[漫画]息苦しい…けれど離れられない私たち。『魚の見る夢』1巻
魚の見る夢 (1) (まんがタイムKRコミックス つぼみシリーズ) (2012/09/12) 小川 麻衣子 商品詳細を見る |
でもまだ大丈夫 私たちはまだ普通でいられる…
発売されました!小川麻衣子先生の「魚の見る夢」1巻!
ゲッサンで「ひとりぼっちの地球侵略」も連載している小川先生。こちらは、ボーイミーツガールのきらめきが特徴的な「地球侵略」とは違った雰囲気を持つ作品になっています。
つぼみの漫画なので百合漫画というのは間違いないですが、主人公たちは姉妹関係です。
Yes姉妹百合!設定からしてちょっとインモラルな香りがするじゃないですか・・・!
ということで今日はこの漫画の感想を。
息苦しい・・・けれど離れられない・・・姉妹の「好き」はどこへ向かうのだろう。そんな作品。
姉妹2人ぐらいをしている巴と御影。
母とは死別。父とはあまり会わない。2人きりで日々を生きる。
姉妹や家族というだけ関係を飛びこえて、複雑な感情に心をゆらす2人。彼女たちだけじゃなくいろんな女の子も登場し、ストーリーを彩ります。
というか今後もっとストーリーに絡んでいって面白くなりそうな気配です。
1巻はキャラクターの顔見せや関係の提示を重点的にやっていっていたような感じ。
大きな事件はおきませんが、ゆるやかな時間の中で心の機微が丁寧にえがかれていきます。
まだ見えてこない重要要素もあり(父親のキャラクター像など)、この1巻はやはりキャラクター紹介的内容かなと思います。状況が本格的に動き出すまでをじっくりやっているかのような。
巴と御影。姉妹のすこし歪んだ姉妹関係が本作の注目どころ。
第一話は姉である巴が、寝ているあいだに御影に首輪をはめられるところからスタート。
所有欲を隠そうともしない妹・御影の言動にとまどう戸惑うお姉ちゃんです。
よく知らない人が「巴の親友だ」と言えば激昂。
普段はちょっとクールなような、まだ子供っぽいような・・・結構ふわふわとした性格をしてますが。
最初は巴との2人きりの空間だったからあのサディスティックさが印象的でしたが、学校ではそうでもないらしい。やはり御影にとって巴は特別すぎる存在なんだろう。
姉妹。今は2人だけの家族。唯一無二に強い絆で結ばれている・・・と、信じたい。
だからそのあいだに他者が入り込むのはガマンならないんだろうな。
巴はひそかに家を出ようと考えて受験勉強もがんばっているのですが
御影はそれをそれとなく悟って、勉強がはかどらないような意地悪をしました(第一話)。
なんて迷惑な独占欲・・・!かわいらしいとは、自分はまだちょっと言えないな。
「はっきり言えばいいのに 私のことが邪魔だって」(第5話)
など、自分の行いの悪さには自覚的です。それでも巴を縛ろうとする。そこに心からの切実な想いがあるのは間違いないです。離れていきそうなのがわかるから焦っている。
強くつながりたい妹。そこに家族として以上の情熱を感じて、少しだけ怯える姉。
でも最後には反発しつつも妹を受けとめるのだ。
危なっかしい妹だということは重々分かっているから、心配で心配で仕方なくなる。
縛りつけられるのはいやだけど、近くで見守っていようとする。
姉妹2人、それぞれが望む「最善の姉妹のカタチ」は微妙に異なっています。だからこじれてしまう。
あと現状をどうしたいかで2人は意見が分かれている。
姉の巴は少しずつでも今の歪んだ家族の形を変えていかなければと、あの父親から離れなければと頑張っている。
でも妹の御影はそうではなく、変わることを怖がっている。父親のことは気がかりだけど、今のまま2人きりの日々がずっと続けばと考えている。
そこは第5話でフィーチャーされていますが、5話の結論を読むと、2人がこの先どういう未来に向かっていくのかがわからないなぁ。あんまり明るい未来じゃない気がする。でも薄暗い中で2人身体を寄せ合うのも、またオツかもしれない(ゲスい読者目線で)
こんな風な2人に追い込んだ張本人とも言えるのが、彼女たちの父親。
でもまだ父親がどんな人物かわかりません。ちょこっと登場しますし、彼が姉妹の心を傷つけたことはわかりますが、詳細はまだ見えてこない。
どうも娘の御影に、死んだ妻の面影を見ている?病んでいそうですがさて。
とまぁズブッズブな様相を呈してきちゃった主人公たちですが
彼女たちの友人たちがぞれぞれいい味だしてて好きなのです。
いつもイチャついててほんわかできる先輩カップル、とてもかわいいです。
窮屈そうに愛し合う御影と巴とは違って、奔放におだやかに恋しあっている暖かな感じ!
あと高柳さんはいいキャラクターだなぁ。御影に迫っていく!ガンガン行く!
巴姉ちゃんは押し倒すけど、クラスメイトには押し倒されちゃう御影の図。
巴とのシーンではいつも押せ押せの優位ポジションにいる御影だからこのシーンが好きw
でもこのシーンの御影いいですね。特に口元にある携帯電話。唇をガードしてるかのような。
意図的なのかそうでないのかはともかく、巴以外には真には心を開いていなさそうに見える御影らしい。あと単純にドキドキするよね!この距離感の少女2人ってのは!
でも御影は巴以外にあんまり興味がないので、高柳さんは完全に片思いですよ。
高柳さんは巴に嫉妬心を燃やしていました。彼女がなんかやらかしてくれそうで、楽しみだなぁ。
では全体のまとめなど。
姉妹百合として魅せられる作品になっています。
設定としてのインモラルさはありますが、1巻の段階ではまだギョッとさせられるようなシーンはありません。でもこれから色々とこじれていきそうな予兆は感じられる・・・。
次の2巻で終わるような感じでもないかな。3巻くらいになるかもしれないですね。
これから大きく動いていくであろうストーリーの中で、2人の闇が深まっていくと面白そう。
でも暗くなりすぎるのもアレなので、先輩カップルだとかヤキモチやいちゃう高柳さんとか、いい活躍をしてくれると嬉しいです。
キレイな感情に彩られた作品ではありません。じわじわ蝕まれるようなムードで、静かにゆったりと読んでいたくなる作品です。浸っていたい。
全体的にしっとりと水気を孕んだ、涼やかな雰囲気が漂っています。
水中にたゆたっているような・・・という感覚は、魚というモチーフがあるからこそかな。
でもそれは、見たいものがまだ見えてこないもどかしさや不安定さがあることも込みで。
2巻までまた結構かかりそうですが、じっくりと描かれていってほしい作品です。
余談ですが、つぼみ掲載時とい見比べるとだいぶ作画に修正がされています。
単行本のはじめの方なんて、ほとんど描き直ししてるじゃないですか!すごいこだわりです。
表情の微妙な描きなおしがされていることを確認すると、もっと深くこの作品を味わってみたくなりますね。
『魚の見る夢』1巻 ・・・・・・・・・★★★★
待望(超個人的)の小川先生の百合漫画だぁーウオォ!いい作品になっていきそうです。