[本]涙薫る青春作品集 『冬の終わり、青の匂い』
17万ヒットしました。ありがとうございます。
仕事すっかな
Fellows!で連載を持つ百名哲さんの短編集「冬の終わり、青の匂い」。
ビームに掲載されたものが半数以上で、ビーム未読の俺は新鮮に読めました。
では個別感想。短編集はちょっと大変だ。
本当におバカなにゃんこに癒されますが、確実に読者のハートを抉る作品。
しかしこの作品におけるばかねこはちょっと面白い立ち位置。
普通にしゃべるわ二足歩行だわ料理するわなのに、ツッコミ一切なしw
でも猫にとっては特殊でも、それらは人間にとってみれば普通のこと。
つまり本来なら人間が担うべき役割を、このにゃんこはしちゃってる。
そう考えていくとこのばかねこって存在はなかなか意味深なものに…。
けれどまぁ、たぶんそういう深い意味はないとも思う。
主人公のそばにいる。そんだけだろう、この猫の役割は。
癒しであり救いであり、読者にとっての笑い。2人に幸あれ。
悪い意味じゃなくね。
本作はたった4ページに、大体そういうのがそっと織り込まれています。
まぁだれでも思いつくようなネタなんだけど、感情に流されやすいキャラは大好きです。
本作で一番分かりやすいストーリーが組み上がっており、終盤も盛り上がる展開。
しかしながら注目したいのはキャラクター。
百名さんが作り出すキャラクターは、本当に気持ちいいのです。
まぁ俺が単純に好きなだけでその理由を証明はできないんですけど
漫画映えするキャラクターとでもいうんでしょうか。
感情の揺らぎが実にストレートで、共感できて、熱くなれる。
現連載作にも通じるこの要素を、この作品はしっかり持っています。
クールキャラなのに撮影最終日で号泣するサキちゃんが大好きさ!
上で書いたように百名さんの特徴はキャラクターにあると俺は思っているのですが
この作品ではそのキャラクター性が不思議なくらいに見えてこない。
意地悪に感じるくらい断片的で、結末を描かない。
こういう不安定な闇も描けるってのは、かなり強みかと思います。
けれど個人的にあまりハマりこめなかった作品…(すいません)。
要するに「女は怖いよ騙されんな」ってこと?絶対違うww
まぁヒントは、序盤に自分の顔を鏡で見て愕然とするシーンにあるんでしょうね。
美しさにこだわりすぎたか。
自己満足の物語。良いことなのか悪いことなのか、意味のないことなのか
これっぽっちも分からないけれど、ただ自身の善意によるささやかな贈り物。
ラストの背中が妙に染みるなかなかな良作。
そういえばこの単行本、登場人物の背中を描いて終わること多いな。
これですねー!こういうのが好きなのです!大好きなのですよ!!
作者が働いてたときの経験も加えられているようで、
社会のところどころにある微妙な違和感が描かれます。
上司の嫌味や圧力、学歴差別に同業者の妬み。
そして自分の中の問題も、思わず目をそむけたくなる現実も、きちんと描く。
それでいて、いやだからこそ、この作品は青春漫画なのですね。
女子アナの杉山に恋したラジオAD坂上。
仕事に対する情熱や不満を語り合い、絆を深めていく二人。
けれどあっさりとそれは断ち切られてしまう。
例えばそれは恋人だったり、仕事の都合、夢破れたことだったり。
漫画でよくあるような「都合の良い運命」を、この作品は一切描きません。苦々しい。
けれど二人をつなぎ続けるのは、きっと情熱でしかないかとも思う。
仕事と夢。大学生の自分にはまだ分かり切れていない部分ですが
それらを深く考えるきっかけになった作品です。切ないです。
誰もが幸せで納得いく未来を掴めるなんて、あるわけがない。
男なら、最後まで杉山を見送った坂上の心情が、痛いほど分かるんじゃないでしょうか。
知らず知らずに誰かに救われているってことは
これまでもこれからも、珍しいことではないかもしれない。
誰一人味方もおらず、町中から疎外されることになった少女。
何度も陰湿ないじめを受けるも必死に3年間生き抜いて、卒業式の日。
卒業式に沸くクラスメートたちを尻目に学校をさっていく彼女の後ろから
不穏な影が3つ…。
密かな思いを秘め彼女を見守り続けていた、…オタク3人衆。
ここで作品の空気がサッと変わり、いきなりギャグオンパレードにww
たった一人で生きてきた少女は、すべてが終わってしまったあとで
自分を見てくれていた人が…味方がいたことを知ります。
…まぁその味方ってのがガチで気持ち悪いオタクたちなのが泣けますがww
しかし彼らと話すうち、忘れたかった自分の学生生活が振り返られて
少女は感情を高ぶらせ、涙を流して彼らを追い出してしまいます。
そうしてまた1人になった彼女が、電車に乗り込むと…
この漫画もまたとびっきり素敵な青春漫画。
人間が人間を傷つける悪意。
そしてそれに立ち向かうことしかできなかった少女。
愚直すぎて、自分の中の何かがうずいてきそうで、痛い。痛すぎるんだ。
だからこの漫画は青春漫画です。
苦くて苦しくて泣きそうで、でもふっとしたことで笑顔になるキャラクターたち。
そして時に暴走して、思いもよらぬ結末をもぎ取っていくこともあります。
そういう漫画が、青春漫画が、やっぱり自分は大好きで
となるとこの作品も、俺は大好きだってことですよ。ちょっと泣けるくらいに。
特に学生主人公なら、男の子はがむしゃらになにかに突き進んで、
女の子は笑ってなくちゃな。
本書は「冬の終わり、青の匂い」。
この作品にはとにかく人間の悪意がまずあって
けれどそれを越えた先にはちゃんと幸せが置いてある。
冬を越えたら春ですからね。
青春漫画が大好きならぜひお勧めな短編集です。
ユル系な作画でリラックス出来ますが、内容はなかなかエグいです。
『冬の終わり、青の匂い』 ………★★★★
出来にバラつきは感じるものの、殺傷能力高し。冬の終わりは春、春と言ったら青いのさ。
人間の心って、めんどくさくて残酷で、いつもだいたい面白い。
冬の終わり、青の匂い (ビームコミックス) (BEAM COMIX) (2010/05/17) 百名 哲 商品詳細を見る |
仕事すっかな
Fellows!で連載を持つ百名哲さんの短編集「冬の終わり、青の匂い」。
ビームに掲載されたものが半数以上で、ビーム未読の俺は新鮮に読めました。
では個別感想。短編集はちょっと大変だ。
過去に縛られていた女性とねこ。ばかねこ
本当におバカなにゃんこに癒されますが、確実に読者のハートを抉る作品。
しかしこの作品におけるばかねこはちょっと面白い立ち位置。
普通にしゃべるわ二足歩行だわ料理するわなのに、ツッコミ一切なしw
でも猫にとっては特殊でも、それらは人間にとってみれば普通のこと。
つまり本来なら人間が担うべき役割を、このにゃんこはしちゃってる。
そう考えていくとこのばかねこって存在はなかなか意味深なものに…。
けれどまぁ、たぶんそういう深い意味はないとも思う。
主人公のそばにいる。そんだけだろう、この猫の役割は。
癒しであり救いであり、読者にとっての笑い。2人に幸あれ。
友人の知らなかった一面に触れると、なんとなく接し方が変わりませんか。整備兵
悪い意味じゃなくね。
本作はたった4ページに、大体そういうのがそっと織り込まれています。
まぁだれでも思いつくようなネタなんだけど、感情に流されやすいキャラは大好きです。
上下編構成。連載中の「演劇部5分前」の雛型っぽい要素が随所に…。サムライ戦隊ブシドーファイブ
本作で一番分かりやすいストーリーが組み上がっており、終盤も盛り上がる展開。
しかしながら注目したいのはキャラクター。
百名さんが作り出すキャラクターは、本当に気持ちいいのです。
まぁ俺が単純に好きなだけでその理由を証明はできないんですけど
漫画映えするキャラクターとでもいうんでしょうか。
感情の揺らぎが実にストレートで、共感できて、熱くなれる。
現連載作にも通じるこの要素を、この作品はしっかり持っています。
クールキャラなのに撮影最終日で号泣するサキちゃんが大好きさ!
接ぎは「つぎ」と読みます。接ぎ木
上で書いたように百名さんの特徴はキャラクターにあると俺は思っているのですが
この作品ではそのキャラクター性が不思議なくらいに見えてこない。
意地悪に感じるくらい断片的で、結末を描かない。
こういう不安定な闇も描けるってのは、かなり強みかと思います。
けれど個人的にあまりハマりこめなかった作品…(すいません)。
要するに「女は怖いよ騙されんな」ってこと?絶対違うww
まぁヒントは、序盤に自分の顔を鏡で見て愕然とするシーンにあるんでしょうね。
美しさにこだわりすぎたか。
8ページの短編。ポカリ
自己満足の物語。良いことなのか悪いことなのか、意味のないことなのか
これっぽっちも分からないけれど、ただ自身の善意によるささやかな贈り物。
ラストの背中が妙に染みるなかなかな良作。
そういえばこの単行本、登場人物の背中を描いて終わること多いな。
んン――――最高ッ!!(ぉ聞こえてくる歌
これですねー!こういうのが好きなのです!大好きなのですよ!!
作者が働いてたときの経験も加えられているようで、
社会のところどころにある微妙な違和感が描かれます。
上司の嫌味や圧力、学歴差別に同業者の妬み。
そして自分の中の問題も、思わず目をそむけたくなる現実も、きちんと描く。
それでいて、いやだからこそ、この作品は青春漫画なのですね。
女子アナの杉山に恋したラジオAD坂上。
仕事に対する情熱や不満を語り合い、絆を深めていく二人。
けれどあっさりとそれは断ち切られてしまう。
例えばそれは恋人だったり、仕事の都合、夢破れたことだったり。
漫画でよくあるような「都合の良い運命」を、この作品は一切描きません。苦々しい。
けれど二人をつなぎ続けるのは、きっと情熱でしかないかとも思う。
仕事と夢。大学生の自分にはまだ分かり切れていない部分ですが
それらを深く考えるきっかけになった作品です。切ないです。
誰もが幸せで納得いく未来を掴めるなんて、あるわけがない。
男なら、最後まで杉山を見送った坂上の心情が、痛いほど分かるんじゃないでしょうか。
アホみたいだけれどこれちょっとウルっとくるお話。人糞
知らず知らずに誰かに救われているってことは
これまでもこれからも、珍しいことではないかもしれない。
壮絶に痛い。直球的で滑稽で、痛く熱い秀作。桜の頃
誰一人味方もおらず、町中から疎外されることになった少女。
何度も陰湿ないじめを受けるも必死に3年間生き抜いて、卒業式の日。
卒業式に沸くクラスメートたちを尻目に学校をさっていく彼女の後ろから
不穏な影が3つ…。
密かな思いを秘め彼女を見守り続けていた、…オタク3人衆。
ここで作品の空気がサッと変わり、いきなりギャグオンパレードにww
たった一人で生きてきた少女は、すべてが終わってしまったあとで
自分を見てくれていた人が…味方がいたことを知ります。
…まぁその味方ってのがガチで気持ち悪いオタクたちなのが泣けますがww
しかし彼らと話すうち、忘れたかった自分の学生生活が振り返られて
少女は感情を高ぶらせ、涙を流して彼らを追い出してしまいます。
そうしてまた1人になった彼女が、電車に乗り込むと…
この漫画もまたとびっきり素敵な青春漫画。
人間が人間を傷つける悪意。
そしてそれに立ち向かうことしかできなかった少女。
愚直すぎて、自分の中の何かがうずいてきそうで、痛い。痛すぎるんだ。
だからこの漫画は青春漫画です。
苦くて苦しくて泣きそうで、でもふっとしたことで笑顔になるキャラクターたち。
そして時に暴走して、思いもよらぬ結末をもぎ取っていくこともあります。
そういう漫画が、青春漫画が、やっぱり自分は大好きで
となるとこの作品も、俺は大好きだってことですよ。ちょっと泣けるくらいに。
特に学生主人公なら、男の子はがむしゃらになにかに突き進んで、
女の子は笑ってなくちゃな。
本書は「冬の終わり、青の匂い」。
この作品にはとにかく人間の悪意がまずあって
けれどそれを越えた先にはちゃんと幸せが置いてある。
冬を越えたら春ですからね。
青春漫画が大好きならぜひお勧めな短編集です。
ユル系な作画でリラックス出来ますが、内容はなかなかエグいです。
『冬の終わり、青の匂い』 ………★★★★
出来にバラつきは感じるものの、殺傷能力高し。冬の終わりは春、春と言ったら青いのさ。
人間の心って、めんどくさくて残酷で、いつもだいたい面白い。
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