作品。羽海野チカ先生が語る、押井守監督。
・・・といった内容の短編集でした。単行本はちょっと大きめA5版。
10年以上前の作品も多いのですが、羽海野先生が好きなら違和感ないでしょう。現在にまで繋がる要素も数多く、このころから既に作風が定まっていたんだなと。まぁハチクロも始まっていた時期なので、再確認という具合ですが、やはりこの人の漫画は好きですねー。
なんとなく、やさしい匂いがする気がします。
花とゆめレーベルからの発売になりますが、男性にも読みやすいと思います。
「3月のライオン」と合わせてオススメしたい1冊。3月のライオン新刊は22日発売。
そういえばライオン開始以降、久々の「少女漫画」単行本になるんですかね。
あとなんだか東京で原画展をやるようで。行きたい・・・。
『スピカ ~羽海野チカ初期短編集~』 ・・・・・・・・・★★★☆
短編集。100ページほどの読みやすいボリュームの中に"らしさ"はたっぷり詰まっています。
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