[本]正義の味方より、あなたの味方を。『セカイのミカタ』1巻
1回アップしたこの記事をうっかり消してしまい、全文書きなおしました・・・。Ver.2です。
信じてもらえませんか
YKアワーズにて連載中の作品「セカイのミカタ」の1巻が発売されました。
連載当初から気に入っていた漫画ですので、今回はこの作品について。
オビには、同じくアワーズにて「惑星のさみだれ」を連載していた水上悟志先生が登場。
「この視点を、このコマ割りを、この画を見よ!!」とコメントを寄せています。
これぞ少年漫画!と言った内容でありますが、作者・鈴木小波先生の独特のセンスが上手い具合に混ざっており、ストーリー以外にも楽しめる部分が多い作品に仕上がっているかなと。
ではストーリー。
舞台は万住町。何者かの手によって異世界への扉が開かれるこの町では、
たびたび扉の向こうからやってきた、異世界の住人たちによる事件が起こります。
そんなこの町の平和を守るのが異界管理局、通称『イカイカ』の役目。
物語は、そんなイカイカにとある少年が志願しにくることから始まります。
名前は伊達カイチ。
彼はかつて好奇心から異世界への扉をくぐり、双子の兄を失った過去を持っていました。
そんな過去から、彼は異世界とその住人達を憎んでおり
イカイカへの志願動機も、消息不明の兄を見つけたいのと同時に、この町にやってくる化け物たちを追い払い倒すこと・・・と、まず自分の目標を果たすことが目的で、私怨も混ざってる。
しかし意気揚々イカイカにやってきた彼を待っていたのは
むしろそのイカイカに所属している異世界の住人達。
カイチはイカイカメンバーになれるのか?きちんと仕事ができるのか?
この話の根本にある「異世界」の設定は結構面白い。
互いに干渉できないため気付かないが、我々が住むこの世界以外にも多くの世界がある。
それぞれの世界にはそれぞれの価値観があり、それに沿った常識が存在する。
そのことを、当初のカイチは理解していなかった。
所詮はこの世界のことしか見ておらず、異世界のことを理解しようともしていなかった。
イカイカたるには、それではいけない。
もっと広く深い見識を持ち、全ての存在に優しくなければならない。
人間が正義を語るのはあまりにも傲慢。数あるうちの1つの世界の住人に過ぎないのだから。
つまりイカイカは正義の味方ではない。
正義の味方より、世界の味方を。あなたの味方を。
この意味を理解した彼の心境の変化とを、鮮やかに描いた第1話はなかなかに爽快でしたね。
これは結構、現代にも置き換えられるテーマだなと。
一般的な価値感・常識から外れる存在は、きっといつの時代だってあるものだけど
それらを全て「悪」だと切って捨てることも、またおかしな話。
もっと広く、もっと優しくなれたらなーとか、そういうお話でもあるかもしれません。
「価値感」を語るうえで重要なのは、第2話だと思います。
このエピソードには異世界からやってきた獣人と、彼と恋に落ちた人間の女性が登場します。
獣人はこの世界では常識外れな怪力を持り、殺人を犯してもいました。
それは襲われそうになった恋人の女性を救うためでもあったのですが、罪は罪。
「人じゃない、世界を見ろ」というウブメさんの台詞は、残酷でもあり正確でもあり・・・。
結局獣人はもとの世界に戻されることになります。恋人はこの世界の住人。もちろん離れ離れ。扉をくぐれば2度と会うことはきっとできない。もうすぐで、永遠に引き裂かれてしまう・・・。
けれど、ウブメさんが作り出した一瞬の隙。
女性は走った。
(クリック拡大)
異世界の恋人の腕の中へ。この世界に笑顔で別れを告げて、扉をくぐった。
それを呆然と見るカイチの眼には、衝撃と驚愕。
扉をくぐり、大切な人を失ったトラウマを持つ彼だからこそ感情が表れているなぁ。
自分とは明らかに違う価値感を、自分と同じ人間の中にみつけてしまったのだ。
それを理解し、受け止めてこそ、イカイカなんだろう。
戸惑いながらも彼は、確実に「世界の味方」の1歩を踏めたのでは。
ウブメさんまじ男前。
この作品の大きなテーマの1つに、カイチの成長は間違いなくあるでしょう。
最初はいがみ合っていたパートナーのウブメさんとの関係の変化は
特にそれを感じさせてくれる描写だったと思います。
第6話の66号とのエピソードなどでもそれは非常に強く描かれていて
異世界からやってきた存在に彼は自分を重ね、理解し、救うために全力を傾け、抱きしめることすらしてみせます。第1話から見れば大変な進歩ですよこれは。
そういうのも、読んでいて気持ちいいのです、この作品。
物語も熱いですが、この作品は作画にも特徴が。
魚眼連レンズ式に風景をぐんにょり描いてみるさせる・・・なんて普通普通。
酔いそうななほど強烈に回り込んだアングルから描いてみたり
異常なほど遠近感を強調した構図をとったりと、面白いこと結構やってますw
第1話、カイチが初めて異世界の住人とのバトルに巻き込まれるシーン。
個人的に大好きな絵!歪んだ背景と強大な敵のインパクトが絶大!
作者の鈴木さんがこういう絵の描き方が好きなのもあると思いますが
見たこともない構図で描かれる町や異世界の風景、そしてバトルには
読者にも、新しいなにかを見つけられたようなドキドキ感があるのでは。
この工夫は作品の雰囲気を良くするのに一役買っていると思います。
それと異世界を舞台にしているだけあって、登場キャラも独特のデザインが多いですね。
特に先ほどから話題にしているウブメさん。
やってることは超カッコいいアニキなお方ですが、外見はコレですよ。
なんだこのシマシマ!かわいいぞ!!
ちなみにこの単行本のカバー裏にはウブメさん完全図解が載っているぞ!みんな読もう!
他にも女性キャラもわりーと豊富で、それぞれ可愛かったりします。
2つ年下の幼馴染マコちゃん(嫉妬がかわいい)、眼帯がミステリアスなアリスさん(笑顔がかわいい)、過激な愛情表現が多いボボちゃん(まるくてかわいい)などなど。
謎のしゃべるキノコを頭に乗っけた45歳幼女とかもいたり。
まだまだラブ要素は薄いですが、単行本ラストではマコちゃんが勇気ある一歩を・・・?
そちら方面にも期待できるかもしれません!楽しみ!
んではまとめを。
王道の少年漫画でありつつ、独特のセンスによりオリジナリティーある作品になっています。
回を増すごとに面白くなってきてる気がするので、長く連載が続いて欲しい作品です。
人気あるのかないのかよく分からないのが恐いところ・・・。
それとどうでもいいことではありますが、作風やフキダシの書き方など、なんとなくオビにも登場した水上先生を彷彿とさせるような・・・?アワーズ巻末コメント等を見ても、お二人は仲がいいのかもしれませんね。まぁだからなんだって話なのですが。
これからも独特で気持ちいい少年漫画で在り続けて欲しいですね。
ほんのちょっとラブい展開を期待しつつ、2巻を楽しみにしたいと思います。
『セカイのミカタ』1巻 ・・・・・・・・・★★★☆
ちょっと捻りのある少年漫画。グリングリンアクションを堪能しましょう。
セカイのミカタ 1巻 (ヤングキングコミックス) (2010/10/30) 鈴木 小波 商品詳細を見る |
信じてもらえませんか
YKアワーズにて連載中の作品「セカイのミカタ」の1巻が発売されました。
連載当初から気に入っていた漫画ですので、今回はこの作品について。
オビには、同じくアワーズにて「惑星のさみだれ」を連載していた水上悟志先生が登場。
「この視点を、このコマ割りを、この画を見よ!!」とコメントを寄せています。
これぞ少年漫画!と言った内容でありますが、作者・鈴木小波先生の独特のセンスが上手い具合に混ざっており、ストーリー以外にも楽しめる部分が多い作品に仕上がっているかなと。
ではストーリー。
舞台は万住町。何者かの手によって異世界への扉が開かれるこの町では、
たびたび扉の向こうからやってきた、異世界の住人たちによる事件が起こります。
そんなこの町の平和を守るのが異界管理局、通称『イカイカ』の役目。
物語は、そんなイカイカにとある少年が志願しにくることから始まります。
名前は伊達カイチ。
彼はかつて好奇心から異世界への扉をくぐり、双子の兄を失った過去を持っていました。
そんな過去から、彼は異世界とその住人達を憎んでおり
イカイカへの志願動機も、消息不明の兄を見つけたいのと同時に、この町にやってくる化け物たちを追い払い倒すこと・・・と、まず自分の目標を果たすことが目的で、私怨も混ざってる。
しかし意気揚々イカイカにやってきた彼を待っていたのは
むしろそのイカイカに所属している異世界の住人達。
カイチはイカイカメンバーになれるのか?きちんと仕事ができるのか?
この話の根本にある「異世界」の設定は結構面白い。
互いに干渉できないため気付かないが、我々が住むこの世界以外にも多くの世界がある。
それぞれの世界にはそれぞれの価値観があり、それに沿った常識が存在する。
そのことを、当初のカイチは理解していなかった。
所詮はこの世界のことしか見ておらず、異世界のことを理解しようともしていなかった。
イカイカたるには、それではいけない。
もっと広く深い見識を持ち、全ての存在に優しくなければならない。
人間が正義を語るのはあまりにも傲慢。数あるうちの1つの世界の住人に過ぎないのだから。
つまりイカイカは正義の味方ではない。
正義の味方より、世界の味方を。あなたの味方を。
この意味を理解した彼の心境の変化とを、鮮やかに描いた第1話はなかなかに爽快でしたね。
これは結構、現代にも置き換えられるテーマだなと。
一般的な価値感・常識から外れる存在は、きっといつの時代だってあるものだけど
それらを全て「悪」だと切って捨てることも、またおかしな話。
もっと広く、もっと優しくなれたらなーとか、そういうお話でもあるかもしれません。
「価値感」を語るうえで重要なのは、第2話だと思います。
このエピソードには異世界からやってきた獣人と、彼と恋に落ちた人間の女性が登場します。
獣人はこの世界では常識外れな怪力を持り、殺人を犯してもいました。
それは襲われそうになった恋人の女性を救うためでもあったのですが、罪は罪。
「人じゃない、世界を見ろ」というウブメさんの台詞は、残酷でもあり正確でもあり・・・。
結局獣人はもとの世界に戻されることになります。恋人はこの世界の住人。もちろん離れ離れ。扉をくぐれば2度と会うことはきっとできない。もうすぐで、永遠に引き裂かれてしまう・・・。
けれど、ウブメさんが作り出した一瞬の隙。
女性は走った。
(クリック拡大)
異世界の恋人の腕の中へ。この世界に笑顔で別れを告げて、扉をくぐった。
それを呆然と見るカイチの眼には、衝撃と驚愕。
扉をくぐり、大切な人を失ったトラウマを持つ彼だからこそ感情が表れているなぁ。
自分とは明らかに違う価値感を、自分と同じ人間の中にみつけてしまったのだ。
それを理解し、受け止めてこそ、イカイカなんだろう。
戸惑いながらも彼は、確実に「世界の味方」の1歩を踏めたのでは。
ウブメさんまじ男前。
この作品の大きなテーマの1つに、カイチの成長は間違いなくあるでしょう。
最初はいがみ合っていたパートナーのウブメさんとの関係の変化は
特にそれを感じさせてくれる描写だったと思います。
第6話の66号とのエピソードなどでもそれは非常に強く描かれていて
異世界からやってきた存在に彼は自分を重ね、理解し、救うために全力を傾け、抱きしめることすらしてみせます。第1話から見れば大変な進歩ですよこれは。
そういうのも、読んでいて気持ちいいのです、この作品。
物語も熱いですが、この作品は作画にも特徴が。
魚眼連レンズ式に風景をぐんにょり描いてみるさせる・・・なんて普通普通。
酔いそうななほど強烈に回り込んだアングルから描いてみたり
異常なほど遠近感を強調した構図をとったりと、面白いこと結構やってますw
第1話、カイチが初めて異世界の住人とのバトルに巻き込まれるシーン。
個人的に大好きな絵!歪んだ背景と強大な敵のインパクトが絶大!
作者の鈴木さんがこういう絵の描き方が好きなのもあると思いますが
見たこともない構図で描かれる町や異世界の風景、そしてバトルには
読者にも、新しいなにかを見つけられたようなドキドキ感があるのでは。
この工夫は作品の雰囲気を良くするのに一役買っていると思います。
それと異世界を舞台にしているだけあって、登場キャラも独特のデザインが多いですね。
特に先ほどから話題にしているウブメさん。
やってることは超カッコいいアニキなお方ですが、外見はコレですよ。
なんだこのシマシマ!かわいいぞ!!
ちなみにこの単行本のカバー裏にはウブメさん完全図解が載っているぞ!みんな読もう!
他にも女性キャラもわりーと豊富で、それぞれ可愛かったりします。
2つ年下の幼馴染マコちゃん(嫉妬がかわいい)、眼帯がミステリアスなアリスさん(笑顔がかわいい)、過激な愛情表現が多いボボちゃん(まるくてかわいい)などなど。
謎のしゃべるキノコを頭に乗っけた45歳幼女とかもいたり。
まだまだラブ要素は薄いですが、単行本ラストではマコちゃんが勇気ある一歩を・・・?
そちら方面にも期待できるかもしれません!楽しみ!
んではまとめを。
王道の少年漫画でありつつ、独特のセンスによりオリジナリティーある作品になっています。
回を増すごとに面白くなってきてる気がするので、長く連載が続いて欲しい作品です。
人気あるのかないのかよく分からないのが恐いところ・・・。
それとどうでもいいことではありますが、作風やフキダシの書き方など、なんとなくオビにも登場した水上先生を彷彿とさせるような・・・?アワーズ巻末コメント等を見ても、お二人は仲がいいのかもしれませんね。まぁだからなんだって話なのですが。
これからも独特で気持ちいい少年漫画で在り続けて欲しいですね。
ほんのちょっとラブい展開を期待しつつ、2巻を楽しみにしたいと思います。
『セカイのミカタ』1巻 ・・・・・・・・・★★★☆
ちょっと捻りのある少年漫画。グリングリンアクションを堪能しましょう。