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[漫画]深く静かに心に染みる言葉たち。『同窓生代行 売野機子作品集2』

同窓生代行─売野機子作品集・2─同窓生代行─売野機子作品集・2─
(2011/11/30)
売野機子

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   せめて笑ってくれたまえ

発売して結構経ってしまいましたが、売野機子先生の作品集第2弾が出ています。
前回の作品集「薔薇だって書けるよ」は個人的にとてもツボで、心の奥深いところに触れてくる不思議な一冊でした。反芻するように何度も読みましたねえ。
そしてこの第二弾「同窓生代行」も楽しみにしていました。そして、またしても素晴らしいなと。ページ数はバラバラですが、8作も収録された彩りある一冊です。



では特に好きな作品の感想を書いていこうかなと。
でも売野先生の作品って、その面白さをうまく言語化できないことが多くて・・・でもまぁそこをなんとかやってみたいなあという感じです。上手く形になってないふわっとした感覚を言葉にしていくのって結構楽しい。

●同窓生代行

今回の表題作。全身整形で生まれ変わった知り合いのカリスマモデル・庭野野ばらに頼まれ、彼女の同窓会に出席にすることになった主人公。
赤の他人になりすまして先週した、誰も知り合いのいない同窓会で、主人公は野ばらという女性の過去に触れ、その中で自分を少しずつ変えていきます。

この作品は主人公のキャラクターがいいですねえ。
もう夢見るだけの女の子ではない。現実には辛いことも悲しいこともたくさんあると知った。期待したことが何でも叶えられるなんてことがないことも分かっている。オトナになった。
夢を手放してしまえば、心に残るのは乾いた諦観。
「いつか終わりそうでこわくて 素直に楽しめなくって」とは主人公のモノローグですが、この女の子には主人公は、結構共感ができてしまうんですよね。捻くれた考えかも知れないけれど、でも真理をついている気もする。
すべてを賭けるように一生懸命になることに抵抗が出てきてしまう、この寂しさ。現実の難しさに打ちひしがれちゃって、まっすぐに幸せを求めることに億劫になってしまって。
そんな女の子だからこそ、このお話が迎えるラストシーンは実に鮮やか。
「あたしハッピーエンドが好き」と結論にたどり着く、この流れがなんとも言えず感動的です。

同窓生2

たしかに美しいけれど、過去を完全に切り捨たモデル・野ばらの過去も面白い。
切り捨てたと思いきや、ひっそりと続いていた気持ちに精算をつけたのですが、でも彼女には過去に戻る気なんてさらさらない。それでも・・・と、思い出にして、凛と立つ野ばら。

なにより、ラスト3ページの余韻が素晴らしい。
卵とニワトリのやり取りとか、涙ぐむ主人公の表情とか。
なんかもっと深いところがあるみたいで、自分はまだこの作品を100%掴めてはいない気がしていますが、だからこそもっとじっくり読んでみたくなるんですね。そういう、不思議な余韻。

●訪問者

14ページのショート。しかしこれがやたら心に引っかかる。
うっかり唇が触れた直後の乙女すぎるリアクションがめちゃくちゃかわいい!
・・・はずが恥ずかしさのあまりそのままかけ出して、主人公の手の届かないところにまで行ってしまうヒロイン。彼女に秘密に関しては読んでみてのお楽しみ?といったところですが、しかしこういうネタ弱いんですよね・・・。彼女は幸せになれたのかなぁ、なんて。

●もっともっとよく見て シリーズ

メガネで通じ合う男の子たちを描いた2作。ソフトなBL、かなあ。
とても短いのでワンシーンを描いたのみのものですが、これがなんとも微笑ましい漫画!
間接メガネとは斬新が概念ですね!

●LAST CIRCUS

悩みますが今回の作品集の個人的なベストはこれかな。
まずタイトルがいい。ゴロもよくカッコいいし、その意味が分かるラストシーンでの高揚感もピカイチ。けっして長くはないシナリオのそのラストを爽快なものにさせる流れもいいですねえ。
トリッキーな構成をしている(語り部は一体誰なのか、と言った点)もののそのタネを予想するのは難しくありません。
しかしその事実はちょっと、いや強烈に切ない気持ちを呼び起こします。
それを華麗に吹っ切って、意気揚々一歩を踏み出す主人公ですよ!
いや意気揚々とはちょっと違うか。彼自身、きっと自分がピエロになってしまうってことが分かっている。だからサーカス。
でも笑顔を届けるために無様を演じるピエロのように、彼は踏み出すんですよね。

同窓生

センチメンタルに浸りつつもどこか清々しい!男の子らしい気取った言い回しもどこか意図的に「演じてやろう」といった気概が含んでいる気もしますねえ!
そして「せめて笑ってくれたまえ 魔法はないけど 俺のラストサーカスをかますぜ」ですよ・・・!単純にこのフレーズが好きなだけなんですけど!このフレーズが繰り出されるまでの過程が完璧にツボで参りますね!
やっぱり自分は売野先生が紡ぐ「言葉」に凄く憧れます。毎回のようにドキッとなる。
軽快に韻を踏むので、すごく印象に残るのです。



ざらっと個別感想を書いて行きましたが、そんな感じの1冊。
実は以前出した「楽園に花束を」という同人誌で売野先生作品について書いてますので、そっちもよろしければどぞ。ううん、なんで宣伝してるんだ。
まぁともかくいい本でしたよー。売野先生のセンスには何度だって唸らされる!
1冊目での単行本を気に入った人はもちろん、この単行本から買ってみても全然問題なし。
今回の単行本は本当の気持ちを伝えられない作品が多かったような気も。「薔薇だって書けるよ。」よりも切ない雰囲気がありました。切ないだけで終わらない作品ですが。

楽園本誌などで売野機子先生の漫画にはよく「少女漫画」と銘打たれているんですが、それはたしかに納得出来るもので。むしろ大人になってた人に向ける、大人の少女漫画と言った風です。
軽やかでありながら心にのこる言葉選び。ゆったりと感じられる余韻。飄々としたキャラクターたちや、しかし切実であり胸に迫るメッセージ・・・。1度読めば分かる、この独特の雰囲気。
古いわけでは無いんだけども、ややレトロな趣のある絵柄も素敵ですね。
言葉にするのは難しいんですけど、とりあえず言えるのは、とても魅了されています。
今から作品集第3弾を楽しみですなあ。

『同窓生代行 売野機子作品集2』 ・・・・・・・・・★★★★
満足度の高い作品集。作者のセンスにハマるとずるずる引きずり込まれてしまう。

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