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[漫画]未来へつながる初期衝動 『THE DOG RACE 青山景初期作品集』

THE DOG RACE ~青山景初期作品集~ (IKKI COMIX)THE DOG RACE ~青山景初期作品集~ (IKKI COMIX)
(2012/02/23)
青山 景

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   お前は僕に、「愛してる」としか言わなかった。

前回「よいこの黙示録」2巻の感想を書いたので今回は同時発売されたこちら、「THE DOG RACE」の感想でも書こうと思います。
「青山景初期作品集」と打たれるだけあって、収録作品はどれも昔のもの。
デビュー前の投稿作や、デビューにつながった作品、IKKIに掲載された読み切りなど。130ページにも及ぶ表題作「THE DOG RACE」は大学の卒業制作として描かれた作品だったりします。
まさに青山景先生の原石と言える作品がたっぷりと収録された1冊となっています。



学生時代の青山先生がどんなモチーフを好んでいたのか、全体的になんだか分かりやすい。
「THE DOG RACE」「FAKE FUR」「無題」といった、このコミックスの大半を占める作品群はどれもヤクザたちを描いた作品となっています。ヤクザ好きだったんだなー。
殺し屋たちのドライな世界観が広がりますが、しかしどこか愛嬌のあるキャラクターたちのおかげでコミカルな雰囲気になっています。
様々な点で未熟な部分は感じますが、しかしそれらは原石としての輝きも放っています。
しかしファン以外の人にオススメするには足らないかなぁと思ったりも。

個人的におっと思ったのは「黒いUFO」「リリカチュア」といった作品。
青山景先生の紡ぐ不安定な少年少女らの姿は心を揺さぶられてしまうのです。

「黒いUFO」は5ページのショートショート。
これも唐突にギャングが現れますが、メインは思い悩む主人公の女の子。
なんのドラマもなく、「仕事だから」と遠ざけられる少女の漠然とした悲しみとか不安がふわふわと漂っている作品です。でもラストにはUFOが!・・・だからなんなんだ。
続く「黒いUFO'05」にもラストにはUFOが。・・・だからなんなんだ!
脈絡なく現れるUFOはともかくとしても、思春期のモヤモヤが可愛らしいシリーズ。好き。

「リリカチュア」は自殺をしようとビルの屋上にやってきた女の子が、不思議な男性と出会うお話。
なかなか実験的な作品で、男性はまるで劇を演じるかのように熟年の刑事からガンコ親父、プロレスラー、サラリーマン、部活のコーチとキャラを変えていき、女の子と漫才(?)をします。
そうした中で女の子が自殺を考えなおし、生きる元気を得るというストーリー。
テンポよく切り替わっていく場面も見ていて楽しいですし、男性のあつっくるしくもコミカルな雰囲気も素敵。そしてラストシーンの2人のやりとりも、爽快な読後感を与えてくれます。

the dog race

他にも「ドリップ」もかなり印象的な設定の作品でした。
Mな女子高生が自分の性器にバイブ型の爆弾を挿れている・・・ところに、性的に飢えたおじいさんがやって来る!・・・という不思議な漫画。
身悶えする女の子の挙動がいちいちエロいのはもちろん、ムダに壮大な世界観も見所。
見開きの放尿シーンはよくわからないけど迫力満点でした。

そしてIKKIで賞を受賞し、デビューのきっかけになった「茶番劇」も好き。
2人の小学生の、ちょっと特殊な友情を描いたもので。キャラクターの表情がとても豊かで、この単行本の作品群でもかなり力のこもった作品だと感じました。
シリアスなのに遊び心を加えて自分から茶化してる作風は、この作品でも見受けられます。



と、ざらっと気に入った作品について感想書いていきました。
目立つのはヤクザをメインにした作品たちで、次に少女を主人公にした作品。
しかし、のちに青山先生の作品で主軸となっていくのは、若者たちの青春だったり歪んだ暴走だったりと「青臭い」要素なのですが、この単行本でもその片鱗は見えています。
絵はさすがに、近年の丸っこく描き込みの多いタッチとはだいぶ違いますが、作品のテーマだったりちょくちょくヒネリを加えてくる作風は色濃く見受けられました。
ただ、やはりアマチュア時代の作品が多いので、近年の青山景作品のような面白さを求めると、肩透かしを食らうだろうなと。
個人的にも、期待していたほどの面白さが無かったというのは嘘ではありません。
でもファンならば抑えておきたい1冊だと思います。
後の主流になっていく、人間と人間が向き合って生じる面白さや温かみは、初期衝動たっぷりなこの作品群においても重視されています。ここから未来のあの素晴らしい作品達が飛び出していったのかと思うとワクワクするのです。
青山景という作家をより深く知りたいのであれば、きっと楽しめる本だと思います。

『THE DOG RACE 青山景初期作品集』 ・・・・・・・・・★★★☆
ファン以外はちょっと辛いかもしれない。ですがファンは抑えておきたい1冊かと。

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