[漫画]ここは不思議と心落ちつくんだ。『僕らはみんな河合荘』3巻
僕らはみんな河合荘 3 (ヤングキングコミックス) (2012/08/30) 宮原 るり 商品詳細を見る |
宇佐くんはおひとよしすぎると思うっ
「僕らはみんな河合荘」3巻が出ています。順調順調。
甘いと見せかけてだいぶ残念で下品な、でもちゃんと甘い同居型ラブコメ漫画。変人変態ばかり集まってとても賑やかで、楽しいです。
最初始まったときはもっとページ数も少なかったのですが、最近は安定して20Pくらいになってますね。1話1話読み応えあります。
この3巻はちょっとヘヴィーな話もあり、ストーリー性が増して来てるかも?
それにしてもこの表紙!吸い込まれそうな瞳とか、麗しい髪とか・・・素晴らしい・・・!!宮原先生のカラーイラストは毎回とても綺麗ですよね。
毎度おなじみのオマケ漫画も楽しい第3巻。感想を。
1話完結を基本スタイルに進行していく作品。3巻は全部で8話が収録されています。
河合荘のメンバーが毎回ワイワイとバカ騒ぎしています。
この作品は、不思議と心のひだをくすぐる瞬間がありますね。残念なコメディを全力で繰り広げながらも、ふいに現実のシビアさや人間の心のナイーヴな部分を晒してくる。
それが心に刺さるったら刺さる。3巻最初の話の麻弓さんの1人がたりなんて印象的。
17Pの「無神経とかいったけど、私だって同じことしてたんだ」の流れですね。
あの麻弓さんがマトモに落ち込んでる・・・!という意外性がおもしろいギャグでもあるんですけど、ギャグと流してしまうには惜しい深さがある言葉だよなぁって感じます。
表紙詐欺という言葉を、「かわいい女の子とのラブコメをやると見せかけて下品なギャグをやらかしてます」という意味合いで自虐的に持ち出されたりしていますね。宮原先生自身がw
でも、そんなちょっとだけ心にチクッとした痛みを与える、甘いラブコメにだけ浸らせてはくれない部分も、ある意味では表紙詐欺なのかなともふち思ったりしました。
恋愛とはまた違った部分で、シリアスな空気がときどき顔をのぞかせます。
そういう重い要素がメインではありませんが描き込まれていて、少々の意外性がある。
繊細に人間関係に悩んだりする律ちゃんがメインヒロインだからこそ、そういう要素も込められているのかなー。ちょっとしたシリアスも浮いたりしていません。だから好き。
今回、律ちゃんにクラスメイトの新しい友達ができた・・・というエピソードがあります。
しかしこの話の着地の仕方がなんともリアルというか。ちょっぴり引っかかりを残して終わります。
気持ちのいい解決がされない。でもそれは、現実的にはよくある事かな。
いろんな人に接して、いろんな事を知る。その人その人の深いところを見る。
それを繰り返してなにか学んでいくんだろう。律ちゃんはあんまりそういう経験がなく、そして今回の件が性急だったために戸惑って、失敗し、涙も流しました。
でもそれも成長か。苦々しいけど。失敗したって言っても、合わないんだから仕方ない。人間関係は時にしっかりと見極めをしていく必要がある。残酷かもしれないけど、それが結局互いのため。
出会ったすべての人といい関係を気づけたら最善だけど、そう上手くいくものか。
このコマ、結構面白い描き方してますね。内容もそうですが見た目も印象に残ります。
どうしようもないズレをお互いに理解した1シーンかな。
こういう殺伐としたシーン、読むのはすこし胸が苦しみますが、いい話だったと思います。
この後に河合荘のメンバーで交わした「いい人間関係を作るコツ」の話も染みます。
「何もかもピッタリ合う奴なんていねーよ 『合わない』のが問題なんじゃなくて
その『合わない』が、許容できるか…近づきたいかと思うかだよ」
麻弓さんはたまにちゃんといい言葉をくれるよな・・・。ダメ大人だけど!
で、ちょっと暗い話はここらへんにしといて。
3巻にはほかにもビビッとくるエピソードがいろいろあります。
第5話では彩花の昔なじみが現れ、彩花の黒歴史や弱点をいろいろと暴いていくw
性悪というのがフィーチャーされてきた彼女の意外な一面が明かされていく・・・!
というかこれで開き直って、3巻表紙裏とかでも趣味の本隠してないw
5話のラストで素顔も見られたしな!宇佐へのイジリはよりキツくなりそう・・・
彩花さんはだいぶクセが強い人けど、女友達の前では表情をみせていましたね。
「だからそーゆーの、こいつでもーうんざり」と語るときに、彩花の穏やかで優しい表情ったらなぁ。いつもの計算したものじゃなく、自然に溢れでた天然の彼女の微笑みで。
とても好きなシーンです。
で、こんなに心許せる親友がいる彩花さんを見て、律ちゃんも結構心揺らぐものがあった。
ほかにもこの3巻では、いろんな感情が律ちゃんの胸の中で渦巻くのですが、あの性格なので、それを口に出したりしない。読者には見えるように描いてくれているけど、あんまり態度にも出さないから他のキャラたちは知らないままだったりする。
けど3巻のラストエピソードは、律ちゃんがよっぱらってしまうというもので。
この話の中で、彼女が最近感じたことを全部ぶちまけるんですよね。
単行本の最後としてとても収まりがいいのです。ニッコリできますよ。
「じゃあ私に友達はできない」とキッパリ潔く諦めちゃう律ちゃんに笑った。
ラブコメとしての盛り上がりも相まって、ちょっと気持ちよすぎるラストでした。
はああああぁぁぁぁいい顔してくれるなぁ律ちゃん!
この3巻、ほかの要素が目立っていていますが、もちろん律ちゃんと宇佐くんのラブコメも相変わらずニヤニヤできます。
麻弓さんを中心とした大人組にラブコメを邪魔され続けた結果、幸せ慣れしていないためにいざという時どうしたらいいのかわからなくなる宇佐くん不憫だなぁw
そんな3巻でした。
この作品で描いていく内容をより広げた内容になっていたと思います。
2巻の時から変ショリうんぬんで人間関係の思い悩んだりなんだりって姿は描かれてきていますが、正統進化を遂げてより深めてきた感じ。好きです。
『家』としての河合荘の楽しさ・居心地のよさというのも、そうと言わずともしみじみ感じさせる内容だったとも思います。
くだらない下品なギャグとかを繰り返していく中で、しっかり暖かさが育っている。
こんなにうるさくて、変な人ばかりいて。
でもなんだか楽しい。うるさいことがジャマにならない。
この作品の持つ空気はさらに気持ちいいものになってきています。次巻も期待。
『僕らはみんな河合荘』3巻 ・・・・・・・・・★★★★
律ちゃんがんばる編、彩花さん色々バレる編などアツい内容。にしても表紙の律ちゃんは長時間眺め続けても飽きない魔力が秘められています。ごちそうさまです。