[漫画]リビドー全開!とびきりビタースイート!『R-中学生』2巻
R-中学生(2) (ヤンマガKCスペシャル) (2012/10/05) ゴトウ ユキコ 商品詳細を見る |
こうなったら乳首だけでも吸う!!命に変えても吸ってやる!!
うまくいかねーなぁ、思春期ってのは。
そんな想いを抱かざるを得ない、思春期のリビドーが煮えたぎっている「R-中学生」です。1巻が出てから2年以上が経ちました・・・まさに待望の第2巻!!
もともと思春期だとか青春だとかそういうテーマにめっぽう弱いんですが……この作品の持つエネルギーは相変わらずすさまじい。
読んでて次から次へ心を刺激されて、いてもたってもいられなくなる感覚は、そう味わえるものではないです。これが読みたかった・・・ずっと待ってた・・・!
1巻は作家としての初期衝動も合わさってか、そのテンションは凄いことになっていました。
→秘密のカイカン・・・傷だらけの僕らの思春期。 『R-中学生』1巻
この1巻が本当に衝撃的で。2巻が出たタイミングで再読してみたらやっぱりヤバ面白い。
あれから「ウシハル」の連載をはさんで届けられた今回の2巻でしたが、ブレないなぁ。
1巻とはちょっと違った趣のあるエピドードもありますが、基本というか芯がガシッとしてる。
それでは感想を。
感想書いていながらいくらでも感想が湧いてきて困る、というのが1巻の時の体験。
ついつい感傷的になったり、やたらとテンション上がってしまったり。
まるで読んでる自分まで中学生にもどったような感情の高ぶり。こんな気持ちうまく言葉にできないな、と感想を書いてるブログとしての全てを放り投げだしそうな勢い。まぁ頑張って言葉をひねりだしましょう。
この作品にはバカバカしいくらい胸打たれてしまうのです。本当にバカバカしいんだ。ここまで刺激うけるなんて。思春期が充満する天国のような地獄、中学校。楽しいな、苦しいな。
第2巻は2つのエピソードが収録されています。1話完結だった1巻とは違ったスタイルに。
●夢で逢えたら
少女の片思いを描いたエピソード。女子バレー部の喜多さんが主人公。
恋のお相手はおなじみのバカ野郎3人組の良心(?)、吉倉。
まだまだ女の子としてオシャレをするだとか可愛く振舞うだとか、やり方がうまくわかっていない喜多さんがかわいくて面白い。というか全体的に手探り感がすごくてニヤつく。うわーうわー初めて男子を意識しちゃってるこの感じがもう、うはー。
でもエロ馬鹿クソ野郎(とキャラ紹介ページで書かれるほど愛されている少年)堀田が、大事なシーンを台無しにしていく様子も相変わらずで安心する・・・コイツはこうでなきゃな!
最初こそギャグとして失敗談が語れれていく。「ああ残念だったなぁ、次こそは!」みたいに。
ところが少しずつそこに歪みが生じていく。人間関係がこじれだしてからが、これまた面白くて面白くて、喜多さんの目がにごりだしてからが本番と言える・・・!
つーか稲沢さん(1巻の黒ブラの娘)・・・、人の色恋沙汰に首突っ込んで応援するつもりで要らないおせっかい焼いてて・・・すげぇなんというか・・・ウザかわウザいです・・・。
本人は悪意ないつもりだから余計にダメだこりゃ・・・。
そりゃ喜多さんの瞳も心も澱んできますよ!部外者からの面白半分なイジリって不愉快
稲沢さんこういう娘だったんだなぁ、めんどくせえ!面倒見がいい。でも行き過ぎるとうっとおしい。ラインを見誤って失敗するシーンは1巻にもあったけどなぁ。
静かに高ぶる少年のリビドー。行き場を失って破裂しそうな少女のリビドー。
うまく交差できない2人の一方通行は、ヒリヒリといたんで切なさが滲む。
クライマックスは爽快でもあるし、見たくなかったものでもあるし・・・でも熱いカタマリがギュッと心に押し込められて、もう一杯一杯になってる感じ。はぁ、ため息しか出ない・・・。
あの激怒は、あってよかったし、あるべきだった。嬉しいシーンでした。
その後の「ちゃんと起きるまで一緒にいなさいよ」まで男らしすぎる・・・!
そういえば稲沢と伊地知は、なんだろうな。こいつら何げに馬合ってるよな。
1巻6話でマジギレしていたけど、自然と友達づきあいができている。
いつかこの2人と吉倉交えて、ひと波乱あるかも。あるかな。
うわーバカだ。でもこんなバカ騒ぎを友達と全力で出来る瞬間。眩しい。笑顔になれる。
●トゥー・ヤング
堀田メイン回きたぁぁぁ!ゴトウユキコ先生このキャラ好きだよなぁ!
教育実習でやってきた大学生、文子先生。
すぐに子供達に溶け込んで、いつも笑顔でキラキラ明るくて、確かにかわいい。
そして堀田は彼女の惚れてしまうのであった・・・!
あーあー、普段あんなに女子のイヤな顔をシカトして下品なことしまくってるのに、好きな相手の前ではこれだよ!ガチガチになって動けてないよ!動いたと思ったら的外れであちゃー。
正直コイツにイラッとくる場面はいくつもあります。空気よめよ、ちょっとは黙ってろよ。
でも憎めない。どころかむしろ好きなのは、コイツが1番目に見える形でパーッと思春期のエネルギーを無駄づかいしてるから。クソみたいなことやって楽しんで、それが1番青春っぽい。
これがスポーツとかで情熱燃やしてたら違うのに、でもコイツは本当にどうでもいいことで燃えている。きっと毎晩のオナニーを全力で楽しむことだけを考えているバカ。ああ、最高だな。
ここまでストレートに可愛げのある性欲をむき出しにできるのって、中学生男子くらいじゃないか。
伊地知くんとかもまた爆発して欲しいなぁ。第一話好きすぎるので。3巻以降に期待。
話がズレたので戻そう。この「トゥー・ヤング」は、堀田が大人を知るお話。
大人を知るとはアダルティな響きだけど、残念なことに「少年よ、これが大人だ」と言わんばかりの現実がここに!
うまいこと乗せられて、でもお茶を濁して、辛い現実見せつけて。大人って卑怯だ。
大人への憧れを抱いてこそそれぞれの思春期はさまざまな色合いに輝くけれど
大人への憧れを踏みにじられることも、また大きな出来事だろう。
踏みにじられるというか、子供が勝手に暴走して勝手に失望しただけなんだけれど
そういう身勝手さも、肯定的に見ることができるのは思春期パワーなのか。
それでもめげない堀田!彼こそ不屈の精神を宿す漢か・・・!
というかこのシーンが2巻で一番笑った。
「俺は次の漢字小テストで60点以上取ってふみこの乳首を吸う。だから邪魔しないでくれ(キリッ」
バカすぎるwww
このエピソードも、思春期ならではのリビドーの爆発と、うまく行かない甘酸っぱさがブレンドされ絶妙な味わい。いつだって甘さ控えめな青春だ。でもたまにはいいことあるよ。
吹き出してしまうくらい真面目にバカをやっている、この突き抜けた様子も気持いいのだ。
あ、あとのんちゃん先生いい女だなー!クッソ!ナイス大人パワー!いい先生になるよ!
先生になれよ!!!
そんなこんなの「R-中学生」2巻。
個人的には1巻の熱狂というか、あの衝撃に敵うインパクトは2巻では薄れていたかな。
でもそれは1巻の初期衝動とソリッドかつナイーブなストーリーが異常に噛み合って爆発していたためであり、2巻のクオリティが低いということでは全くありません。
むしろ1巻と比べても苦味のあるエピソードが多く、中学生の暴走が紡ぐビターエンドをいっぱいに楽しめました。ああーもどかしい!大事なところで台無しになっていく!
思春期のこのダメダメな空回りっぷりが、最高に痛々しくて、愛おしくて。
バカゆえの暴走が彼らのピュアさを表しているようで、これがまた心がビリビリくる。
上手い、とはちょっと違うかもしれないけど、相変わらず不思議な愛嬌を迷惑にまき散らす愛すべきバカ中学生達の姿は、本当に魅力的に描かれています。
そして彼らを見ながら、読者の自分まで一緒になって心がざわめく。
バカで。たまに真面目になって。エロいことばっかり考えて。情けなくて。
生々しいくらいの中学生が、エネルギー満点でここにいる。すごい漫画だわ。
中学生のエネルギーなんて、8割は性欲だけど。
ピュアで免疫のない心が柔肌さらして、そこにそっと爪痕がのこされていくような。
みんなちょっと傷ついて、たまにちょっとどころじゃなく傷ついて、泣いて、また笑う。
はーぁ。うまくいかねーなぁ、思春期ってのは。
『R-中学生』2巻 ・・・・・・・・・★★★★☆
リビドーとセンチメンタルで心が踊る思春期コミック、待望の2巻。中学生の心の機微に触れるたび、心がキュンとナイーブになる。バカバカしくて甘酸っぱい、そして気持ちいい!
[漫画]ちょっとは振り向いてよ!こんなに好きなのに!『恋するみちるお嬢様』
恋するみちるお嬢様(1) (ガンガンコミックス) (2012/09/22) 若林 稔弥 商品詳細を見る |
お嬢様は私が見ていないと心配ですから
「恋するみちるお嬢様」1巻の感想です。
少年ガンガンで連載中のラブコメディー。最初から最後までみちるお嬢様が転げまわる。
スタートから固定のカップリングが出来上がっており、安心して読むことができます。
性格も体型もこどもみたいな恋する乙女みちるお嬢様。
好きな相手は、家庭教師の榊。クールで無愛想で頭が良くて性格が悪い。
2人のやりとりは微笑ましく、まったりとニヤニヤ楽しめる作品だと思います。ストーリーとしての高揚感は薄いですが、別にこの作品に複雑なストーリーはいらないなw
基本的に4コマ形式で進行していき、テンポよくさらっと読むことができます。
で、やってることはひたすらにみちるお嬢様と榊の会話劇。
みちるお嬢様はツンデレというか・・・いやかなり好き好きアピールはしているんだけど・・・なかなか素直になれない女の子。
一方で榊は彼女からのアプローチを、圧倒的なスルースキルでいなしていく。
みちるの誕生日のエピソードはニヤニヤもほっこりもできるいい話だったなw
というかお嬢様はアピールがわかり易すぎるだろ!かわいいなオイ!
これはみちるお嬢様の小難しいことを考えられないバカっぷりか、まっすぐに榊にぶつかっていってやろうという意思か、どちらが強く現れているんだろうな・・・!
一言で言えばみちるお嬢様はめんどくさい娘です。でもそれがかわいいじゃないですか。
しかし榊くんのあしらい方は見事。見事すぎてお嬢様が不憫に思えてくるな・・・!
お嬢様はもっと報われてもいいなぁ・・・でもまぁ、そういう甘い展開は、もっと後でもいいか。今はこの2人の漫才みたいなやり取りを、そこにくっきりにじみ出ている片思いを見守っていきたい。
みちるお嬢様は結構メソメソしちゃうんですよね。
そこもかわいいんだけど!でも能天気にとろけたみちるお嬢様がもっとみたいじゃない!いつも能天気で頭トロけちゃってるから榊くんに冷たく怒られるんだけどさ!
榊くんはちゃんとお嬢様をかわいがってあげてください。
お気に入りのエピソードは上の誕生日回のほかにもいくつか。
基本的にどの話でも、みちるお嬢様のドタバタっぷりと榊のクールな対応が対象的に笑ってしまうのですが。そこからコメディっぽく加速していく様子もいいのが第3話。
見どころは間違いなく、榊のにおいをクンカクンカするお嬢様の興奮っぷり。
なんというか・・・この娘は見ていて飽きないなw
みちるお嬢様のテンパリ具合が最高にかわいい第5話も好き。トイレ回。
シチュエーションが結構特殊なこともあって、どう展開していくのかワクワクしました。
パンツを足にかけたまま四つん這いしてるみちるお嬢様にときめくぞ!フンス!
みちるたちだけではなく、途中から新キャラも投入されていきますが
こちらのペアもめんどくさそうだなぁ・・・とw ド天然女子と素直になれない一匹狼男子。こちらもなんだか微笑ましいです。これから先が楽しみだなぁ。
まぁなにはともあれ、安心して読めるラブコメ漫画です。
看板娘のみちるお嬢様はしっかり魅力的に仕上がっているので、十分な破壊力アリ。
榊もただ冷たいだけではなく、なんだかんだで情が湧いている様子も垣間見えるので、これからが楽しみじゃないですか!是非みちるお嬢様をわたわたさせてあげて欲しいです。それ見て俺はニッコリしよう。
本当にテンポよく、さらっと読めます。でもちゃんとフックがある作品なので、印象にのこるシーンは不思議と多かった。土台がしっかり出来上がっている感じ。
意外な事実を明かして1巻は終わりました。2巻からどうなっていくのか、まったり待っていたいです。というかビックリしました・・・榊くんそうだったのか・・・。
恋するオトメ全開なみちるお嬢様をニヤニヤ見守り隊。
『恋するみちるお嬢様』1巻 ・・・・・・・・・★★★☆
エネルギッシュで恋に全力投球お嬢様を見守るラブコメ。ヒロインの一挙一動が微笑ましい!
[漫画]わたしを砕く、あなたのすべて。『茜色コンフィチュール』
茜色コンフィチュール (百合姫コミックス) (2012/09/18) 黒霧 操 商品詳細を見る |
この熱で燃え尽きてしまいたい
百合姫コミックス「茜色コンフィチュール」の感想を。
黒霧操さんは前作「水色エーテル」で知ったのですが、個人的にツボな百合の紡ぎ手さん。
今回はまずオビ文が素晴らしいんですよ。「わたしを砕く、あなたのすべて。」というもの。すごく好き。震える。
印象的なフレーズに彩られたこの単行本ですが、内容もいいものでした。
黒霧さんの前作「水色エーテル」。これがまた何度も泣きそうにさせられた、破壊力の高い作品集でした。とても心に残って繰り返し読んでいたり。
水色エーテル (IDコミックス 百合姫コミックス) (2011/07/16) 黒霧 操 商品詳細を見る |
収録作品の多くが悲恋・失恋モノで、一冊トータルの切なさはもはや凶暴なほど。
特に「この胸の花」「月の欠片、刹那と永遠」「春待メランコリィ」あたりは絶品。
ただ悲しいだけではなく、その見せ方の上手さに魅了されたなぁ。
女の子の隠された想い・・・それが綺麗でもそうでなくても、それを明かして
そんなわけで楽しみにしていた2冊目の作品集がこの「茜色コンフィチュール」。
コンフィチュールというのはフランス語でジャムのことを言うんだとか。
意味がわかるようなわからないような、なんとも不思議で素敵なタイトル。なんとなく雰囲気はそれらしいのをかzんじるというか。ストレートじゃないぶん想像がふくらみます。
それでは短編集ということで、個別にさらりと感想を。
●金星のカノジョ
最初の作品は、星にたとえてその輝きや遠さを描いた作品。テーマがロマンティックですな。
単行本全体で見れば、この作品はだいぶ幸せなお話だったと思います。
とは言え秘めたる黒い感情がにじんできて、決して明るいばかりのストーリーではない。
どうしようもない不安は消えずずっと胸にあって、くじけそうになるのを耐えている。
それでも最後に一歩を踏みだした主人公は、砕け散ろうと燃え尽きようと、覚悟を決めて戦いにいったわけなので、このコミックスの中ではかなり強さを持っている印象を受けます。
「準備不足の大気圏突入は、砕け散るのがお約束」
「この熱で燃え尽きてしまいたい」
クライマックスのこれらモノローグはゾクゾクきましたねー!卑屈なんだか勇ましいんだか!
片思いから駆け出して恋する相手のもとへ。「準備不足」と自分から言っているように、終盤の性急さもまた必死さが表れていて素敵です。
捻くれているけど、実はまっすぐに恋できてるあたりもちょっと珍しいかもしれない。
●零れ桜
2作目は大正ロマン的な和風百合。ここらへんからエンジンかかってきて正のエネルギーがだんだんとなくなってくる。じめっとしたムード。ほんのりダークでじわじわ痛みが広がってくる感覚。これだ・・・これだよ!憂いある2人の雰囲気は切なさたっぷり。
大正ロマンということで、着物キャラがちょいと新鮮でもあります。
2人の着物のちがう模様が1つに重なりあうシーンが意味深・・・というか明らかにそういう性行為のイメージ映像なんですけど、オシャレな演出でお気に入り。
なんといってもこのラスト、いいですねえ。絶妙に気持ち悪い。
ひどいことをされたと分かっている。相手の卑怯を恨みたい気持ちもあるだろう。
それでも好きでい続けてしまうダメな自分。だって、彼女のそんなズルさがホンの少し嬉しかったりもするから。自分を好きにさせてやろう、忘れさせないように、心に残し続けてやろう―――残酷な独占欲を浴びることは、辛いけどそれはそれで割り切ってしまえば、幸せなのか、な。でもこれ切なすぎる。
うーん紐解いていくとこの作品の感情の動きは、けっこうエグいものだと思うんだけど、それをさらりと悲恋の儚げなムードに仕込んでくるのは面白いです。「ヒドい女」だ。
●in the closet
変態だ―――――!!(AA略)って感じの第一印象。うん、これは気持ち悪いぞw
うひょあああーと妙な興奮が得られましたが、ニヤニヤできるだけではない。
気持ち悪いんだけどそれを自覚していて、だからこそ結構アレなラストを迎える。
少女同士の甘やかな関係の中に、しっかりとビターな味わいを生かしていく作品。
少女趣味の象徴みたいなお人形遊び。それをこじらせてしまい、「お人形になりたい」「あの娘をお人形みたいに好きにしたい」とそんな風に暴走していく女の子2人。
「誰よりも大切にされたい」→「私をお人形さんにして!」とシフトして思わずニヤッ・・・と。
しかし横たわるのは気持ちの微妙なズレ。
テーマのいやらしさや妄想シーンの淫靡なムードからして、かなりドキドキ。
見ちゃいけない、知っちゃいけないものに触れている感じ。個人的にはこういう感覚が百合漫画を味わう醍醐味の1つです。かすかに不気味でもある、歪んだ恋。
締め方もよかった。こうやって静かに想いを閉じ込めていく、報われなさ。
なんだかんだでこういう悲恋モノって好きなのかもな。美しいものも、こういうのも。
●シガレット≠チョコレート
箸休め的にゆるやかな空気が心地いい大学生百合。
2つ連続で、個人的にはマニアックで刺激的なのが来ていたのでいいリラックス。
パンチ不足・・・と言えなくもないけど、これはこれで好きだなぁ。
タバコの匂いと一緒に、ぼやけてはいるけど確かな切なさがふわりと漂ってくる。
きっと普通ではない恋をしているのだから、と一歩引いている主人公。
癒しではあるけど傷が和らぐものではなく、傷痕にそっと触れてくるだけのような感じ。結局痛いじゃんみたいな。けれどそういうのがいいよね。それ求めてこの作品を読んでいる面は間違いなくあるので。
でもこの作品の後日談が、巻末にある書き下ろし「茜色プロムナード」。
こちらは文句なしに甘くて甘くて甘い。この単行本においては周りとのギャップでそれくらいに感じましたよw おかげでコミックスとして見たときの読後感はよかった!
●溺れる金魚
変態だ―――!!2度目。これも強烈だなぁ。ある意味ストレートなんだけど。
主人公はおとなしい女の子。もう1人のメインキャラは主人公を見下す女の子。
心を痛めつけられるのは当然なのに、。それでも主人公はその娘の近くにい続ける。
しかもまぁその相手の娘というのが典型的な「新しい彼氏ほしー次の彼氏ほしー」系恋愛脳女子高生なので、望み薄だわなぁという感じ。
ところが読みすすめてみれば、おやおや。これはやはり主人公が面白い。
「傷ついても傍にいたい ううん 傷つくから傍にいたいの」
いい笑顔ですね・・・。まぁつまり、そういう繋がりが欲しい人。
どんなカタチが幸せな人間関係かは人それぞれだけど、この作品のそれは歪んでいるなぁ。
これは恋というか、おかしな風に自己完結しちゃってる。彼女の傍にいることが彼女の自慰にもなってる感じの。虐げられる事の冷たい痛みに取り付かれてる。依存して逃れなくなって、満足できなくなって。
のめり込んで理解を示すことはできませんけど、これもまた、不思議な世界をのぞき見た気持ち。そういうのもあるかぁ・・・。
うん、作者も気持ち悪いと思ってもらえれば本望とか書いていましたが、これは気持ち悪いな・・・それが面白い!
そんな感じの作品が詰まった単行本。
前作「水色エーテル」と比べると、全体としてはやや甘みが増したかな。
あちらが悲恋モノオンパレードで、傷つく少女たちを様々な角度から描いていく感じだったので。
しかし本作が完全に幸せかと言うとそうでもなく、やっぱり悲恋は多いな・・・!
加えて病的というか、静かに狂気に浸っているムードの作品が目立ちます。
儚げなんだけどすこし毒々しい感覚が素敵だなぁ。すこし、どころじゃないかも。
キラキラもしてるだけど、落ち着きを保ったままゆるやかな空気が漂っている様子もいい。
個人的にはだいぶ好きな百合作家さんなんだけど、がっつりこちらの胸をえぐってきます。切ない恋を味わいたい人にはおすすめしたいけど、ほわほわしたのが好きならちょっとキツそうだ・・・。実際自分の心も結構ボロボロですし、むしろ切ないだけじゃないし・・・。
心が苦しくなる作品ばかりでもないので、バランスはいい一冊だと思います。
『茜色コンフィチュール』 ・・・・・・・・・★★★★
いたたたたた。つらい。でも心に残る物語たち。万華鏡を覗いたみたいな少女たちの世界。
[漫画]キミの全部をノゾキミしたい!『ノゾ×キミ』1巻
ノゾ×キミ 1 (少年サンデーコミックス) (2012/09/28) 本名 ワコウ 商品詳細を見る |
二人だけの秘密の約束ね
本名ワコウさんの「ノゾ×キミ」1巻の感想。
この作家さんは大人向けの作品「ノ・ゾ・キ・ア・ナ」も連載していますが、その少年漫画バージョンと言えるのがこちらの「ノゾ×キミ」。スピンアウト新シリーズらしいです。
「ノ・ゾ・キ・ア・ナ」の方が遠慮なしにヤリまくっているんで、過激さは本家に敵わないのは当然。しかしこちらは、少年漫画なりのトキメキに溢れています。
テーマやシチュが似ているだけで、2作品間にリンク箇所はありません。(今のところ)
本家を未読だという人もすんなり入れる、マニアック・シチュエーション・ラブコメ。
高校で同じクラスのノゾミとキミオ。(このネーミングは素直すぎる!)
コの字構造のマンションの向かい側同士である2人は、ひょんなことから「自分の見せ合いっこ」をはじめることになってしまいます。
ありのままを見せる・・・なんてプライバシーの無いムチャクチャな契約。イラつき戸惑うもドキドキがとまらないキミオくん。
そこに他のクラスメートたちが関係し始め、ストーリーが動き出します。
まず最初の感想。
なんつーか、この作家さんはトコトンこういう設定が好きなんだな!
ノゾキだとか自分見せあいだとかのシチュの見せ方は本名先生が慣れているのか、純粋に自分の性癖丸出しなのか、ともかくドキドキさせてくれます。リビドーがある。
異常なことをやっている男女。強制的にでも秘密を明かしあう間柄。
とはいえまだやってることは「ヒロインの着替えを覗く」「むしろヒロインが着替えを見せ付けてくる」あたり。ラブコメ的には正解。でもまだ主人公が一方的にそれを見ているだけなのが少々残念で、まだまだこの先の展開を期待させてほしい感じ。
本家はそこらへん「覗き穴」がキーワードとなって複雑にキャラクターが絡み合って楽しかった。
本作もそれができる土台は出来上がってるので、面白くなる予感はあります。
・・・でもこれ、マンションの向かい同士で部屋のカーテンあけて見せ合いっこしてるだけで
これじゃまったく無関係の第三者に2人がやってること見えちゃうんじゃん!ってことを突っ込みたいw ストーリーが長く続いていったらここが落とし穴になって一波乱あるんじゃないだろうか。
あとヒロインのタイプも本家と似ている。
何を考えているか読めない、時々誘惑してくる小悪魔タイプの、前髪パッツンな!
うーかわいい。イタズラっぽい仕草が似合ってますな。
キャラクターとしては「ノ・ゾ・キ・ア・ナ」のヒロイン・えみるにかなり近い。
でも個人的には今回のノゾミちゃんの方が好きかもなー。えみるもいいんだけど。本家ノゾキアナはいえみるより個人的にはとおしい女性キャラがかわいそうな展開になってしまって落ち込んでいます・・。まどかちゃん超かわいかった・・・。
というか本家は内容が内容で、しかも後半の展開はけっこう心にキまして、キャラクターに人間的生臭さが強くなりすぎた感があります。えみるに関して特に。それは同時に魅力でもありますが、こちらは少年漫画なので、やっぱりどこまで行っても爽やかなムード。
シチュエーション的にいやらしさはありますが、カラッと健康的というか。
しかしわざとらしく下着を見せ付けてくるのは、小悪魔というよりむしろ痴女だった(鈴木健也さんの作品より)。小悪魔と痴女はニアイコール・・・?いやそうでもないか。
他キャラの話。
個人的にチアガールの腹黒少女、園田ミチルちゃんはツボでしたね!
こういうキャラが恋したとたんに乙女全開なチョロさを見せ付けてくれればバンザイ。
あと巨乳がゆえの視線恐怖症な女の子、牧野さんの変化もきもちいいものでした。
これからどういう進行をしていくのかな。キャラクターの悩みを聴いて解決させてあげる流れかな。
ではまとめのようなものでも。
「ノ・ゾ・キ・ア・ナ」のスピンオフとしてスタートした本作。シチュエーションなど似通った部分は多いのですが、ちょっと違った面白さやドキドキがあると思います。
大事なのは少年漫画ならではのトキメキ。そこを分かっている作品だなーと。
というかこれは常々思うんですが、ただただエロいのが読みたきゃ成年漫画を買うし。でもいまだに少年漫画のお色気ラブコメを好きなのは、この甘酸っぱくも熱い興奮は、少年漫画だからこそのエネルギーがかなり影響していると思うからです。
少年漫画のエロだからこそいい。・・・もちろん大人向けのがっつりエロいのも大好きですけど、ちょっと方向性が違うという話!
もともとこの作家さんの絵のタッチって結構サッパリ目だと思います。本家「ノ・ゾ・キ・ア・ナ」ではあまり無かった爽やかさがやや新鮮に感じもしました。
「ノ・ゾ・キ・ア・ナ」がのこり1冊で完結とのことで、こちらは以下続刊予定。
スピンオフとして誕生した作品ですが、とっつきやすいですし本家にない味わいもある。
これはこれで成長していって欲しい作品だと思います。
『ノゾ×キミ』1巻 ・・・・・・・・・・・★★★☆
お互いに覗き合おうというラブコメ。人間に深いところを見つめていく今後の流れに期待。
[漫画]フラグとは無意識のうちに折れている物である。『共学高校のゲンジツ』1巻
共学高校のゲンジツ 1 (ビッグ コミックス〔スペシャル〕) (2012/09/28) 伊丹 澄一 商品詳細を見る |
毎朝チコク気味に、パンくわえて走ってまーす。
「共学高校のゲンジツ」1巻が発売されました。
同人誌即売会などのイベントによく行く方はご存知だったりするかもしれない、サークル「ItamiWorks」さんのコミックスです。自分もコミケかコミティアかで知った作家さんでした。
商業デビュー作となったこの「共学高校のゲンジツ」ですが、まぁやってることは大体同人でのあんな感じです。それではさくっと感想を。
共学高校にはいった!でもカノジョなんてできねーぞ!
キラっキラした青春を夢みて共学の高校に入学するも、そうそうに「現実は非常である」と突きつけられて涙目な男子たち。
彼らを中心とし、ゲンジツってこんなもんさ、な残念感を漂わす作品です。
普通のラブコメならここから物語が始まるだろうシーンを、あざとらしいくらいあっさりとスルーしていく(矛盾していそうな表現だけど)。それがむず痒く、笑ってしまうのだ。
ギャルゲーやりながら現実の女の子とのフラグを華麗にへし折って、友達同士で「フラグたたねーかなーw・・・立たねーな・・・」とかやってるの見るともう・・・!男子ってやーね!
というかフラグうんぬんより、わりとこの3人組、全然気がきいていないあたりもツボ。
仕事はおしつけるわ、物落としても拾ってあげられないわ。
女の子たちもガックシ来てますよ。でもこの男子たちのどーしよーもない感じ、好きだw
フラグをおられて残念がってる娘もいれば、なんてことないコミュニケーションもさらっと流されてしまって落胆してる娘も。「フラグ立たないかなぁ。そいたら絶対見逃さないぜ」と男たちのムダに自信アリげな言葉が虚しく響く・・・。たった今その瞬間に、お前らが折ったんだよ・・・。
積極的に攻めてくる女子Aもいますが、ことごとくチャンスを潰されています。この不憫っぷり・・・この調子でかわいそうなまま突き進んで欲しいな・・・!
というのはコミックス前半までの話。後半は・・・なんか・・・普通にラブコメや・・・。
いやいいんです。ラブコメ好きなんです。大好き。でもよぉ・・・この漫画、「共学高校のゲンジツ」ってタイトルでされたら・・・許せない!ニヤニヤしながら楽しんでるけど、許せない!
一冊読み終えた中だと、第3話あたりのノリが1番好きです。この残念っぷり。
でもちゃんとまっすぐラブコメやりだしたら、それはそれでちゃんと面白かった。
おそらくはメインヒロインである保延さん。彼女はデフォでスカートの下にジャージ来ています。色気ないよ!これじゃパンチラも期待できない!
あーでもこの全然そーいううれしはずかしなイベントを期待できない、距離の近い友達づきあいやってるのを見るとクソが!!!思ってしまいますわがままですいません!
「あれ?もしかして今私のこと意識しちゃった?」みたいにおちょくってくる女友達!こんなのヒドいよ!ストライクだよ!!
表情を変えないものだから、冗談か本気か読めなくて。うまいこと手のひらで転がされてしまう…!というか何だよ。これでフラグ立ってなかったらなんなの。なんなのフラグって。
そんな感じでだら~っと共学高校の日常を描いていく作品です。
インターミッション的に話のあいだに収められた、番外編?もニヤリとします。
非日常を探し求め奔走する名前も顔も知れない女生徒・・・頑張ってくれ・・・。
あと謎の先生が鬼気迫る名言を放っており、お気に入りです。
な、なるほど・・・。
この作家(サークル?)さんらしさは存分に発揮されている一冊だと思いますが
やっぱりもうちょいナカミが欲しいかなと感じる一面もあり。
1話1話が短く、一発ネタというか ストーリーのうねりが少ないです。というかストーリー性もとめるのは間違いかな。
まぁ、ここから本格的な青春ものにシフトしていってしまっても、現実のうまくいかない残念っぷりを描いていく本作の土台が崩れてしまうので、このままでいいかw
ショートコメディですけど、ちゃんとキャラは立っています。回を重ねていくうちに深まっていく部分もあるだろうし、やっぱり残念なところがもっと見られるだろうし。続き楽しみです。
軽いかもしれないけど、ちゃんとこの作品ならではの味もあります。
アニメや漫画みたいなドラマティックな非日常を探し求め―――
今日もなんでもないように現実的な1日を過ごしましょう。
リアルだけど、残念だけど、いいこともたまにあるよ。見落としているだけで。
あと自分の匂いを気にしちゃう親友系不良ボーイッシュ女子(意外と頭がいい?)もとても可愛いで、さっさと保延さんとのトライアングルラブコメを突き詰めて行ってもらいたい。願望。
『共学高校のゲンジツ』1巻 ・・・・・・・・・★★★☆
これが現実だ、残念だ、といいつつさらっとラブコメやっちゃってる系のヤツだよ!しまった俺そういうの好きだった。もう一歩でなにか繋がりそうなのが見える分もどかしい漫画です。