[漫画]この夏休みは、きっとずっと忘れられない。 『ぼくらのよあけ』1巻
ぼくらのよあけ(1) (アフタヌーンKC) (2011/06/23) 今井 哲也 商品詳細を見る |
おれたちで宇宙船を直して飛ばすんだ
アフタヌーンで現在連載中の「ぼくらのよあけ」1巻が発売。待ってました!
今井哲也先生は同じくアフタヌーンで「ハックス」を連載していた作家さんです。
今回の新作は全10回とはじめから決定した上で始まったようで
この1巻は5話までが収録されており、次の2巻で「ぼくらのよあけ」は完結しそうです。
全2巻とコンパクトなボリュ-ム作品な作品になりそうですが、
しかし作品の世界観はちっともコンパクトなんかじゃない!
「夏休みの課題は決まった。こいつを宇宙に帰すんだ。」というのは単行本オビに書かれていたものですが、これだけでテンション上がってしまう・・・!
どんな作品かは下で紹介してみようと思います。
舞台は2038年。現在と同じような日本の風景には、ちょっぴり・・・いや、かなり未来を感じさせる色んなものをたくさん見つけることができます。
そんな時代を生きる悠真、真悟、銀之助の3人は、いつも一緒に遊ぶ仲良し小学生男子。
夏休みを目前にしたある日、彼らはふとしたきっかけからと宇宙の秘密に出会ってしまいます。
家庭用ロボット的存在・オートボットにいきなり乗り移ってきた新しい人格は「私はこの星の外から来た無人探査機」と告白。少年たちはこの宇宙人?の手助けをすることにします。
外部コミュニケーションのための仮の姿がこのオートボットなら、本体の宇宙船はどこにある?とたずねれば、悠真が立っている屋上、このアパートそのものが宇宙船だと言うのです。
ああ、いきなりとてつもなく大きなものに出会って、物事の規模をはかりかねてしまう、この感じ。でも瞳をキラキラさせながら子供たちは動き出すのです。
無謀なような、でも夢に満ち満ちた展開じゃないですか。大冒険の香りですよ!
クラスのみんなには内緒だよ。大人にも絶対内緒だよ。僕らだけの秘密だ。
主人公たちが(意識だけですが)宇宙にやってくるシーンは凄くお気に入り。
部屋に閉じこもってずっとゲームやってるか、オモチャを使って外で遊ぶくらいしかしてなかった小学生たちが、いきなり宇宙に持ってこられるのです。
その壮大さに静かに胸震わせながら、自分たちの住まう地球を眺める。
宇宙を描く作品は数多くありますが、人間(というか自分です)ができる最大イメージを軽く上回る超スケールを誇るのが宇宙。その意味不明なスケール感や、謎をいっぱいに含んだ様子は、どうしたって心惹かれてしまうのです。
加えてこの作品は小学生たちを主人公に据えています。
小学生が普段見えている小さく狭い世界から、一気に宇宙にまで突破していく感覚には、登場キャラクター同様にゾクゾクっと震えてしまうのです。
宇宙に圧倒されながらも、この作品は小学生をリアルに描いていて、これも魅力的。
女の子を意識しすぎていたり、意地を張ってしまって不器用なやり方しかできなかったり、遊びには常に全力で一生懸命だったり、夢物語のような宇宙人のお手伝いにテンションあげたり。
無邪気さと、同時に芽生えてきた色んな意識に板ばさみにされている感じ。かわいいですねぇ!
でもこの年頃の男の子たちなんて結局バカばかりだったりするのです。
それを横目に見ながら「男子はバカで楽だよねぇ」なんてため息をつく女の子たち。
2巻の後半からはとある女の子がメインキャラとして登場するのですが
彼女が立たされている境遇は、子供だからこそ、と言うような明け透けな悪意が感じられて冷え冷えします。残酷なことを、お遊び感覚で簡単にやってしまうのも、子供の世界なのかも。
真悟のお姉ちゃんはかなりの現代っ子なのですが、彼女のいうセリフには時々ギョッとさせられます。友達作りのルールだとか、「親友登録」をしたけど相手のことを面倒くさく思ってるだとか。ツイッターを使ってグチを言い合ったり本人に酷い言葉を送ったり・・・なるほど、小学生社会も、確実に未来のカタチになっているようで。そういう部分にすら、「小学生らしさ」と「未来」を感じます。
さて、何気にビビビと来たのが、何気ないようなこのシーン。
ぬおー・・・・・・・なんだろう、凄くキュンとする・・・。
楽しげに鼻歌歌いながら、ひぐらしの声を聞きながらシャワーを浴びる夕暮れ時。
なんでしょうね、この夏休みをギンギン感じて切なくなっちゃう感じ。ぐおー。
・・・まぁともかく、この作品が発する「夏休みムード」は相当なものだと思うのです。
リアルに夏休みのにおいがするところがまたたまらないのです。そして、あの香りを漂わせたまま宇宙までぶっとんでいくスケール感!相乗効果で素晴らしいです。
スケールが大きいのに小さいような、小さいのに大きいような、不思議な感覚。
そういえばこの2038年って時代設定、すごく絶妙なんですよね。
27年後、きっと新しい技術がたくさん生まれて、人々の生活は変わっていると思います。
単行本オマケにも未来の社会システムなどが登場しているのですが、これを見ているだけでも凄く夢が広がるというもの。本編ではなんでもないように見慣れぬガジェットがそこかしこに。
でもそんな中でも日本らしい風景は確実に息づいてもいる。社会の様子は変わっていても、子供たちの本質はこれっぽっちも変わっていないことにほっこり。
そして年齢を考えれば、この子供たちの親たちが子供だったのが、現代(2010年くらい)です。
どうやら悠真のお母さんもまた、悠真と同じくらいの年頃のころに・・・・・・なんてことが覗ける描写がちらほらと。まさに言葉通り、『次世代』のSF作品となっているのです。
そういえば宇宙船のコアを3つバラバラに持ち去った、2010年の3人の子供たち。
画像左上の女の子は、悠真のお母さん。そして中央にいるのが恐らく悠真のお父さん。
仲良し3人のうち2人が結婚したのでしょう。そして画像右上の男の子が、メインの男の子3人に途中から合流する河合さんのお父さん。
宇宙船が起動された時点でコアは2つ元の場所にあり、河合パパのものだけが返されていない状態でした。ここからも、ちょっと切ないドラマを思わせます・・・。河合パパは宇宙船に近づくことを嫌がる→過去の思い出が辛い→・・・妄想なのでもうやめますが。単純にかえすのを忘れてただけなのかも?
まあそうして、「過ぎ去った夏休み」「戻れない日々」を感じて切なくなってしまうのでした。
しかし切なさと同時に胸をこみ上げてくる感動もあるんですよね。
2010年が2038年にほんのりつながった今、果たせなかったのであろう当時の子供たちの願いは、現代の子供たちに受け継がれた!・・・こっそりと、ですけど。今後大人たちも絡むのかな。
(今月のアフタヌーンを読むと、どういうスタンスで大人たちが登場するかはなんとなく分かりますが、まだまだこのまま落ち着くかどうか分かりません)
という感じで「ぼくらのよあけ」1巻の感想でした。
この作品の内容もそれっぽいんですけど、「小学校の夏休みにみたアニメ映画」のムードを漂わせてるんですよね。あの、頭で理解しきれないことだけど意味不明にワクワクしてる感じ。
身もだえしそうになります、こういう作品。言葉に出来ない興奮がある。浪漫ですよね!
全10話を最初から決まっているのも面白いですね。計算された展開が繰り広げられ、250ページ超えという結構厚めな単行本なのですが、まったくダラけた印象を抱かないまま読み終わりました。
話数的に次の第2巻で完結すると思われますが、今からどう終わるのかが楽しみです。
河合花香ちゃんを全力で応援しつつ、夏休みの雰囲気を味わいつつ、続く2巻の発売を待ちたいと思います。オートボットのナナちゃんもかわいいです!性的な目では見ない!見ない!
ちなみに現在発売中のアフタヌーン8月号で、単行本のすぐ続きが読めます。
夏らしいドキドキがきっと味わえる作品です。オススメ。
『ぼくらのよあけ』1巻 ・・・・・・・・・★★★★☆
全2巻になると思われる作品。ムードたっぷり。小学生ワールドは宇宙にまで拡大する!
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